真相
「…選…ばれた?」
『そう。私がね…だけど…』
それからの話は私にとって衝撃的な内容だった。
父さんはその時に稚華さんのお母さんを別室に呼び、"ある提案"をしたそうだ。
そして、利己的としか思えない"その提案"は受け入れられてしまった。
その提案こそが、自分の娘の安全を確認するための"被験体"になってくれないか、というものだったのだ。
それを聞いた瞬間、今まで父さんに抱いていた尊敬の感情が音を立てて崩れ落ちた。
被験体という響きなら、まだ医療における正当な行為の上に成り立つモノように聞こえないこともないけど、
父さんがやったことは完全に人権を無視した"人体実験"だ…
そして、この私も"共犯者"だ。
私を更に罪悪感の渦へと巻き込んだのはその"被害者"だった。
父さんと話を終えた稚華さんのお母さんは、"娘さんに研究の協力をして欲しい。それなりのお礼をする"と言われ、そのことを稚華さんに相談をしたという。
話によると稚華さんは5,000人に1人の確率という"体質"の可能性が高いらしい。
だが、精密検査の結果…"不適合"。
そこで終わっていれば良かったのだ。
そうすれば誰も傷付かずに済んでいたのかもしれない。
しかし運命とは皮肉なものだった。
念の為にと調べたレイちゃんの体質が"適合"してしまったのだから。
そして…暫くの入院の後、"実験"が行われたそうだ。