一夜をあけて
すると莉結の目から一粒の雫が滴り落ちると同時に白く透き通った両の手が私の腕をつたって背中へと伸び、ふわりと漂った甘い香りと共に伸びた腕がぎゅっと私を締め付けた。
それに答えるように私も莉結の身体を包み込みそっとその身体を抱きしめた。
身体全体の筋肉が、紡いだシルクを解くように緩んでいく。この瞬間の為に私は産まれてきたのだと錯覚してしまうほどに温かで優しい空間に私は浮いている。
森林を抜け眼下に広がる山々を見たような、鶏の卵が繊細で幾重にも重なった藁のベッドに産み落とされたような…そんな感覚が全身に走ったとき莉結の身体が私からそっと離れた。
『ありがと…』
私は今にも泣き崩れそうな小さな声を再び引き寄せると強くその身体を抱きしめ続けた。
『衣瑠っ、おはよ。』
キラキラと輝く朝陽が私の顔を照らしている。
その眩しさの中、声の方向に目をやると制服姿の莉結が鏡の前で髪を梳かしている。
「学校…行くの?」
ベッドから起き上がり莉結の背中に問いかけた。
『当たり前でしょっ。昨日の話忘れたのっ??』
昨日…って!!あぁ、普段通りにするんだった。
…昨日かぁ…ふふ♪
『なぁにー??ニヤニヤして♪衣瑠も一回家帰って着替えるでしょ??早くご飯食べて出なきゃ遅刻しちゃうよ?』
もーちょっとゆっくり"余韻"というかなんというか…
まっ、いっか♪
「よしっ♪学校へ行こうッ!!」
『なにそれ?(笑)』
朝食を食べさせてもらって家を出た。空は曇ってるケド快晴なキブン♪
家に戻って支度して…"普段通り"に玄関を出た。
「莉結ッ、お待たせぇー♪」
『ちょっ、えっ?』
少しだけ普段通りじゃない。何かって?…ふふ♪ヒミツ。




