扉の向こう
「ここは…」
たどり着いた先で立ち止まる。
何故なら両開きの扉の上に"無菌室"と書かれていたのだ。
『そう。無菌室だよ。』
「え…だってここって白血病の人とかが入るようなところじゃ…」
『別に白血病の患者に限って使用される訳じゃない。白血球が極度に減少する事に伴って起こり得る感染症を予防するために使用される訳で…つまり、ここは免疫が低下している人が使用するんだよ。』
免疫が低下している…ヒト…
『あの…すいません。レイちゃんはそのどういった状態なんですか…』
『申し訳ないが正確には分からない。しかし免疫が急激に低下している…それだけは確かなんだ。』
急激にって…
「ほんの少し前までレイちゃんは元気だったんですよ!!それが何でこんな急に…」
先生は俯き拳を強く握りしめている。
『それが分かっていたらこんな事には…』
そうか…そうなんだ。
「"あの実験"が原因なんですよね…」
『それは…』
やはりそうだ。私の….私のせいで…レイちゃんは…
『衣瑠…もしかして自分のせいとか…』
「そうだよッ!!私のせいだよ!!私が普通に産まれてればレイちゃんだってこんな事には…」
気がつけば床には無数の水滴が零れ落ちていた。
私なんかが泣いていいわけがないのに。
『衣瑠は悪くないよ。だから…』
「勝手な事言わないでよ!!私が悪くないわけないじゃんッ!!莉結に私の気持ちなんて分かるわけないよ!!レイちゃんは私が殺すも同然だッ!!」
"パンッ"
その時廊下に乾いた音が鳴り響いた。
「何すんだよッ!!」
『レイちゃんは死なないよッ!!』
莉結に平手を打ち込まれた頬がジンジンと痛む。
しかしそれ以上に痛むものが現れる。
ふと顔を上げると、莉結が真剣な眼差しで大粒の涙を流しつつ私を睨んでいた。




