バス
私たちはバスに乗りシャトルバスの臨時駐車場となっている公園の最寄りのバス停へと向かった。
バスの車窓からはチラホラと祭の法被姿の人たちが楽しそうに話をして歩いているのが見えた。
バス停を降り公園の外周を木々の木漏れ日の中を歩いていく。
シャトルバスに乗り込むと車内は既に満席に近く、2人ずつ別々の場所へ座った。
車内では、"去年はどこの町が最後まで残っていた"とか、"アレは絶対食べるんだぁ"とか祭の話題が飛び交っている。
『そういえば私たちって祭出た事なかったよね。』
窓際に座る莉結が外を眺めて言った。
「私人混み苦手だったからなぁ…」
『そうだ♪りんご飴食べたい♪おっきいヤツ♪』
「そうだね♪私も食べてみたかったんだ。チョコバナナとかもいいよね♪」
そんな話題に盛り上がっていると、斜め後ろの稚華さんの席から『バカ!触んなっ!』と声が上がった。
後ろを振り返ると、若い男が通路を挟んで稚華さんに話しかけているのが目に入った。
『いいじゃんいいじゃん!!番号教えて!ね?』
不良な見た目のその男はしつこく稚華さんに言い寄っている。
私はその男に怒りを覚え、後ろを向き『私の友達にナンパしないでください。』と言った。
『えっ?友達??キミも可愛いじゃん!!それじゃぁさぁキミの番号教えてよ!』
めんどくさい。どうしてこういうヤツは人の気持ちも考えられないんだろうか。
しつこく言い寄る男に、痺れを切らした莉結が口を挟んだ。
『私のお婆ちゃんならショーカイしますけど?"最近の若者に説教せにゃかん"って口癖なんで長電話してくれますよ?』
それを聞いた周囲の人たちから笑いが溢れる。
やっと自分の恥に気づいたのか、その男は引きつった笑顔で下を向くと、それから話しかけてくることは無かった。




