姉の想い
病院へ通う事が日課となり4人で過ごす日々が"日常"となってきたある日、レイちゃんが窓の外を眺めてこんな事を言った。
『お花見したいなぁ。』
「えぇー、お花見??だってもう夏だよっ?」
『突然変なこと言うなぁ嶺は♪また来年まで待てばいいよ♪』
『来年かぁ…遠いよ。』
『早く退院して今度は4人で見に行こっ♪』
『そうだねっ♪私も連れてってね♪』
「当たり前だよっ、レイちゃんがメインなんだからっ♪」
『あはは♪そうだねっ。』
そんな会話をしながらも、レイちゃんは自分がその時まで生きているのか分からない。そう言っているようだった。
副作用を気にしてかレイちゃんは常にニット帽をかぶるようになり、髪を手でクルクルと触るクセも見なくなった。
季節は初夏から夏に移り変わり、昼間の陽射しが焼き付けるように猛威を振るい始めた頃、いつも通り病室へとやってきた私と莉結は驚愕した。
「稚華…さん?!それっ…」
私の目の前に居るのは確かに稚華さんだ。しかし明らかに違う点が1つ…
『稚華…さん…髪…どうしたの?』
そう、稚華さんの長い髪が全て消え去っていたのだ。
お坊さんにしか見えないその頭は綺麗に剃り上げられ、可愛らしい制服に身を包んだその身体には明らかに不自然であった。
『ヤバイでしょ?ふふ♪先生にどうしても嶺の部屋に入りたいって言ったら"その髪じゃ衛生的に…"とか言うからさっ、剃ってやったのだ!』
そう言って自分の頭を撫でる姿は…ごめん!笑える…
そしてすぐに看護師がやってきて稚華さんを丁寧に"消毒"すると、『お邪魔しまーす♪』と言ってレイちゃんの部屋へと入っていく。