いざ!林間学校〜1日目〜
莉結の家を出て自分の家へ帰る。
母さんは居るのだろうか…
玄関のドアを開ける…
いつもと変わらない玄関。
やっぱり居ないか。
自分の部屋へ戻ろうとした時、キッチンの机の上に何かが置いてあるのが目に入った。
なんだろう。
それは産まれたばかりの赤ちゃんを幸せそうに抱き上げ笑う、幸せそうな家族の写真だった。
なんなんだよ…
こんなに幸せそうにしてるくせに。
俺はその写真をそっと鞄にしまい込んだ。
ピピピピ…
ん…
ん?
朝か。
いつもより朝陽が輝いて見える…
今日から本当の"私"の人生が始まる。
そんな気がした。
よぉーーーしっ!!今日も1日ガンバルぞぉー!!!!
昨日は準備でかなり遅くまでかかっちゃったからなぁ…
眠い!!!
女ってのは本当に必要か分からないもんばっかり持ってくんだから大変だよ…
莉結が書いてくれた"女の子の必需品メモ"を見てため息を吐く。
よし!ささっと準備して出発だ!!
「おはよっ♪」
『お…おはよ♪なんか今日の瑠衣キマってるね♪』
「今日から新しい人生なんだ!気合い入れないとね♪」
『もー…また男子が寄って来ちゃうよぉ?まぁいい心構えですねっ♪』
学校へ到着すると観光バスがずらりと並んでいた。
これから出発とあって、生徒たちは、小学生の遠足の如くまとまりなくはしゃいでいる。
『じゃぁ荷物をバスに預けてってくれよー。しおりにも書いてあった通り、夜まで預けた荷物出せないから必要になるものは各自出しておくように。』
先生の一声でゾロゾロと蟻の行列のように生徒たちが動き出す。
『よーし。これでみんな預けたなぁ。じゃぁバスの席は自由だから乗り込んでくれー。』
『なんかウキウキしちゃうね♪早くお菓子食べたいなぁー♪』
「だから遠足じゃないって…あと、頼むから1人にしないでよ?女っていまいち分からないからヘタなことできないしさ。」
『分かってるよっ♪子守は任せなさいっ!!』
子守って….どっちが子供なんだよ…(笑)
バスの車窓から眺める景色が街中の群像やビルの森から、田畑が広がるどこか懐かしい田舎の風景へと移り変わっていく。
俺はこっちの方が好きだな。
ボリボリ…
サクサク…
「おいっ、さっきからボリボリサクサクとなんだよ!お前こっそり菓子食ってんなよ!」
『ボリボリサクサクってウケるー♪あと小声でも言葉遣いは気をつけなきゃね!衣瑠ちゃん♪』
「ったく…分かったよ。ゴメンね"莉結ちゃん"♪( ˊ̱˂˃ˋ̱ )
バレたら没収されちゃうから莉結ちゃんも気をつけようねぇー♪」
『はぁーい♪あとその呼び方合格ー♪』
嫌味のつもりだったのに…
辺りはすっかり森林に囲まれ、見えずともマイナスイオンたっぷり感が溢れている。
"あと30分程で到着します"というアナウンスが流れてしばらく走った頃、車内は別の話題で盛り上がっていた。
『あれ警察じゃない?なんかたくさんいるね。』
『何やってんのかな?』
『あの車のフロントガラス割れてんじゃん!』
『熊でも出たんじゃない?』『えー?!ヤダー。』
そしてバスはストップした。
ただでさえ狭い道に、フロントガラスが割れた車が道を塞いでいたのだ。