咲いた花
『それで、どうなの?私は必要なの?必要ではないの?』
何故その2択しかないの?!
「天堂さん!!何でそーなんのぉ!?ちょっと冷静に話そ?ね?」
『私は冷静なのだけれど?』
「だってそんな事急に言われたって私…」
『じゃぁ私が判断してあげる。』
「え?天堂さんが判断ってどうい…
…え?
私の思考は完全に停止した。
『衣瑠ぅー。大丈…って、なに…やって……
あ…ごめん!』
莉結っ!!
なんでこのタイミングで…
私の唇から、繊細で柔らかな甘い感触が離れていく。
『決まりね。ふふ♪』
すると先程まで冷めた目をしたフランス人形のようだった天堂さんが、急に魂を込められたかのように生き生きとし、満面な笑みを浮かべて抱きついてきた。
シャンプーの匂いなのか、それともこの"不思議な生き物"の分泌液なのか…とてもいい匂いに包まれた。
そんな事より莉結の誤解を解かないとっ!!
誤解?…誤解はされてないよね?
誤解を解くというか、状況の説明になるのか。
そんな事はどっちでもいい!!とにかく状況を…
「って天堂さんっ!!動けないですよ!!」
『衣瑠ちゃんも私の事、満更でもないんでしょ?さっきされるがまま動かなかったのが証拠♪
私わぁー…衣瑠ちゃんが好きなんだもん♪いいでしょ?』
コレ誰…?
ってか別にそんな…
私の知っている"天堂さん"は冷酷で理不尽で、目は輝きが無く口元だけが不気味な笑みを浮かべている…
だが、目の前に居るのは明らかに別人だ。
潤んだ大きな瞳でこちらを上目遣い気味にじーっと見つめ、頬を赤らめモジモジしている…
こんなものを男子が見たら…いや、性別が男性なら誰もが心臓を高鳴らせ、いわゆる"キュン死"してしまう事だろう。笑
だが私は"女の子"だ!!
こんな二重人格の娘のこんな…こんな可愛い姿っ…いや、こんな姿に惑わされたりは…
こんな子にさっきキスされたの?私…
なんか急に恥ずかしさで頭がパンクしそうになってきた。
あぁ!!私は馬鹿だ!!
この天堂さんは私たちを殺そうとしてたんだよ?!
必死に自分に言い聞かせるも、その答えは"別にもういいんじゃない?"だった。
私は所詮"元オトコ"なのか…
自分の不甲斐なさにトコトン呆れた。
「とりあえずみんな心配してるから部屋戻ろっ…」
『うん♪そうだね♪これからはいつでも会えるからね♪』
もうどうでもいいや…なるようになるよぉ…




