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本日は性転ナリ。  作者: 如月アル
122/225

ハルカゼ

『あー♪ほのぼのしてて気持ちぃねぇ♪』


澄み渡る青空に両腕をぐぅーっっと伸ばして莉結が言う。


土手沿いに咲いた桜が、ひらひらと輝く花びらを送り出している。


それはまるで桜の木から巣立つ妖精のようだった。



『あの…さぁ。率直に聞くケド…』


「えっ?なに?」


莉結の頬が土手の桜のように染まっていることに気づく。


『アレって夢じゃないよね?』


アレ?…って、どれ?!


"アレ"の答えを頭の記憶から探していると、莉結に肩を"パンッ"と叩かれてしまった。


『キス…したでしょ!!』


『・・・あ…私の記憶違いだったらホントにごめんっ!…ってかよく考えたらそんな事ないよね!あははは、私なに言ってんだろぉー!!ごめん忘れてぇ♪』



「忘れ…られないよ。」


何かが吹っ切れた気がした。 


「あんなことして…本当にごめん…サイテーだよね。気持ち悪い…よね…」


大粒の涙が止まらない。

この場から消えて無くなりたい…そう思った。

…私は泣き虫だ。いつからだろう…


前は、"瑠衣"だった頃は…自分の身体から涙なんて無くなってしまったかと思っていたのに。


これが…本当のワタシなのかな。


すると背中に柔らかな感触が伝わってきた。


同時に香るいい匂い…


『そっか、なら良かった…』


「えっ…?」


思い掛けない言葉に後ろに顔を向けようとする。


"chu!!"


頬に何か柔らかなモノが当たった。


『ありがとっ♪その気持ち大事にもらっとく♪それじゃぁまた明日っ♪』


そう言うと莉結は、ひとり足早に立ち去ってしまう。


え…?


エェーーーーッ?!?!


「なにソレ?!どう言う事ーッ???ねぇー!!莉結ぅー!!!教えてよーッ!!」


『"死んでもいいわ"って事ぉーっ♪』


「余計分かんないよーッ!!!!」


桜がだんだんと散り始める頃、小さな春風が私の背中を押していた。









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