妹のヒミツ
レイちゃん…??
そこに見えたのは確かにレイちゃんだった。
「母さんちょっとまってて。」
声を掛けようと近づくと…
あれ?なんかいつもと違う。
そう思った時、レイちゃんがこちらに気づいた。
『おっ、衣瑠ねぇ♪何してんの??』
…なんだ。いつもと変わらないや。
たぶんレイちゃんも"元に戻るかどうか"を尋ねられたんだと思う。
「たぶん…レイちゃんと同じ理由じゃないかな…」
そう言うと、レイちゃんは意外にもあっけらかんとしてこう言った。
『えっ…あ、もしかして"元に戻る"ってハナシ??衣瑠ねぇはどうするの??』
「あれ?レイちゃんは悩まないの??」
『え?うん。悩む必要がないからさ♪で、衣瑠ねぇはどうするの??』
「私は…はっきり言って今の自分が好き。本当の自分でしょ?……たとえ不完全な身体でも…ね。」
『フカンゼン??あぁ…"あの事"か。』
「え?レイちゃんも知ってるの??」
『お母さんに聞いたから…』
「そっか…そういえばお母さんは??まだお会いした事無かったよね??」
『居ないよ。』
「え?…1人で来たの??けど…こんな大事な話は…」
『死んじゃったんだもん。今はお姉ちゃんと2人だけ。』
「そうなんだ…ごめんね。じゃぁ誰と来てるの??」
『誰も居ないよ。親戚は誰も居ないし…"父親"は…私が小さい時に金持ってどっか行っちゃったんだって。』
レイちゃんの家庭は思ったよりもフクザツなんだ…あえてそこには触れずに続けて尋ねる。
「……稚華さんは?」
『お姉ちゃんには心配かけたくないからさ♪ただの定期検診って言ってあるの。だからこの"元に戻れるかも"って話はお姉ちゃんにもナイショにしてね♪』
「だけど…」
『ゼッタイだよ…』
その真剣な眼差しに私は頷く他なかった。
この時の判断が未来の私を悩ませるとも知らずに。




