湯加減はいかが?
なに?!そんな目をまん丸にしてっ…
って!あぁぁぁ!!
タオルぅっ!!
慌てて前面を隠した。
うわぁぁぁ!見られたぁ!!
莉結はアワアワと目をまん丸くして言った。
『な…無いっ…』
「え?!しょうがないってか当たり前だろ女なんだから!!」
『じゃなくて…あ、な…なんでもない!!』
あぁ恥ずかしっ!!
恥ずかしがる事でもないのかもしれないけど…
やっぱり恥ずかしい!
とりあえずこの場の雰囲気を変えなきゃ!
「…お風呂行こお風呂!!」
…何故か気まずい雰囲気になりつつ入浴。
そしてこれまた何故かすぐ隣に莉結がいる。
『気持ちいね!』
「う、うん!」
『貸切だね!!』
「だ、だね!!」
なんだよこの会話…
暫く沈黙が続き、そっと莉結が口を開いた。
『衣瑠はこのまま女の子でいる気はないの?』
どこか寂しげに聞こえた。
「…そうだなぁ…もし男に戻る方法があったとしても、それは本当の自分じゃないから…今はこの身体が本当の自分だって思うようにしてるよ?」
だけど実際"瑠衣に戻れる"となったらどう決断するかなんて分からない。
『そっか♪私はそれでいいと思うよ♪』
子供のような笑顔で笑うと同時に
濡れた髪が莉結を"大人の女性"に魅せていた。
それにしてもこのお湯熱すぎないかな…
いつもは風呂なんて"烏の行水"程度だから
この温度でこんなに長く入ることはない。
『山田先生もいいトコあるよねぇ♪私達だけ特別だよ?』
ニコニコしながら話す莉結はやはり子供のようで…莉結…
あれ…
暗い…
重たい瞼を持ち上げるとそこには
莉結…
莉結の顔が数センチの所に迫っていた。
「あっ!ごめん!私、あれ?」
『あ!起きたっ?!あのっ…本当に勘弁してよね!!いきなり意識なくすんだから!!のぼせたんだよきっと。』
あぁ、私のぼせちゃったんだ。
莉結も顔赤いけど大丈夫かな。
『もう出よっか♪』
「そうだね…」
またお互い見ないように着替えを済ますと、長い髪を風圧の弱いドライヤーで延々と乾かし…
化粧水やら乳液やら…今まで
関係なかったものを時間をかけて塗り込み…
やっとの事でロビーへ戻った。
山田先生は相変わらずソファーに座っていたが、林間学校の資料だろうか、何やら作業に勤しんでいる。
『先生ありがとうございました!!』
『おうっ!』
一言そういうと再び作業へ取り掛かる。
『そろそろみんな戻ってくるから、そしたら荷物持って部屋に行ってね。』
保健の先生も仕事中かな?
資料をまとめながらそう言った。
間も無く外からワイワイとはしゃいだ声が近づいてきた。
『衣瑠ちゃんに莉結ちゃーん!大丈夫??キャンプファイヤーの時居なかったよね??』
ほのかさんだ。
『ちょっと衣瑠とトイレ行ったら転んじゃって♪先にお風呂入っちゃった♪』
『えぇ?!いいなぁ!!私も早くお風呂入りたいわぁー。』
『気持ちよかったよぉー♪なんかごめんねっ!!あ、荷物持って部屋行くんだよね?』
『そんな事気にしないって♪…んで荷物持って部屋だよっ!今日は疲れたからお風呂入ったらすぐ寝ちゃうなぁー♪』
「ほんと今日はご迷惑おかけしましたっ…」
『いやぁ…私が気を使えなかったせいで…私の方こそごめんなさい。また夜ゆっくり話そ♪』
「うん♪そうだね♪」
生徒たちが荷物を持って移動を始めている。
私たちも荷物をもって部屋に向かった。