大問題
私は莉結の手を引いて軽快に走り出して…
ド派手にコケた。
『ったぁ…だから急に走んないでって言ったのにぃ…』
「ごめん…痛ってー。」
そう、俺が走り出してほんの数秒後の出来事だ。
足元が暗く、木の根が横に張っていたのに気づかず、すっ転んだ。
そしてお互いに服は土だらけ。
サイアクだ!
宿泊棟に戻るとロビーには山田先生と保健の先生がソファーで談話していた。
『なんだお前ら!なんかされたのかっ?!』
"ゴンッ!!"
急に立ち上がろうとした先生は机で膝を強打した。
が、男の意地なのか知らないが
なにも痛くなさそうなフリをして顔面をピクピクさせている。
滑稽だ…
吹き出しそうになるのを堪えながら頑張って冷静に答える。
「いえ…走ったらつまづいて転んじゃいました(笑)」
『なんだ…心配したぞ?てかお前らキャンプファイヤーは?』
「あはは…すいません。戻りづらくて…それまでここに居てもいいですか?」
『それは構わんが…てかお前ら先風呂入っちゃえ!みんなと入るの気まづいだろ?』
え?!
そんな、独断で決めていいの?!
まぁ、こんな格好じゃアレだし、ありがたいな。
「じゃぁお言葉に甘えて…それで私たちの部屋はどこですか?」
『部屋?そこの荷物から着替え出して大浴場にそのまま行けばいいだろ?』
「え?部屋に浴室付いてないんですか?」
『は?お前何のためにこの林間学校やると思ってんだ。結束力を高めるためにみんなで作業してメシ食って、そんでみんなで風呂入るんだろー。しかもこんなボロっちぃところに個室とかあるわけでねーだろう!はははは!!』
あの…フロントに施設の人いますけど?
めっちゃ見てますけど?
『衣瑠ー。しおりにも書いてあったけど、みんなでお風呂入ってぇ、それから大部屋でみんなで寝るんだよ?笑』
そ…そうだったのか…
え?!みんなで風呂…
無理無理無理無理!!どうかなっちゃう!
「え…まじ?…」
『特別に許可してやるから早く入ってこいっ!』
『はぁーい♪ありがとうございます♪』
「莉結?まじ?」
『いいじゃん♪女の子でしょ?笑』
「そうだけどそれとこれとは…」
莉結は嬉しそうに俺の手を引き歩き出す。
フロントにあるバッグの山から自分のバッグを取り出し着替えを出している。
『荷物なくなってるのないか確認しろよー!!』
先生が後ろで叫んでいる。
俺は自分の荷物を確認する。
大丈夫みたいだ。
少し安心した。
それよりも…莉結と風呂?!
小さい頃はよく一緒に入ってたけど…
莉結は気にならないのかな…
"俺"にとっちゃ大問題だよ!!