夏のサクラ
『……あっ。』
すぐ下の立体駐車場の屋上に浮かび上がる一本の桜。
綺麗に咲き揃った薄紅色の花たちが眩い光に輝き風に揺れている。
「どう?お花見しないッ??」
レイちゃんは瞳を潤わせながら、ただただ闇に浮かぶ桜を見つめている。
そして喉の奥から絞り出すように小さな声を震わせながら答えた。
『ウンッ…』
私たちはテーブルを窓際に移動し、その上に飲み物や食べ物を並べる。勿論、先生の許可を得て。
予め用意しておいた飾りをセッティングすると、ささやかな宴が幕を開けた。
「それでは、季節外れのお花見を開始したいと思いマスッ♪」
『それじゃぁ嶺さんっ、一言お願いしまーす♪』
『ぅぐッ…今日は本当に…ぁりがとぅ…私、絶対忘れませんッ…』
本当に良かった…涙ながらに笑顔をつくる。
『それじゃぁ…乾杯ッ♪』
夜桜を背景に写真を撮った。それからたくさん話をした。いっぱい笑って喋って、ここが病院なんて事忘れてしまうくらい楽しいひと時を過ごした。
そして楽しい宴も終わりを告げる。
『そろそろ時間的にライトアップもできなくなるわね…』
時計を見つめるアヤちゃんが寂しげに言った。
『最後にもう一度写真撮ろっか♪』
「『ハイっ、チーズッ♪』」
…
『ホントに…ありがと。まさかお花見できるなんて…夢みたいだったなぁ…』
「夢は叶えるモノっ、でしょ♪だから今度は沢山桜が見れるトコにさ♪」
『ウンッ♪みんなで行くッ♪』
『なんかレイちゃん元気になったんじゃない??』
『私も思った♪』
『なんかね。さっきより身体のだるさとか息苦しさが無いんだッ♪ゼンブ姉ちゃん達のおかげだよっ♪』
レイちゃんはそう言って満面の笑みでピースして見せた。