14.告白…
「あぁぁ…生活費…」
『必要なモノだからしょーがないでしょー?いつまで落ち込んでんのよぉー…』
「今月一杯は落ち込みそう…女って大変なんだな…」
『瑠衣も、今は"衣瑠"なんだから♪前向きに行こぉー♪』
「頑張ります…それじゃぁ明日は6時半ね。起きれるかなぁ?」
『私は起きれるからいつものように起こし行きますよ。笑)それじゃっ!また明日ねっ♪』
「よろしくお願いします。」
また明日…か。
また明日も"衣瑠"なんだよなぁ…
いつもの明日が来るとは限らない…ってやつか。
こうなる前の俺に言ってやりたいわ…
いつまで続くのかな…
もしかしたら明日…戻ってたりして。
…なんて考えても虚しいだけか。
近所から夕飯の香りが漂っている。
カレーや焼き魚、スパイシーな香りもある…
母さんの手料理…いつから食べてないんだろう…
そんな事を考えながら玄関のドアを開けると見慣れない靴が無造作に脱ぎ捨てられていた。
…母さんのだ!
俺は急いで家へと入る。
そして俺の目に飛び込んできたのは…
慌てて通帳や印鑑をバッグへ詰めている母親の姿だった…
「なにやってんの…」
俺のその言葉に母の背中がビクッと反応する。
返事はない。
硬直したままの母の反応を待っていた。
病院から母さんに連絡がいっている事は担当医に聞いて知っている。
それなのにこの3日間、連絡も返さず家にも帰って来なかった理由が知りたい。
今の俺の姿を見て驚くだろう。
驚かないわけがない。
だけど…こんな時だからこそ抱きしめて安心させて欲しい。
あなたは俺のたった1人の母親なのだから。
しかし母さんは…
こちらを見ることもなく
バッグを手に取り足早に玄関へと向かい出したのだ…
なんで…?
その瞬間、全身の力が抜け、崩れ落ちてしまいそうになる。
だけど…いま母さんが出て行ってしまったら俺は…
意を決して玄関へと走る。
そして靴を履こうともせず、手に持ち玄関を出ようとしていた
母さんの腕を掴み、言った。
「行かないでよ!!」
それはまるで泣きじゃくる子供のような声がだった。と思う。
掴んだ母さんの腕は…震えていた。
『ごめんなさい…本当にごめんなさい…』
母さんの口から出た言意が理解できない。
…なにに…謝ってんだよ…
聞きたかったのはそんな言葉じゃない…
声を出して泣き崩れる母さんを見て
一気に力が抜けた。
おれは…かあさんのなんなんだろう…
どれくらい経ったんだろうか…
外はすっかり暗くなり
街灯の光が頼りなく差し込む廊下に
2つの影が浮かんでいる。
寝息のような小さな深呼吸が聞こえた。
『瑠衣…言わなくちゃ…いけないことが…あるの。』
『そういう事なの…本当に…ごめんなさい…』
その内容はあまりにも身勝手で利己的でエゴに溢れていた。…そして俺の存在をも否定していた。
俺は裸足のまま、玄関ドアを弾丸の如く飛び出した。