キモチの整理
『さってと…そろそろ"娘たち"を起こすとしますかねっ。』
腕をぐんと伸ばして稚華さんが微笑む。
桜の花びらはもう"いつもの"に戻っていた。
『あ"ぁー気持ち悪いぃ…』
いつも元気な莉結も今回ばかりは萎びた茄子のようだ。
「コップ1杯も飲んでないんでしょ?どんだけ酒に弱いんだよぉー…」
『ゔぅ…』
体調が悪いのにこんなこと言ってなんだけど…
私の袖を掴んでちょこちょこと歩く姿が可愛らしい。
…が、顔色は最悪だ。
話を戻すと、あれからすぐに麗美さんが目を覚まして大変だった。
桜吹雪の中、響き渡る嗚咽音…
とてもじゃないが表現できない声が花見客の賑わう会場に響き渡った…
皆さん楽しんでるとこすいません!!!…心の中でそう叫びながら逃げるようにその場を後にした。
そんなこんなで、酔っ払いの"娘たち"を家に帰す為にお花見はこれにてお開きとなったのであった。
そして私は、この可愛らしい"娘"とともに帰路についている。
春の柔らかな風が少しだけ冷ややかになり、夕暮れを迎える準備を始めている。
「莉結…あの…さっきはごめんね。」
『えっ?なにが….?』
もしかして覚えてないのかな。それならそれでいいんだけど…
「莉結が言ってくれた事への返事だよ。ちょっとテンパっちゃったっていうか、嬉しかったんだよ?だけどあんな事言っちゃって…って覚えて…ない?」
『な…なにそれ?知らないッ!!』
莉結は顔を真っ赤に染め上げ、少し斜め下のを見つめて言った。
「えっ?!ホント??」
『だからぁ、ホントだってぇ…』
「そっかぁ…それならそれでいいやっ♪
……あのね…私、明日彩ちゃんに私の気持ち伝えようと思う。」
一瞬の沈黙の後、莉結はコクリと頷いた。
『そっか♪自分の気持ち…整理できたんだね。どういう結果であれ、私は衣瑠の味方だよ♪』
あんな事言っといてズルイよ…莉結は。
"既読"にならないメッセージの画面を消す。
あっという間に莉結の家の前だ。
私たちは"また明日"と挨拶を交わし別れた。