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本日は性転ナリ。  作者: 如月アル
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屋根のヒメユリ

『夏の野の 繁みに咲ける 姫百合の 知らえぬ恋は 苦しきものそ』


和歌か何かだろうか…生憎、私にはこの歌の意味を理解できる程"それ"に対する知識が無い。


「なにそれ?」


『ヒミツー♪ただ、これを詠んだ人の気持ちはすごい分かるの♪まぁ…気にしないでっ♪』


気にしないでって…気になるよ!!


鶴の恩返しのお爺ちゃんの気持ちすんごいわかるもん!!



「もぅ。なんだよぉ…あ、そういえば林間学校で月見てる時もなんか急に"月が美しいですわね♪"とかなんとか…」


『えっ?…ん…まぁ、ね。ってそんな言い方してないし!』


そーだっけっか?(笑)


「莉結ってさぁ、意外とそうゆうの好きなんだね♪私はそっち系苦手だからさぁ…あははは♪」


いくら医者の息子…いや、娘だからって、結局は遺伝子なんかそんな関係なくて好き嫌いとか、努力次第なんだよなぁ…


『まぁ、それ知ってるからってのもあるけどね♪』


「あー!今バカにしたでしょ!!ったく…ま、いっか♪」


『衣瑠のそーゆーとこ好きだよ♪』


「えっ….」


す…好き?!


『なにぃ?どーかした?』


「別にっ…」


恋愛的に好きって意味じゃないのに…なに焦ってんだろ…





目が慣れてきたせいか、月の光が一面を海面のように光らせていた。


そのせいで横に座る莉結の顔がはっきりと見える。


月明かりが創り出す陰影のアートは莉結の静かな微笑みさえも艶やかな芸術へ変えた。


ふと目が合う。


莉結は何も言わずに潤んだ目で私の視線を占領している。


"ふぅーっ"と私の後ろから冷えた春の風が吹いた…


その風に背中を押されるように自然と2人の距離が近づいていく。


私たちを見ているのは夜空のお月さまだけだ。


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