カクニン
「そろそろお昼ご飯にしよっか♪」
『そうね♪だけど…一回動物園出るの??』
やはりそう思っちゃうか♪
しかし私の女子力をなめてもらっては困るぞ。
「ジャジャーン♪手作りサンドウィッチー♪」
『わぁーっ♪』
この彩ちゃんの嬉しそうな顔と言ったら…
作った甲斐があります…
昨日急いで冷蔵庫の中にあるもので作ったけど味は保証する♪
日頃自炊している成果だなっ♪
「せっかくだからゾウの前でたべよっ♪」
ゾウの展示の前には、高い屋根の下にテーブルと椅子が並べられており、その奥にはアイスや玩具、ぬいぐるみなどが売られている売店がある。
お昼前ともあり、楽しそうにお弁当を食べてる親子ばかりだ。
そこに私たちもお邪魔する。
サンドウィッチをテーブルの上に置き、ペットボトルのお茶を置いた。
しかし…シチュエーションは最高な筈なのだが、
どうしても逃れられない事実が私たちを襲う。
想像してほしい。
場は動物園。
周りを見渡せば笑顔が溢れ、幸せそうにお弁当やおにぎりを食べる親子。
目の前には動物園の看板動物のゾウさん。
ここまでは最高だ。
…その脇には天に向かって背を伸ばすつくし達のように高く積み上げられた"モノ"。
そして春の爽やかな風に運ばれてくる"ソレ"の香り…
完全に場所を間違えた。
いや、間違えてはいない。
何故ならそんな場所はこの園内にはないのだから。
風通しが良いだけマシだ。
『お…おいしい…美味しいよ衣瑠ちゃん♪』
彩ちゃんはそんな事を気にしてないような素振りで笑った。
そんなに感動されると照れくさくなる。
「良かった♪ところで彩ちゃんは家族でこういう所来なかったの??」
『私の両親は昔から忙しいから…』
また彩ちゃんの瞳が曇る。
「そっかぁ…えっとね。私の両親も昔から忙しくてね。…というかお父さんは私が小さい時に死んじゃってるんだけど…」
『えっ??』
「親が連れてきてくれない代わりに莉結が一緒に行ってくれたんだ。勿論おばあちゃんが保護者としてついて来てくれたんだけどね♪」
そう言って彩ちゃんの方へ顔を向けると彼女は無表情で私を見つめていた…
『莉結さんの事…好きなの??』
え?急になにを??そんな事言われても…
「いや…莉結は…莉結の事は…」
『じゃぁ今すぐ私とキスして?』
え…??聞き違い…だよね?
私は耳を疑った。




