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本日は性転ナリ。  作者: 如月アル
12/225

12.夕暮れの教室で

3月…


俺の通う学校では"林間学校"なる行事がある。


高校2年生になる前に生徒の結束を高める。というのが狙いだそうだ。


こんな学年末テストの時期にやるか普通。



『えー皆さんも知っての通り、明日から林間学校です。

うちの学校は生徒の繋がりを大切にってのがモットーだからな。この機会にさらに皆さんの結束力を高めてください。衣瑠さんは転校してきてすぐこんなことになっちゃって悪いけど、いい機会だと思ってみんなと仲良くなってくださいね。』


結束力…ねぇ…



休み時間。


『ねぇ、瑠…じゃなくて衣瑠。学校終わったら明日のお菓子買いいこぉー♪』


「は?菓子なんて持ち込みダメじゃないの?」


『えぇー?!だって遠足と言ったらお菓子が付き物じゃん♪お菓子のない遠足なんて遠足じゃないよぉ!!』


「いや、遠足じゃないし…」


『え?なんか言った?』


「なんか言ったけどなんでもないや。」


『じゃぁ"マックスボリュー"で買い出しね♪』






"アレ"以来、近づきにくいのか知らないが、周りのみんなは喋りたそうな雰囲気は出すものの、誰も近寄らなくなった。


俺の所へ来るのと言ったら莉結と…


『衣瑠ちゃ〜ん♪帰ろぉ〜♪』


麗美くらいだ…




『明日たっのしみだねぇ〜♪衣瑠ちゃんと夜を共にするなんて…私…こんなに早く大人になっちゃうなんて…』


莉結…こいつ"デリート"しちゃってくれ…


『麗美ちゃんは隣のクラスだから宿泊棟別でしょっ!!しかも、なんで大人になんのっ??!どういう意味?』


『まだまだ莉結ちんはお子ちゃまだなぁ♪大人になるっていうのは…


「麗美さんその先はいいよ!!」


『あっと…ゴメンゴメン♪怒った衣瑠ちゃんも可愛いねぇ♪』


莉結の頭の上にはクエスチョンマークが散らばっている。


『ところで衣瑠ちゃんはモテモテだろうけどバカな男子にそそのかされちゃダメだぞ!!』


「男なんて興味ないです!!」


『え…?ホントっ!?!?!じゃぁ…この際だからハッキリ言うけど…良かったら私と付き合ってクダサイッ!!!』


え…?!いまなんて?


「は….はい?」


『その…だから男に興味ないんでしょ?私は本気だよ。』



ハッ!!!((((;゜Д゜)))))))


そういう事か!!


「えっとそういう意味では無くて…なんて言ったらいいかなぁ…私こう見えて男みたいなもんだから…」


『まぁそういう事だから麗美サン!!衣瑠ちゃん困ってますよー!!』


『んー…分かんないけど失恋ってコトかな?まぁ気長に待つよー♪』


軽っ!!


『なんかゴメンね!!それじゃぁ!!…おっと!何?!』


教室の出口に隣のクラスの男子が3人。

名前は分からないけど。



『噂の可愛い転校生見に来たらとんでもないモン見ちまったなぁ。ははっ!』

『まさか麗美にそんな趣味あったとはなぁ!!お前レズ?笑』


そんなこと言ったら麗美キレちまうんじゃねーのか?


あれ?



麗美は何も言い返さずただ下を向いている。

いつもあんなに強気なのにどうした?



『まじキモイな!!マジでそんな奴がいるなんてドン引きだわ。』


あ…


その時、床に一粒の雫が落ちたのが見えた。


俺はその瞬間どうしようもない気持ちに襲われた。


『そんな言い方はないんじゃない?酷すぎるよ!』


『莉結は黙ってろって!もしかしてお前もレズなの??笑』


コイツら…


俺は無意識に立ち上がり、気づくとそいつの肩を掴んでいた。


「人はなんで他の動物より優れているって言われてるかわかる?

それは自分の気持ちを自由に表現できるからだよ。

女の子が女の子を好きになっちゃいけないって誰が決めたの?

どっかの誰かが勝手に決めたことを"常識"とか言ってるだけでしょ?

キミたち…そんなんじゃ"人に生まれて損してるよ"。」


は!(((o(*゜▽゜*)o)))…

何言ってんだおれ…


『なんだよ…勝手にしろ。なんかシラケたな。帰ろうぜ。』



その時背後で、小さな小さな風の音よりももっと小さな声がした。


『ありがとう…』



そういうと麗美は目も合わさずに教室を出て行ってしまった。




『カッコいいじゃん。』


「別に。なんかあぁいう奴ら嫌いなだけだから。」



夕陽に染まる教室。


机と椅子の影だけが俺たちを包み込んでいた。


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