成長の証
なんだかんだで大浴場に着いてしまった…
大浴場と言っても旅館やスーパー銭湯のように立派なものではない。
近所の銭湯くらいの規模だ。
プールの更衣室くらいの大きさの脱衣所で、
莉結は淡々と服を…
わっ…!!
なんでそんな恥じらいもなく脱げるんだよ!!
思わず目を逸らして反対を向く。
『莉結も早く脱げばぁ?』
服が肌に擦れる音だけが響いている…
仕方ない…今は俺…いや私は女なんだ!恥ずかしがることはないよね?
そう何度も言い聞かせて服を脱いでいく。
莉結はもう準備が終わったみたいで俺の後ろに立っているのがわかる。
な、なんか緊張する…
「あんまり見ないでよっ!!」
やっぱり今は女なんだとしても抵抗が…
女だから逆に気にせず?
いややっぱだめ!!
『いいじゃん女の子同士なんだしさ♪』
そうだけど!!んんー…
服を脱ぎ終わり、すかさずタオルで全面を隠した。
「莉結もタオルで隠してよ!!」
親しき仲にも礼儀ありだ。
なんか違うかな?まぁそういう感じってこと!
『もう隠してるよ♪一応、衣瑠の為にね!笑』
なんだ。
って別に期待してた訳じゃないけど!!
意を決して振り返る。
そこにはバスタオル1枚の大人びた幼馴染の姿があった。
毎日見てる筈なのに…
莉結じゃないみたいだ。
って見とれるな私!!
あぁ…もう自分にツッこむの疲れてきた…
…あれ?なんだ。莉結も顔真っ赤じゃん。
平然としてるからなんとも思ってないかと思った。
俺は莉結を見ないように先に大浴場へと入る。
「莉結はそっちで洗って!!私こっち!」
1番距離が取れるようにして身体を洗う。
未だに慣れない長髪に苦戦しつつ髪を洗っていると背中に何かが当たった。
まさか!!!!
『背中流してあげるー♪』
身体を洗うタオルだった…
なに変な妄想してんだよ!!
恥ずかしくなった。かなり…
「もう!視界に入らないように気をつけてよ!私の気持ちを汲み取れっ!!」
『だってこんな機会ないんだし。思い出さない?小さい時♪』
「まぁね…あの頃はなんとも思ってなかったのに。成長しちゃったんだね。」
『え?!衣瑠のえっち!!』
「いやっ違うよ!精神的にって意味です!!」
『な…なんだ!けど1番変わったのは"瑠衣"だけどねー♪』
それは間違いない!
「私以上に変わった人居たら会ってみたいよ…笑」
『けど…衣瑠って、本当に細くて綺麗で真っ白で…普通の女の子より女の子だよね。胸は小ぶりだけどね♪笑』
「はいはい。私は胸なんてどうでもいいし、むしろ無い方が楽です!!笑」
小さい頃よく莉結と入ったお風呂を思い出す。
楽しかったなぁ…
私が昔から女の子だったらずっとこうやって莉結とお風呂に入ってたのかなぁ。
『じゃぁお風呂入ろっか♪』
いつのまにか身体を洗い終えてたのか。
ぼーっとしてたな…
ふっと立ち上がり下を見ると、タオルを巻いた莉結が目をまん丸くして顔を真っ赤にしていた。