9.初登校
いつも歩いてた道も全然違う景色にみえる…
そんな事はない筈だが、みんなに見られてる気がする…
ダメだ。どうしても弱気になっちゃうな…
そんな時肩をポンと叩かれた。
『瑠衣大丈夫ぅ?』
いっつも莉結はそんな俺の微妙な変化に気づいてくれるよな。
「あぁ。てか本当に"瑠衣の妹"って設定でいいかなぁ
?」
『その方が後々めんどくさくないんじゃない?わざわざ全部嘘つくくらいなら瑠衣の"妹"として、家も一緒ってほーが隠しやすいしね♪』
「お前…馬鹿じゃなかったんだな…」
意外だ…口にケチャップつけて平気な顔で登校するようなやつなのに…
『し…失礼なっ!!まぁ…とりあえず瑠衣は私から離れちゃダメだよ?』
「言われなくてもそうさせてもらうよ。」
そんな事を話している間にもう学校に着いてしまった…
あー…緊張する…
『おはようございまーす!!おはようございます!!』
うげっ!!こんな時に挨拶運動かぁー…
校門のところに生徒会7人ほどと、教師3名が立っているのが見えた。
「おはようございます…」
なるべく小さな声で顔を伏せて挨拶をする。
『あれ?今の子可愛くない?あんな子居たっけ?』
何人かの生徒達がざわざわと騒いでいた。
早速注目されてるし…
嫌だなぁー…
校長先生に挨拶をして、担任と教室へと向かっていく。
校長って俺の病気の事病院から連絡受けて知ってるんだよな…
なのに"君が如月くん?がんばってね。"だけって…
所詮そんなものかと少し落胆しながらも
あっという間に、教室の前に到着した。
よく知ってる教室なのに….
このドアを開いても知ってる顔が並んでるだけなのに…
それなのに心臓が張り裂けそうだ…
ガラガラガラ…
『えー…突然ですが、如月瑠衣が病気の関係で長期的に休む事になった。
体調的には心配ないらしいが、しばらくの間、学校へは来れないみたいです。まぁ心配するなよー。
代わりと言ってはなんだが、離れて暮らしてた瑠衣の双子の妹さんが、看病を兼ねてこっちに住むそうなので、暫くこのクラスで一緒に勉強することになりましたぁ。
みんな仲良くしてやってくれよー。男子達は可愛いからって瑠衣の妹さんって事を忘れずに!!さ、自己紹介頼むな。』
そういう設定にしてくれたのか…
てかせめて俺には言えよ!!
って突っ込んでる場合じゃねー!!
本当に大丈夫だろうか…
「あの…えっとー…如月衣瑠です。よろしくお願いします。」
『イルちゃんは…』
そう言って黒板に如月…衣…瑠…と書きあげた。
『瑠衣を逆にしただけじゃーん!!』
知っとるわ!!
俺が1番後悔してるっつーの!!
つーか誰だよ今の!
加藤か?竹内か?
『俺めっちゃタイプだわー!!』
勝也!!てめー俺の妹…じゃなくて俺になんて事を!!ん?俺に?気持ちわりーーー!!!
俺とは殆ど喋んないくせに馴れ馴れしくしやがって…
1番後ろの窓際。俺が座っていた席へと向かう途中も
ジロジロと視線を感じた。
"ちょっと似てるかも"とか
"双子なのに似てなくね?"とか
どうでもいい批評が耳に入る。
そんな時、突然頭に不安が過ぎる。
もし…いま突然元に戻ったら…
『お前なにやってんだよ!!女装が趣味だったのか?!』
『瑠衣くん…気持ち悪い…』
『瑠衣、女装好きだったのか…』
『可愛い顔して趣味わりーな…』
俺…死ぬしか無いじゃん!!
そんな時隣から優しい声がした。
『大丈夫?』
佐々木千優さんだ。
大人しくて常に読書しているような子だ。
隣の席でありながら、人と関わるのが好きでは無い俺の性格もあいまって、一言も会話したことがない。
そんな千優さんが俺を心配して声を掛けてくれた?!
そうか…俺、女だからか。