雑草の花
天堂さんは私の想像とは裏腹に優しい口調で語りだした。
『私は分からなかった。アレからずっと考えていたの。
何故この憎むべき女は私を助けたんだろう…
そのまま放っておけば自分は助かって、自分を消そうとした女は人質になっていたのに…って。
私はあの日、もう全てを諦めた。
だって私のした事はすぐに白日の下へ晒されるのは確実。
これからの人生何もないじゃない?
まず学校へは通えなくなって
家にも居られないでしょうね。
私の居場所は全て無くなる。
だけどそれを貴女は裏切った。
枯れる運命の雑草に、水をやって花を咲かせてしまったのよ貴女は…』
「えと…花?ごめん。よくわかんないんだけど私は天堂さんに迷惑かけちゃってたんだよね…」
『言ったでしょ?貴女は雑草に花を咲かせたの。』
「雑草…?」
『そう。ある日突然、場所も選べないまま自分の意思に関係なく強制的にスタートした命…
雨を待ち望んでやっと手に入れた水も幻想で…あとは枯れるのを待つだけだったのに…
水だけでなく花までも咲かせたのよ。』
私には何が言いたいのか分からなかった。
だが私に対して怒りや恨みなどの感情は伝わって来ない。不思議な感覚だ。
「あの…健太くんとは?」
『あんなのもうどうでもいいの。私はもっと素晴らしいモノを見つけられたから。』
素晴らしい"モノ"?
結局健太とは戻らなかったんだ。
だけどなんか新しい恋でもしたのかな♪
よかった。
『衣瑠さんにならこの命捧げられるわ。』
そうかぁ。そんなに私のこと…
はぁっっっ?!?
「はっ?え?今なんて?」
『だから私の命は貴女のモノよ。気づいてしまったのよ。私を幸せにできるのは貴女しかいないって。』
「ちょちょちょちょと待ってよ!!どういう風の吹きまわし?!?!私の事崖から落とそうとしたのに?!」
『そんな過去どうでもいいじゃない。私は貴女の真剣な想いに気づいてしまったのだから。』
「どうでもよくなぁぁぁぁい!!てかアレは本能的に"助けなきゃ"ってなっただけで別に深い意味は…」
『それだけあればじゅうぶん。今日貴女が此処へ来たのも運命なの。』
イヤイヤイヤイヤイヤ、運命なんかじゃなく先生の指示だし。
なんかとんでもないことになってきちゃったな…
「ちょっと、なんか勘違いっていうか誤解…じゃないかな?」
『勘違いでも誤解でもないわよ。私は真剣に言ってるの。男の人は浮気をするけど、女の子は浮気なんてしないでしょ?』
どういう理屈だよ…泣
そんなの関係ないでしょ…
『とにかく…貴女は私のパートナーよ。よろしくね。』
「勝手に決めないでよ!!私は別に…」
『別に何?必要ないというのなら私はこの世界に居る意味など無いわ。』
また波乱が起きそうだ…




