絆創膏とキミとこの丘で。
体験学習が終わり、少し自由時間になったので、俺は莉結とトイレに来た。
やはりまだ女子トイレに入るというのは抵抗がある。
『はい♪絆創膏。』
…と言われましても。
「怪我してないけど…」
『え?んもぉ、違うよ。その…ブラしてないと擦れるし、目立つでしょ?』
ということは…
「これ貼るの?!」
『しょうがないじゃない!どっかの誰かさんがおっちよまこちょいなんだから。女の子はこういう時みんな貼ってるの。』
なに?!そうだったのか…気づかなかった。
てか、そんな頻繁にブラ忘れてるのみんな?!
「っていうことは莉結もやったことあるの?」
『はぁ?!しょ、しょうがないでしょ!』
いや、しかし莉結のサイズでノーブラが分からなかったんだから俺でもイケる!
「ちょっと付けてくる!」
そう言って個室へ入る。
ジャージをたくし上げ絆創膏をめくる。
うぅ…自分の胸とはいえ…
恥ずかしい。
絆創膏を貼り付ける。
「うぁっ。」……っと!
こんな敏感だったのか!!
我ながら変な声出しちまった。
莉結に変なふうに思われてないよな…
なんか変な感じ…
けど…案外使えるなぁ。
「出来たよ。」
『…うん!大丈夫!!これから絆創膏持ち歩きなさいよぉ!って使う時が無いようにするのは勿論だけどネっ!!それより少し散歩でもしない?』
「そうだね!!せっかく来たんだから自然を満喫しよーっ♪」
建物の外は森に囲まれ、森林の爽やかな風が吹いている。
「あぁー♪気持ちぃー!!」
『あそこの見晴らしの良さそうなとこまで行ってみようよ♪』
莉結の指差した方向を見ると少し高くなった丘があり、前方の森が開けていた。
『さっ、行こっ♪』
そういうと莉結は俺の手を…
手を?!
握ってるんだけどなんでこんなドキドキするんだろう?!
今までそんなことは無かったんだけどな…
「手握るなんて恥ずかしいよ。」
そういうと莉結はニコッと微笑んで言った。
『女の子は普通なの♪』
そういうモンなのか?
まぁいっか♪なんか新鮮だし♪
丘に立つと山下の街並みが広大に広がっていた。
『うわぁー♪きれーい♪』
子供のように歓声をあげる莉結。
それに答えるようにとんびが"ピーヒュルルルル"と鳴いた。
そのまま2人で並んで座って遥か遠くに輝く街並みを眺めていた。
地平線には海も見える。
なんかいい。
俺には、この美しく雄大な自然を的確に表現できる言葉はまだみつからないけど。
…もしかしたら正確に言葉として表すことはできないのかも。
莉結が、俺の肩に頭をゆっくりと委ねてきた。
誰かに見られるかもしれない…とか考えてたけど、
別に見られてもいいや。
だって"いま女なんだもん"。
このまま時間が止まればいいのに。
そんな"恋愛小説に出てきそうなセリフ"が頭に浮かんでスッと消えた。