After Story Dear Rei.8
『稚華っ、やめろっ!!』
切迫した低い声が父親の喉元から絞り出される。
私達はハッと我に返り、目を見合わせると一斉に稚華さんの手を掴んだ。
『稚華サンっ!!ダメだよっ!!やめて!!』
『稚華ッ!!冷静になりなさいッ!!』
『稚華さんッ!!』
緊迫した声が入り混じる。
しかしその声に助長されるように稚華さんは再び声を荒げた。
『コイツはッッ、生きてちゃイケナイんだよッッ!!』
ダメだ…稚華さんゴメンっ!!
私は稚華さんの腕を取り、バランスを崩させると、"ドスン"という音と共に稚華さんの身体が"フワリ"と地面へ吸い込まれる。
その反動で父親も崩れるように地面へと座り込むような形でその身体を落とした。
『痛っっ…あ!!クソオヤジぃ!!』
またすぐに立ち上がり父親に掴みかかろうとする稚華さんを私たちの手が掴む。すると、振り返る稚華さんの瞳に溜まる大粒の雫が見えた。
そしてその雫が、振り向いた反動で目尻から頬へと"ツゥー"とその尾を引いていく。
『稚華…もうやめよ?』
『だってコイツは…私達の人生を滅茶苦茶にしたんだ…よぉ…』
吐き出す言葉と共に稚華さんの身体から力が抜けていくのが分かった。
それを見た父親が大きな溜息を吐きゆっくりと立ち上がった。
『せっかく一緒に暮らしてやろうとしたのに…なんて奴だ。』
そう言葉を投げ捨て、服に着いた土を払いつつその場を立ち去ろうとする父親の背中を見た瞬間、私の胸の奥がギュウと締め付けられ、気がつくと私は父親の腕を掴んでいた。
『なんだ?手を離せ。お前たちも見ただろ?稚華は父親を簡単に殺そうとするような奴だ。そんな奴とはもう二度と関わらない方が身の為だぞ。』
「謝って下さい…」
『フッ…何を言うかと思ったら。ふざけるな!!』
勢いよく振られた腕から私の手が離れる。
「あなたは…少なくとも血が繋がった父親ですよね?」
『だからなんだ?当たり前だろう。だからこうやって嶺の墓参りに来てるんじゃないか。』
「…どうしてですか?」
苛立ちが露わになった視線が私を睨んだが、その視線を正面から受け止めて私は続けた。