心の車窓
バスターミナル…ひさしぶりだなぁ。
私は空を見上げた。
そこには透き通るような青が広がっている。まるで空におっっっきな湖が広がっているようだ。
駅のすぐ北側に位置するバスターミナル。
時計塔を中心に円形に広がるターミナルを囲むように道路が敷かれ、バスがひっきりなしに発車、停車を繰り返している。
小さい時に好きだった自動車ターミナルの玩具を思い出す。
車での移動がメインのこの街では、地元民の大切な交通手段だ。
『ごめんっっ!!待ったぁ??』
軽やかな透き通った声がした。
「ううん。私も今来たトコ。」
『私、動物園なんて行くの初めて♪』
子供のように心を弾ませ、キラキラと輝く笑顔で私に喋りかけた。
この笑顔を見ていると"本当はこんないい子なのに…"と思う。
「行こっか。"天堂さん"。」
『"天堂さん"じゃなくて"彩"って呼んで♪』
1番乗り場にバスが到着する。
排出音と同時にドアが開く。
あぁ、なんか"お出かけ"って感じで楽しいな♪
聞き取りやすいのに何言っているかわからない声で運転手さんが喋ると、バスが出発した。
ターミナルを回って街中へと進んでいく。
…私の隣に座る"彩"という女の子は、本当に甘えん坊だと思う。
それは私と一緒で、甘えたい時期に甘えたいヒトに甘えられなかった事が原因なのだと思う。
私のように甘えたい願望を封印するヒトも居れば、彩ちゃんのように"特定の人物"に依存するヒトもいる。
表現の仕方は違えど、私たちは似た者同士なのかもしれない。
車窓から差し込む光に反射する"彩ちゃん"の髪が宝石のように輝いている。
いつ見ても綺麗な髪に整った顔。すらっと伸びた白い腕…
「ねえ彩ちゃん。」
名前を呼ばれたのが嬉しかったのか、目を見開き笑顔が咲いた。
『なぁにっ??衣瑠ちゃん♪』
「こんな聞くのもなんだけど…彩ちゃんは何で私なの??彩ちゃんならもっと色んなヒトいるのに。」
先ほどの笑顔が消えた。
『周りの子ってみんなウワベだけなの。ただ表面上仲がいいフリをしているだけ。自分の居場所を無くさないように色んな所に愛想振りまいて保険かけてるだけなの。』
その表情はとても悲しいものに見えた。
『今の私に心から向き合ってくれるのは衣瑠ちゃんと"アヤ"だけなの。』
「アヤちゃん?同じ学校なの?」
アヤという名前は聞いたことはない。
まぁ全ての同級生の名前を知ってるわけではないし、孤立していた私が知る由も無いか。
ただ私以外にそういった友だちが居ると聞いて安心した。
『学校というかゼンブ同じ…かな。』
車窓の外には浜馬湖の湖面がキラキラと黄金の稲穂のように光っている。
遠くを見る目でそれを見つめる彩ちゃん。
それがなんだか切なくて握りこぶしひとつ分だけ彩ちゃんに近づいた。




