エゴイスト
アレは誰だろう。
見た目は彩ちゃんなのに彩ちゃんじゃないのだ。
なんて言ったらいいか分からないけど…
お腹が減っているのに食べられないみたいな?
いや、なんか違う…
1本でも人蔘。3本でも椎茸なのだ!
いやっ、とりあえず"違う"のだ。
アレは演技?
だとしたら相当の腕前だと思う。
すぐさま"期待の新人"としてデビューできちゃいそうだ。
あ!もしかして双子の姉妹…
だとしたら…いや…違うと思う。
それとも二重人格?
…ぽい。
ものすっごく"ぽい"。
え?だとしたら何で急に…
"孤独の化身"
彩ちゃんの言葉が浮かんできた。
アヤ…ちゃんか。
その瞬間、急に寒気が私を襲う。
二重人格ってあんなに凄いんだ…
もちろん"凄い"とは"驚愕"の意味である。
私の前にいた"アヤちゃん"は、彩ちゃんとは完全に別の人物として喋っていた…
まるで本当に入れ替わってしまったかのように。
私はターミナルの花壇に腰掛け、ぼーっと鳩の群れを眺めていた。
なにか私に出来ること…
何故"彼女"は出てきたのだろう。
そして何故私を嫌っているのだろうか…
考えても答えは出ない。
そもそも二重人格とはどういった事が原因で発症し、それは治るものなのだろうか。
考えてもしょうがない。
私はその足で駅へと戻り、本屋へ向かった。
二重人格…
解離性同一性障害…幼少期のストレスやトラウマが大きな原因である事が多い…か。
本を読み進めると、どんどん胸を締め付けられる感覚が強くなる。
まるで彩ちゃんの過去を振り返って見せられているように感じてしまう。
そしてどんどん彩ちゃんを助けたいという感情が溢れてくる。
助けたいなんて間違ってるかもしれないけど…
やっぱり彩ちゃんは大切だし、そんな過去に少しでも囚われなくなって楽しく、そして幸せな人生を…
って本当に私は烏滸がましいな。
私のエゴかもしれない。だけど…
私は本屋を飛び出していった。




