女の子だもん。
バスがストップしてから30分ほど経とうとしている。
そして俺は…緊急事態の窮地に立たされていた。
「ねぇ、莉結…トイレ行きたい…」
『えっ?!どうすんの?!』
「降りてどっかで…『ダメぇっ!!そんなの女の子として死んだも同然だよっ!!我慢…できない?』
そこまで言うか…
「たぶん結構限界なんだけど…」
やはり男女で感覚が微妙に違うのでどの程度まで我慢できるのかがよく分からない。
あぁ…男だったら何も考えずにバスを降りて森林浴しながら開放感に満ちた放水作業を行えるのに…
女って不便。
そんな俺を知ってか知らずか、男子どもは次々と"小便いってきまーす"とバスを降りていく。
くそっ…放水中にホースを虫に刺されてしまえ!!!
苦悩と戦っているとバスが動き出す…
ピーッピーッピーッ…
ってバック?!
なんで後退してんだよぉーーー!!
あと少しで着くんだろ?!
あぁー…終わった。
こんなところで砂漠にオアシスを、作り出してしまうのだろうか…
俺は、近々出現するであろうオアシスについての言い訳や、今後の人生について考えていた。
そんな時だった。
『それではトイレに行きたい人は行ってこいよー。』
天使の囁きが聞こえた気がした。
ふと窓の外を見ると…
公衆トイレだ!!
悶えていて来る途中見逃していたようだ!!
ふぅ〜…
嗚呼、神さま。こんな時に生きていて良かったと思ってしまう私は罰当たりなのでしょうか?
しかし私は幸せです。
「たっだいまぁー♪」
『おかえり♪良かったねぇ衣瑠ちゃん♪(笑)』
「いやぁ〜一時はどうなっちゃうのかと思ったよ。(笑)
今は本当に清々しい気分だよ♪」
しばらくするとバスは運行を開始し、予定よりも1時間遅く俺たちの宿泊施設"わかな野外活動センター"へ到着した。
大自然の中に佇む平屋方形屋根の建物は周りとうまく調和している。
建物のすぐ裏は雑木林になっていて、
スギ、ミズナラ、ブナ、シメジ、などの…
じゃない!ブナ、ヒノキなどで構築されている。
空気が綺麗だ。
珍しく今朝から妙に清々しい気分であったが、
この自然たちが更に清々しさを増してくれる。
"今の身体"の小さな肺にめい一杯空気を吸い込んで吐き出す。それだけでこの"林間学校という試練"も簡単に乗り越えられる気がした。
早速"本館"にて開校式を行う。
小学生から高校生まで同じ原稿なのか…
"沢の水を飲まない"とか"草とか花を持ち帰らない"とか言う話を延々とされた。
多少は内容変えようよ…笑
おそらく大多数の生徒、先生方が同じ意見を持ったことだろう。
あとはセンター長さんのお話を聞いて、建物の配置や利用方法など説明を受け、開校式は終わった。
あー腹減ったなぁー…
昼食は…食堂かぁ。
その後昼食のために食堂へ移動した。
木の質感をそのまま出した、天井の高い造りの部屋だ。
給食スタイルで列になり一品ずつ"よそってもらう"感じだ。
席は自由だったので莉結と2人で席に着いた。
すると何処からか聞いた声が聞こえた。
『私も一緒にいいー??』
麗美だ。
そういえば朝も会わなかったし着いてからも気配がしなかったけど…
『お隣の席しっっつれぃ♪いやぁー!!寝坊して大変だったよー♪(笑)』
そういうことか。
『ママにここまで送ってもらったんだけど警察凄かったよね!見た??』
「あぁ、車の事故のやつでしょ?あのせいでバスが動かなくて大変だったんだからぁ…(色々と…)」
『まぁ強盗犯が逃げちゃったんじゃぁしょうがないよね。さってと、いっただっきまぁーす♪』
さらっと、何言った?
「強盗が逃げてる?!それシャレになんないだろ?」
『だよね?麗美ちゃんそれ怖い事だよー!!』
『まぁ、あんだけ警察いれば大丈夫じゃなーーーい?』
その楽天的なところ見習いたいもんだな…
まぁ、たしかにあれだけ、大人数警官がいれば捕まるのも時間の問題か。
…「あぁーうまかったぁーー♪」
『衣瑠ちゃんって案外男っぽいとこあるよなぁ♪またそこが魅力的でもあるんだけどネっ♪』
やべっ。ついいつもの癖が…
『衣瑠は双子のお兄ちゃんといつも一緒だったから移っちゃったんだよねぇ♪』
「そうそう!!私友達居なかったからさぁ♪ははは…」
『え?いつも一緒に居たのに学校は別だったの?』
鋭い!!
「小さい時だよ小さい時!!早く片付けて移動しよっ♪」
うわっあぶねぇ。
意外と頭が冴えるヤツだな。注意しないとバレちまいそうだな…
『次は体験学習なので、食べ終わった者から移動するように。』
先生だ。
「体験学習かぁ♪楽しみだなぁー!!ははははは…!」
なんとか誤魔化せた…かな?(笑)
続く。