差し込む光
『彩!!ハッキリせんかっ!!!』
その言葉に口が動きを止める。
すると床を見つめていた目がすっと父親に向けられる。
『私は…私は自分の…人生は自分で選択したいです…』
『自分で選択したい…だと?今まで勝手な行動ばかりとってきたのにか?私の選択に従っていれば今頃はもっとマシな学校に通ってマシな友人にも出会っていただろ?こんな常識外れな友人をもちおって!!お前は…』
『衣瑠は違います!!衣瑠は私の…』
『もういい!予定変更だ。お前の結婚はすぐにでも執り行う。紙切れ1枚で済む。契約書なんかよりよっぽど簡単だ。さぁ帰れ!もう何も話すことはない。』
「ちょっ…待ってください!!考え直してもらえないですか?」
『二度言わせるな。』
「だってそんな…」
鋭い眼光が私を睨みつけた。
しばらくすると何事も無かったかのように、書類をまとめだす。
無駄…なの?いくら話してもこの人は…
こうなったら結婚を取りやめてもらえるまで私の家に彩ちゃんを…
そんなことを考えていた時だった。
"コンコン"と部屋のドアが鳴った。
『失礼します。』
鋭利な氷のナイフのような、淡い少女のようでもある透き通った声が室内に響いた。
『母さん…』
彩ちゃんの声が漏れる。
後ろを振り向くと、高校生の母親と言うには随分と若い、いや若く見えるスーツを着こなしたショートヘアーの女の人が立っていた。
『こんな時間に自宅でお友達とお喋り?彩も随分気楽な生活を送っているのね。』
手にした封筒の口を開き、書類を取り出しつつ彩ちゃんに冷たい視線を投げかける。
次の瞬間、人ごとに思えない言葉が"この人"の口から飛び出した。




