ワクワクでウォクウォク
『先生…成功…ですよね…』
『その為に"あの子"を使ったんだ!我が子に失敗は許されない。』
…懐かしい声。
あ!この声は父さんだ!!
『そろそろ瑠衣が目覚める。記憶に残らないようしっかり調整しておけよ。"あの子"の両親には改めてちゃんと礼を言わねばな…』
…何のこと?
痛っ…
急に激しい頭痛に襲われて目を覚ました。
眩しい…
なんだ。もう夕方か…
はっ?!夕方ぁっ?!
「莉結っ!!目を覚まして!!またやられた!!」
『んん…なにが?………眩しいよぉ…あれ?え?ウソ?!もう夕方なの?!』
窓からは黄金色に輝く夕陽が差し込み、外の芝生は黄金の絨毯へと変化していた。
とても綺麗だ…こんな素晴らしい地球に産まれた事を感謝…
してる場合じゃねぇっつーの!!!!!
なんでまた放置プレーなんだよ!!
趣味っっ?!
嫌がらせ?!
ったく山田先生はなにやってんだよ!!
もっとこう…なんていうの?こう…
大切にってか、うん。大切にして欲しいッ!!
普通の生徒なら心に傷負って立ち直れないよ?
『…ひとりで何言ってんの?』
「え…?なにが?」
『放置プレーだの、立ち直れないだの言ってたじゃん。』
「言ってないよ!!全然っ!!」
え?なんで聞こえてんの?!
私の心の声だよね?!
"カギカッコ"ついて無かったよね?!
『まぁいいんだけど…早くみんなのとこ行かなきゃじゃない?!』
たしかに!!
「そうだよ!!早く行かなきゃ私の大切なメモリアルがっ!!」
『メ、メモリアル…?』
急いで片付けを済ませて外へと飛び出る。
みんな…ドコ?!
『えっと…この時間は…ヤバっ!!ナイトウォークの集合してるみたい!!』
「え?昼間にウォークラリーしたのに?」
『ふふ♪ウォークウォークだね♪だからウォクウォク?』
…
不思議な単語が出てきた事にお詫びしたい。
「とりあえず急ごう!!ドコ集合っ??」
『えっと…』
その時遠くから声が聞こえてきた。
『おーーーいっっ♪衣瑠ちゃぁーん!!会いたかったよぉー♪』
この声は…
「ねぇ、"アレ"どうしよう。」
『え…私に聞かないでよ!なんか更に激しくなってない?笑』
「同感だから怖いんだって。ほら!女の子にベタベタされるのも恥ずかしいしさ!!なんとかしてよ!」
『えぇー?!だってもう"衣瑠"なんだから気にしなくていいでしょー??…それとも麗美さんの事気になるの…?』
なにその顔…急に真面目な顔なんかして…
莉結には関係ないはずだろっ。
「別にそんなんじゃ…」
『だったらベタつかれて来なさい!笑』
ドン!っと背中を押されて迫り来る麗美さんと正面衝突…
『痛ぁっー…大丈夫?』
「だ…大丈夫だよ…」
痛ぁー…あ、頭が…
『ゴメンね麗美ちゃん!!ほら立って!』
莉結が麗美さんへ手を差し出す。
『ゴメンゴメン!莉結ちん。あんがとっ♪』
え…?
その時、私は"あるモノ"が目に映り込む。
アレ…私と同じ注射の跡?
そう、新しいものではなさそうだが、例の薬を打った跡だ。
他人がぱっと見で分かるものではないが、散々自分の腕を見てきた人間が見ればすぐに分かってしまう。
…なんてな。そんな訳ない。
こんな"被害者"が他に居てたまるかっての。
『なぁーに考えてんのっ?ほんとどんな顔も可愛いなぁキミは♪』
頬っぺたを"ツン"とされ我に帰る。
『あぁ!莉結ちんゴメンゴメン!そんな怖い顔しないでよぉー♪』
『えっ!?別にそ、そんな顔してないよっ!!』
それはそうと…
「ねぇ、ひとつだけ聞いていいかな?」
『ん?』
「いま何時??」
『アァァァァァーーー!!!!』




