横顔
本屋を出ると同時に勢いあまって通行人に肩をぶつけてしまった。
咄嗟に謝り顔を上げると、そこには見慣れた顔があった。
「莉結….こんなとこでなにしてんの??ほのかさんは??」
『えっと…もう解散して、ひとりで本見に来たんだけど…衣瑠こそ彩ちゃんは??何でそんな急いでるの?トイレ?』
何故そうなるんだ…私が焦る理由としてトイレが1番あり得るということなのだろうか…
「違うよ…ったくぅ、なんでそうなるかなぁー。んまぁいいやっ。彩ちゃんとこ行かなきゃだからっ!またねっ!」
そういって走り出した時何かに服がひっかかった。
振り返るとそれは、"引っかかった"のではなく、莉結の手に服が握られていたのだった。
『あっ…えと、私も一緒に行こうかなっ!?ま、まぁ彩ちゃんと衣瑠が良ければだけど…』
へぇ…なんか、めずらしいなぁ。莉結が一緒に遊びたいだなんて…
「別に私は良いけど…というか私も約束してるわけじゃないし。笑」
そんなこんなで莉結とバスに乗り込んだ。
いつぶりだろうか…
莉結とバスに乗るなんて。
最後に乗った時の記憶は曖昧だが、はっきりと覚えているのはこの空気と、この匂い。
すっかり春色に染まっている街の風景。
ただ違うのは、すっかり大人になった莉結の横顔くらいかな。
移りゆく街の景色のように人もまた月日と共に変わっていく…
突然、哀愁に包まれる事がある。
それは季節の変わり目に多い気がする。
それはきっと、懐かしい季節がやって来た嬉しさを感じたと同時に、今まで気づかなかった"変わってしまった何か"に気付いてしまうからだと思う。
そう、今の私みたいに。
そんな事思うのは私だけかもしれないけど。