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おもいで

『ねぇ、写真見せて。』

突然思い立ったようにレイちゃんが言葉を発した。

稚華さんは自分の携帯をレイちゃんへと渡す。

レイちゃんは上に掲げた携帯を見つめ、1枚また1枚とゆっくり親指をスライドさせていく。

するとその腕がゆっくりと身体へと降りた。

レイちゃんの呼吸が少し荒くなっている。

『どうした嶺？』

『ごめん、なんか…疲れちゃった。くらくらする。』

『少し休むか？』

『ううん。写真見たい。姉ちゃん見せて。』

稚華さんは携帯を持ちレイちゃんに写真を見せていく。

『これ、あの時の。面白かったよね。』

そう言って微笑むレイちゃんはその1枚1枚を目に焼き付けるようにじっと見つめては瞼を閉じ、次の写真もまた、同じように繰り返していく。

するとレイちゃんの目尻にキラキラと輝く雫が姿を現わす。

『嶺、なんで泣くんだよ？』

そういう稚華さんの瞳からも今にも雫が零れ落ちんとしている。

『あっという間だったな…って。』

稚華さんは私に携帯を渡すと『ごめん、交代ッ。』そう言って部屋を出ていってしまった。

私は稚華さんの代わりに写真を次々にめくっていく。

全ての写真を見終わったとき、稚華さんが部屋へと戻ってきた。

『ごめんごめん！トイレこもってて消毒に時間かかってさ。』

真っ赤になったその目が稚華さんの嘘を露呈させる。

『姉ちゃんおかえり。…衣瑠ねぇありがと。』

レイちゃんはそう言うと"ふぅ"と息を吐き『時間まで少し休ませて。』と言い瞼を閉じた。

私たちは、その瞳がもう開かれないような気がしてずっとその寝顔を見つめ続けた。