わかるコト
『衣瑠ちゃん?どうしたの??』
「えっ?!別に♪彩ちゃん!お土産でも見る??」
『見たいっ♪なんか…こういうの初めてかも…』
微笑みながら目を滲ませる彩ちゃん…
「こういうのって??」
『なんでもない♪』
きっとお父さんやお母さんと…いや、もしかしたら友達ともこういった事をしたことがなかったのかな。
時折切なそうな顔を見せる彼女についてもっと知りたくなった。
「ねぇ…言いたくなかったらごめんね。彩ちゃんのお父さんお母さんってどんな人??」
『…急にどうしたの?』
やっぱり…両親の話になると顔色が変わる。
小さい頃の自分のようだった。
父親が居ない事が知られたくなくて、誰にも言ってなかったせいで、みんなが純粋に父さんの事を聞いてきただけでも、頭の中がぐるぐる掻き乱されて物凄く嫌な気持ちになっていた。
当時、莉結に指摘されて知った事だが、その時の"俺"は今の彩ちゃんのように、無表情で口だけ無理やり微笑ませていたそうだ。
「"なんでそんな事聞くの?"でしょ?」
『え…』
「今そう思ってたでしょ?あ、違ってたらごめんね。」
『私…』
「いやっ、私が勝手にそうかなって思っただけ。私ならそう思うから。」
『ふぅ…。ふふ…あははははは♪衣瑠ちゃん…正解だよ♪…なんで?』
「マジ?あは♪私がそうだから…かな。いや、"そうだったから"だね。
私は父さんが居ないから、その事聞かれるのが本当に嫌で嫌で…」
『私と同じ…』
「おソロだ♪ははっ♪」
『嫌な"おソロ"っ。』
「たしかにぃー♪」
すると突然彩ちゃんの表情が真剣になった。
『ねぇ、私の話、聞いてくれる?衣瑠。』