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花に託して
いつまでも泣き続ける私を横目にホテルの利用客が足早に通り過ぎていく。
所詮は他人。ロビーに置かれたテレビから流れるドラマのワンシーンを横目に見ただけような感じなのだろう。
特に私を気にする人はいない。
人と人との関係が軽薄な社会なのだ。
でもそれでいい。他人にどうこうされたくはないし。
そんな時、肩にふわっとした感触がした。
顔を上げると彩ちゃんが微笑んで『帰ろっか。』と呟いた。
目頭と鼻腔に熱が残るままホテルを後にした。
その帰り道。
暗い空気が無言の2人を包んでいる。
こんなんじゃ余計にダメじゃん。
せめて彩ちゃんの気持ちを楽にしてあげないと…
そんなことを考えながら歩道をとぼとぼと歩く。
と、花屋の前を通りかかった時、綺麗な花が目にとまった。
手作りの可愛らしいPOPで"水仙入荷しました"とあり、その下には、様々なスイセンの花が並んでいる。
「彩ちゃん。あれ、前に欲しいって言ってたよね。黄色が好きなんだっけ？」
『え？あぁ、覚えててくれたんだ♪うん。今も変わらないよ？』
「じゃぁあれプレゼントしたいな♪今日は…メイワクかけちゃったしさ。」
『そんな、プレゼントだなんていいよぉ。別に"そういう意味"じゃないし♪』
「そんな遠慮しないでよ。私からの気持ちだからさっ♪」
『それってどういう意味の？？』
「どういうって…喜んでもらえたらなって。」
『ふふっ♪だよねっ♪それならいいよ♪気持ちだけもらっとくから♪』
その笑みに少し寂しげな感じが隠れていたのは…たぶん、気のせいだと思う。
「えぇ〜っ…それならまぁ。…可愛くて彩ちゃんに似合うと思ったんだけどな。」
