お礼
心臓の鼓動がはしゃぐ仔馬のように飛び跳ねている。
生きて帰れますように…
って何バカなこと思ってんだろ私。はは…
私たちは綺麗に掃除された廊下を歩いていく。
その先の階段を登ると可愛らしい木札の掛かったドアの前に到着した。
"Aya's Room"
木でできたアルファベットが貼り付けられた木札には、花やくまさんなどで飾りづけされており、どっからどう見ても普通の女の子の部屋のドアだ。
…って私莉結の部屋しか知らなかったけ。笑
『さ、中へ入って。』
爽やかな美少女が可愛らしいドアの中へと案内する。
ホントに…あの天堂さんだよね…?笑
麗美さんが居るせいなのか、私たちの知っている天堂さんとは180°違っていた。
『わぁー♪可愛い♪』
天堂さんの部屋は白と薄いピンクを基調にくまのぬいぐるみやハートのクッションなど、"これがthe女の子の部屋だ!!"といった感じだった。
てっきり黒魔術のセットとか凶器、劇薬のフルコースでも並んでるかと…
こう見るとホントに誰もが羨む可愛い女の子なんだけどな。
『私、紅茶を入れてくるからそこに座っててくれる?あ…衣瑠ちゃんちょっと手伝ってくれない?まだ体調が優れないのよ。いいでしょ?』
ナニっ!?!?
莉結…どうしよ…
助けを求めて莉結の方を見る。
流石にこれには鈍感な莉結も気づいたらしく…
『それなら私も手伝うよ♪ほら!1人より2人、2人より3人って言うでしょ?あはは…♪』
言ってる事はよく分からないが助けに入ってくれる気だろう。よかったぁー…
『必要ないわ。キッチンを汚したくないから。』
本性出た!!
莉結は金魚の如く口パクしながら固まっている。
『それじゃ行きましょう。』
「いや、やっぱり莉結も…」
ハッ!!目がマジだ…
ごめん莉結…
私は墓場になるだろうキッチンへと向かった。
キッチンへ着くと、それはもうよく斬れそうな包丁や調理バサミやらが目に入る。
天堂さんは手慣れた様子でお洒落なティーカップを準備すると、紅茶の茶葉を取り出した。
『衣瑠さん。ひとつ聞いていいかしら?』
「え…はい。何??」
『恋人って何かしらね?』
はいぃー…
私のせいで貴女が失ったものであります…
なんて言えるかっっ!!!
「ごめんなさい!!!私…そんなつもりなくて!!
そのすいませんでした!!」
『なに謝ってるの?私は"お礼"をしなきゃと思ってるのに…』
身体中に寒気が走った。
天堂さんはゆっくりと私の方を向いて微笑んだ。