おやすみの前に
部屋の電気が消されて辺りは暗闇につつまれた。
少し目が慣れてくると、意外に月明かりが明るい事に気がつく。
布団に入って横になり、隣の莉結に話しかけた。
「月がこんなに明るいなんて知らなかったよね。」
『え?あ、ホントだ♪綺麗…』
目が完全に慣れた頃には、月明かりだけで隣に横になった莉結の顔がわかるくらいだ。
窓から差し込む月の光を眺めながら1日を振り返った。
今日も朝から大変だったなぁ…
嫌な事もあったけど…
本当に誰の仕業なんだろう…
あんな事してくるってことは簡単な理由じゃないんだろうな。
2人?3人?
もしかしたらこの中に"その人"が…
クラスみんな…なんて事…ないよね?
急に怖くなった。
私はこれからうまくやっていけるのだろうか…
嫌がらせがどんどんエスカレートしていくんじゃないか…
そんな事が頭の中をぐるぐると回っている。
今なんとかやっていけているのも莉結が居てくれたおかげだな…
「今日は本当にありがとう。色々あったけど莉結のおかげで乗り越える事ができたと思う。心から感謝してるからね。」
……
返事の代わりに"すぅすぅ"と静かな寝息が返ってきた。
疲れたよね。
ありがとう…莉結。
明日も…よろしくね。
辺りはとても静かだ。
いつもの"バイクの音"や"車のエンジン音"、"遠くで聞こえるパトカーや救急車のサイレン"も聞こえてこない。
聞こえるのは風と、風に揺られる枝の音。
…そして私を呼ぶ声。
え?!
それは風の音に消えそうなくらい小さな声だった。
『衣瑠ちゃん…起きてる?』
後ろから聞こえたその声の主は"ほのかさん"だ。
「どうかしたの?」
私は同じくらいの小声で返事をした。
なんかこういうのって"秘密の取引"みたいでワクワクする♪
『莉結ちゃん起きてる?』
「もう寝ちゃってるけど?」
『なら良かった。』
そう言うと、ほのかさんの布団の膨らみがこちら側にモコモコと移動してきた。
近い…
まだ"異性"として見てしまうんだろうか…このシチュエーション緊張する。
布団から顔だけ出して横になった状況で、頭2つ分くらい開けて向かい合っている。
『さっき言ってた事ほんとう?』
「え?どの事?」
『えっと…衣瑠ちゃんは女の子同士の恋愛もおかしく思わないの?』
「あっ…うん。私は恋愛に性別は関係ないと思ってるよ。」
『そっかぁ。ところで衣瑠ちゃんは莉結ちゃんとお付き合いしてるの?』
「え?!してないしてない!!びっくりしたぁー…」
『え?そうなんだ♪良かった…』
「なんで?やっぱり"そういう関係"は風紀上良くないってこと?」
『そんな事ないわ。ただ…』
「なぁに?」
『あ、いや…じゃぁこれからはあ委員長として、2人が変なことしないように見張らせてもらいます!!』
「え?!どゆコト?!」
『いいからっ!衣瑠ちゃんの側で見張らせてもらいます!!委員長として仕方なくだから!!』
えぇ…めんどくさいよぉ…
しかも正体バレたりしないよね…
「あの…遠慮しときます。」
『ダメです。』
「本当に大丈夫ですから…」
『いやっ、でも…』
「落ち着かないからいいよぉ!!」
『だって…』
「安心してよほんとに大丈夫だからさっ!」
『衣瑠ちゃんの事もっと知りたいの!!』
「え?ほのかさん?」
『あっ…え…』
「だったらこれから少しずつ仲良くしよっ?(笑)
そんな風に思ってくれてるとは思わなかったよ♪」
『え?いいの?あの…よろしくお願いします…。』
「うんっ?よろしくね♪………ふぁぁぁー…なんか今日疲れたから早くねちゃぃそだ…ごめ………すぅー…すぅー…」
(あれ?衣瑠ちゃん寝ちゃった…
可愛い寝顔…
あれ?!なんだろう…すごいドキドキする。
どうしよぉ〜なんか目が冴えちゃって寝れない!!!)
…林間学校2日目に続く…。




