晩御飯はカレー
『そろそろ戻れよー!!』
先生の一声でふと現実に戻される。
うわっ!俺なにしてんだ…
莉結と肩を寄せ合い景色を眺めていた自分が急に恥ずかしくなった。
莉結も同じ気持ちなのか顔を赤らめていた。
「そろそろ行く?」
『そ、そうだね!次は炊飯棟でカレー作りだったよね!!』
炊飯棟へ行く列へ合流してからも、何故かぎこちない会話が続いた。
女なんだから別に変じゃないよな…
お互いなに気にしてんだろ。
炊飯等に着き先生から説明を受ける。
ひらけた広場のような場所に木で作られた屋根が何個かに分かれて点在している炊飯棟の真ん中には大きな台が設置してあり、流し台もある。
その台の上には食材や調理器具といったものが綺麗に並べられていた。
説明が終わるとあらかじめ振り分けられていた班ごとに分かれる。
俺の班は莉結と男子4人、女子2人の計8名だ。
今は16時。
19時頃までに班ごとにカレーと飯盒炊飯によるご飯を作り上げるといった内容だ。
『男子はご飯作ってよね!』
と、早速指示を出したのがクラスの学級委員でもある"ほのか"さんだ。
成績優秀で真面目な"純情乙女"って感じの子。
真面目な性格のせいか、一部のクラスメイトからは少し嫌がられている。
『えぇー?ってか莉結さんと、その…衣瑠ちゃんはどっちやるの?』
こいつはサッカー部の健太。
サッカーの実力は県内一とまで言われており、静岡県でサッカー選手に1番近い高校生だ。
それも相まってクラスのリーダー的存在だが少しバカだ。
噂によると他のクラスの"お嬢様"と付き合っているらしい。
ま、どうでもいい話だけど。
『私たちはカレーがやりたいなぁ♪』
俺も、莉結は料理が得意だからその方がいいと思う。
莉結の手料理は格別だからなっ。
『じゃぁ俺たちもカレーにしよっ!!』
『バカ!あんたたちと莉結たちを一緒にする訳ないじゃない!男子は飯盒炊飯って昔から決まってるの!!』
『あの…私はどちらでもいいので。』
ぼそっと"千優"さんが言った。
『ほらみろ!そー言ってんじゃん!俺らにはこういう時しか仲良くなる機会ないんだからいいじゃん!』
こいつもサッカー部に入っている"亮太"。
健太と昔から仲が良く常に一緒にいる。
俺が"男だった頃"、愛想の悪い俺にもよく話しかけてきた。
世渡り上手な優男って感じかな。(笑)
てかこいつらもバカなこと言ってんな…
クラスメイトに好意を寄せられるのはあまり気が乗らないな…
『それともか弱い女の子に火傷させる気?』
『わかったよ。米炊きゃいんだろ。』
男たちはぶつくさ言いながら飯盒の準備をはじめる。
『さっ、衣瑠ちゃん♪仲良くしましょっ♪』
『あ、はい。』
『衣瑠〜♪野菜お願いねっ♪』
『はーい!』
俺も料理は得意な方だ。任せとけ!!
周りの班が試行錯誤している中、
俺たちの班は早々と具材の調理を終え、あとは煮込むだけとなった。
『莉結ちゃんも衣瑠ちゃんも凄いねぇ!!私何にもやってないや♪』
いや、皿洗いは完璧だったと…(笑)
『ほんとなにもかもやってもらってごめんね。』
千優さんはひたすらじゃがいもの皮を剥いていたが…
皮を剥き過ぎて形になってきたものが無かった。
『よしっ♪あとは待つだけだね♪ガールズトークでもしちゃおう♪』
ほのかさんってそんなタイプだったのか。
『いいねぇ♪しちゃおしちゃお♪』
え?!莉結も?!
千優さんはやっぱり気は進まなそうだな。
こうして"ガールズトーク"とやらが始まってしまった。