星空ウォッチング
『それじゃぁ移動するから足元に気をつけてついて来いよぉー。特にその3人!!またさっきみたいにはぐれないように!!』
わかってますよぉー…
あんまり注目されるような事しないで欲しいよぉまったく…
というのも私たちが"天使のオッサン"と別れた後、生徒たちが話す変な噂が耳に入ったからだ。
"莉結ちゃんとあの転校生の子、なんか事件に巻き込まれたらしいよ!!"とか
"あの転校生は不良で、莉結ちゃんもサボりに付き合わされてるんじゃないの"とか…
そんなのはどうでもいいんだけど…
"あの2人って付き合ってるのかな?"とか
"あの3人は"そういう関係"みたいだよ""とかいう声まで聞こえてきた。
せめて聞こえないように話してほしいものだ。とつくづく思う。
まぁ、噂話なんてすぐにどっかへ消えて行ってしまうものだと私は"知っている"からあまり気にしないようにしよう。
私たちは先生の後に続いて歩いて行くと、小高い丘に到着した。
微かな木々たちの枝葉の擦れる音だけが響く。
周りから歓声が聞こえる。
ふと上を見上げると…
うわぁ…
声にならない…
頭上にはダークブルーの夜空に輝く数えきれないほどの星々が
ジワジワと朧げな光を輝かせていた…
その中でも一際輝く金色の月。
そのまんまるな光の球がキラキラと輝いて辺りを照らしている。
空一面に広がる煌めく漆黒の空間を見て改めて実感させられる。
私達は果てしなく広がり続けている宇宙空間に浮かんだ星の上に居るんだ…って。
『こんな綺麗な星…見たことないよ…』
隣に目をやると子供のように目を輝かせた莉結が口をぽかんと開いたまま空を見上げていた。
その横顔が子供の頃の莉結と重なって、なんだか懐かしい気持ちと同時にあの頃の淡い気持ちが込み上げてくる。
あの頃は何をしても楽しくて、目に映る全てが輝いて見えていたっけ。
莉結と居るとたまに子供の頃に戻った気持ちになるんだよな…
莉結は天然で何考えてるかわかんなくて、子供みたいですぐ拗ねるし…
だけどいつでも前向きで純粋で何に関しても一生懸命で…一緒にいて楽しいし飽きることもない。それにいつだって私のことを考えてくれる私にとって1番の…
1番のなんだ…
あれっ?友達?親友?幼馴染?家族?
思いつくどれもが当てはまらない。
私は莉結のこと…『見て見て♪あの星すっごいキラキラしてる!!本当に凄いよね…』
莉結が子供のような無邪気な笑顔で言った。
「あれはシリウスじゃない?左上がプロキオンでその隣の赤っぽいのがペテルギウスだっけ。」
『すっごぉーい♪天文学者みたい♪』
いや、それくらい小学校でも習った気がするぞ…
『衣瑠ちゃーん♪じゃぁアレは?』
そういうと何故か隣へ密着してくる麗美さん…!!
こういうのが誤解を招くんだよっ!!泣
麗美さんの体温と、フワリと香るシャンプーの匂いが私の鼓動を高めた。
『あ…あれはアルデバランかな?』
『ほぉー♪さすが衣瑠♪じゃぁアレは?』
えっ?
ちょ….莉結?!
莉結までも密着して胸が…いや!なんでもない!
莉結のシャンプー香りもいい匂いだなぁ…
って私はヘンタイかっ!!泣
なんだよこの状況ぅー…
こ…こういうのをハーレムって言うんだきっと!!
って私、女だけど!!
じゃぁなんでこんなドキドキするんだよぉー…
理不尽な身体だなっ!!!
『衣瑠ちゃん。ちょっといい?』
突然声を掛けられ後ろを振り返る。
「あ…」
そこには"いま会いたくない"人物が立っていた。