トクベツ
『私は嫌…誰かの、貴女の1番になりたい…』
1番…か。
「1番がそんなに大事?」
私の口が勝手に開いた。
彩ちゃんの目は光を失いこちらをじっと見つめる。
そして静かに口を開いた。
『1番以外になんの価値があるの?1番にならなければ誰も認めてくれないのよ…?いつも輝いているのは1番だけ。』
1番になったって認められない事…あるんだよ…
彩ちゃんは所々、昔の私そっくりだ。
だからこそ早く気づいて欲しい。
「私はね、1番なんて価値が無いと思うんだ。
だって大切なものに順番なんてつけられないはずでしょ?
みんなが"1番"って呼んでいるものは"特別"のことなんだと思うんだけど違うかな?
違うかもしれないけど…私はそう思いたいんだ。」
この世の中には番号がつきものだ。
私は昔から疑問に思う"1番"や"2番"がある。
1番の親友…
1番好き…
1番可愛いカッコいい…
そのどれもが数値で表す事じゃない気がする。
何の単位で1番なのだろうかといつも周りから聞こえる声に疑問を抱いていた。
『綺麗事言わないで。それは1番になった事のある側の人間の言い訳。私はただ貴女に"1番だよっ"って言って欲しいだけ…』
何でわかんないんだよ…
彩ちゃんは根は優しくて甘えたがりなだけのいい子なのに…
心の闇が豹変させる。
「バカ…じゃぁ特別を教えてあげる!!」
『え…?』
…
"ママー!あのお姉さんたち今…"
"ちょっ!静かにしなさい!いいから早く行くわよ!"
そんな周りの声は届かない。
何故そんなことをしてしまったのか、という事も。
私が小悪魔ならば「ね♪"トクベツ"でしょ?」なんて言ってその場もまとまるのだろうが…
このなんとも言えない微妙な空気は何なんだ…
"やってしまった感"が園内全域に伝わってないか心配になるくらいだ…
彩ちゃんは固まったまま動かないし…
周りの親子はそそくさと立ち去るし…
終いにはゾウすら部屋へ戻っていってしまった。
「あの…そろそろ行きます?あははは…」
超〜気不味いんですけどー…