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現実と悲しみ

出てきたのは医師達だった。

こちらに向かって頭を下げると、何も言わずに立ち去っていく。

私達は急いで部屋へ戻った。

「稚華さん、何だっ……て。」

そこには机に大きな水溜まりを作り伏せたまま啜り泣く稚華さんの姿があった。

え…どうしたんだよ…なんで…泣いてんの。

全身に得体の知れない寒気が走る。

私は心の何処かで"なんともないってさ♪良かったぁーっ♪"なんて笑顔で安堵する稚華さんを思い浮かべていた。

稚華さんにどんな話をされたのか聞くのが怖い。

私達はその場で立ち止まり、その光景を眺めていることしかできなかった。

強く握られた拳が何度も机を押した。

窓から差し込む夕陽が水溜まりに反射してキラキラと輝き、小刻みに震えている。

そして空は次第に茜色から浅葱色へと変化していく。

太陽がその姿を隠し、部屋が柔らかな瑠璃色に包まれようとしていたとき、濡れた髪が机からゆっくりと引き離された。

「稚華…さん。」

その声も彼女には届いていないようだった。

赤く腫れた目は天井の角を…いやそれよりも遥か遠くを見つめる。

するとぬいぐるみのように脱力したその身体が床へと崩れ落ちた。

「『稚華さんッ！！』」

私達は駆け寄りその身体を持ち上げた。

『とりあえず先生呼ばなきゃ！！』

私は急いで近くの看護師に声を掛ける。

看護師の指示のもと、ひとまず稚華さんを空きベッドに寝かせた。

「稚華さん…大丈夫かな…そんなにレイちゃん…容態悪いのかな…」

『うん…』

莉結はそれ以上何も言わなかった。私もレイちゃんがどんな状態なのか不安で堪らない。

きっと稚華さんはもっともっと不安なんだろう。

私達は静かに稚華さんの目覚めを待った。