気持ち
あまりに急な問いかけに言葉に詰まる。
だがそんな顔して言われたら、勿論答えは1つしかない。
小さく頷くと、彩ちゃんは静かに話し始めた。
『私、両親に愛された覚えがないの。1度も。』
そんな事突然言われてもなんて返せばいいのだろう…
『私には姉がいるのだけれど、姉は何もかもが完璧で…いつも褒められるのは姉ばっかり…私はいつも邪魔者扱いされてきたの。被害妄想なんかじゃなく、誰が見ても分かるくらいに"あからさま"にね…ふふ…』
なにも言葉にならず、私はただ真剣に話を聞くしかできなかった。
『私は愛に飢えていたわ…そんな時にアヤと出逢ったの。』
その名前は分かる。
「その子、彩ちゃんの親友なんだよね?」
『違うわ。親友なんかじゃない…友達でもなんでもない…』
喧嘩でもしたのだろうか…
また寂しそうな顔をしている…
『アヤは私の孤独の化身…なんて格好つけたモノじゃないわね。ただの私の妄想が作り出した唯一の味方。』
「ごめん。どういう事?」
言っていることは分かったのだが、理解が追いつかず問いかけた。
彩ちゃんは、"その事"を見透かしたようにふっと微笑み
『そういうこと。』と言った。
『だけど貴女と居るとアヤが居なくなるのよ。健太の時はずっと一緒に居たのに…』
それはどういう意味なのだろう…
結果として良かったのか…それとも…
『不思議ね…今までアヤだけが私の理解者であり、居なくては生きていけない存在だったのに。
私は初めて本気で愛というものを知ったのかもしれないわ。』
「え?」
『だから…これからずっと私の側にいて欲しい。私だけの貴女でいて欲しい。私を愛して欲しいの…』
真剣にそんなことを言われるとプロポーズでも受けたかのような心境になってしまう。
少し前に私を殺そうとした子なのに…
人生とは分からないものだ。
イギリスの詩人の言葉…えっと、"事実は小説よりも奇なり"だっけ?
…というよりも"昨日の敵は今日の友"かな?
なんでもいいやっ。
私の気持ちもつたえなきゃ。
「彩ちゃん…私は、私はね。別に愛があって彩ちゃんを助けたわけじゃないよ。
だけどね…2回目に彩ちゃんと会って印象ガラッと変わっちゃうんだもん。
初対面の印象が悪すぎたからかな?はは♪
それで私の事真剣に好きって言ってくれて、初めはそりゃ混乱したけど…
最近は彩ちゃんの良いところがいっぱい見えてきたんだよ♪
だからもっと彩ちゃんのこと知りたいなって…今は思うんだ。」
『嫌…。』
「え……?」




