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♯3プロローグ【コドクナオト】

中学生編突入!(と言っても♯5までの予定ですが…携帯は文字打ちにくいし。辛いけど頑張る!

双葉幼稚園のほぼ隣にある、藍ヶあいがおか小学校を卒業して、鳴響北めいきょうきた地区にある春日かすが中学校に入学した。


藍ヶ丘中学校の方が家から近いのだが、有名な音楽教師が居るという事で春日を選んだ。


母さんは自転車に乗ってまで行く価値がないと言っていたのだが、入学してして一ヶ月でその通りだと思った。


因みに藍ヶ丘なら徒歩15分なのだが、春日は自転車で20分だ(徒歩なら30分かかる)


初めは期待していたがあの自己中教師のせいで、全然楽しく無くなった。


井上とかいう四十代の男性教師なのだが、有名なT音大を卒業してから教員免許を取った変わり者だ。


〈俺のいう通りに弾けば間違いない〉が口癖で、普通に弾いてるだけで注意され放題でフラストレーションも溜まりたい放題だ。


挙句の果てに地毛の金髪まで注意する始末。ズボンのポケットに入っている拳サポーターを着けて殴ろうか本気で悩んだ程だ。


母さんに聞いたら、昔は有名だったらしい。事故で右手の神経を切断して、今は生活に支障がないレベルというだけで弾けはしないだろうと言っていた。


要は自由に楽器が演奏できる俺達が眩しく映るんだろう。あの濁った瞳には…確かに知識はあるが、あの姿勢を改善しなければ近いうちに廃部になるな。という結論に達して〈あんたの教え子達が可哀想だ、まともに教える気が無いなら教師を辞めな〉と言って入部初日に軽音部を辞めた。










―七瀬家‐リビング―



ゴールデンウィークも昨日で終わった。今日から学校の正義は登校の準備を全て済ませ、ソファーに座ってテレビのニュースを見ていた。


【英理朱】

「はい。いつもの」母さんがソファーの前に置いてあるガラステーブルにコーヒーの入ったカップを置いた。


【正義】

「ありがとう。母さん」


カップを取って口をつけゆっくりと飲んでいると、母さんが此方に歩いて来て長くなった俺の髪に触れてきた。


【英理朱】

「まだ少しおかしいわね…ごめんね」


と言って母さんが悲しそうな表情をしたので、コンクールの事だと直ぐに気付いた。


コーヒーカップをテーブルに置いて、髪に触れてきた手を両手で包む様に握ってから母さんの顔を見つめてゆっくりと口を開いた。


【正義】

「何度も言うけど、母さんは何も悪くない。あの時取材をされても、されなくても…ね」


そう言ってから微笑みかけると


【英理朱】

「そうね。ごめんなさい。今日帰ったら整えてあげるから、真っ直ぐ帰るのよ?」


そう言って握っていた手を抜き取り笑いかけてきた。


【正義】

「姫カットとかもうしないでよ?アレは本当に恥ずかしかったから」


と抗議するとニヤニヤしながら


【英理朱】

「もう8時よ。学校に行かなくてもいいのかなぁ?余裕あるねぇ」


言われてから壁に掛けてある時計を見ると、8時2分だった。


【正義】

「ヤバい!」


横に置いてある鞄を掴み、ソファーから立ち上がりダッシュで玄関に向かった。


靴を履いていると、後から


【英理朱】

「コーヒー半分位残ってるよ!」


【正義】

「関節キスでも楽しんでなよ!」


と言いながら靴を履き終え靴箱の上に置いた鏡を見ながら右手につけた赤いゴムで、背中の中程まである髪を一本に纏めた。


鏡をもう一度チェックして家を出た。







正義が学校に向かった数分後のリビングでは、ちゃっかり関節キスを楽しんでから


【英理朱】

「やっぱりハグとか普通にしてるのかしら?」


息子の将来がちょっぴり心配になる英理朱であった。










学校についてそのまま駐輪場に向かい、空いてる所に自転車をねじこんで鍵を閉めてから昇降口に向かって走った。


靴を履き替えて時計を見ると8時28分だったので〈まだ間に合う!〉と気合いを入れて走り出した瞬間、前から来たクラスの女子から声をかけられた。


【女子】

「七瀬君。そんなに急がなくても今日の一時限目は自習だから大丈夫だよ」


【正義】

「でもホームルームは?出席取るだろ?」


と言うとクスクスと笑ってから


【女子】

「今日の一時限目は担任の石川でしょ。用事があって今日は昼からしか来れないみたいだから、今職員室に自習のプリントを取りに行く途中なの。だから、出席は私が戻ってから取るから。安心して良いよ」


と言われてから安心して、この娘の名前を記憶の彼方から引きずり出した。


【正義】

「ありがとな。川上かわかみさん。それじゃ」


と微笑みかけてから教室に向かった。











廊下を歩きながら、先程の出来事について考えていた。


女子はたまに話しかけてくるけど、男子は話しかけてこないよな。こんな外見してるから仕方がないけど。


とか考えているうちに教室の前に立っていた。


扉を開いて中に入ると違和感を感じたので、ぐるっと見渡すと窓際に一人の男子が席に座り、他の男女は幾つかのグループに分かれてその男子を避ける様に陣取っていた。


幾つかのグループから〈何様のつもりだよアイツ〉〈お坊っちゃんは良いよな〉〈あの子調子乗ってんじゃないの〉等、あの男子の事を中傷する言葉が聞こえてきた。


やっぱりコイツ等は友達になる価値も無いなと思いつつ、自分の机に鞄を放り投げて窓際の男子の方に向かった。


前の席から椅子を引いて反対向きに座ると、女子みたいな顔をした奴だった。


1分程様子を見ていたが、何も声をかけて来ないので、埒があかないと思いつつ声をかけた。


【正義】

「どういう状況なんだ?」


と声をかけると、顔を伏せてオドオドしながら


【???】

「昨日仲の良い友達3人とゲーセンに遊びに行って、一人でトイレに行ったんだ。それで元の所に戻ってる途中に3人が僕の事話してる声が聞こえたんだ。こっちに気付いてなかったから、そのまま聞いてたら3人が僕の事を〈アイツ良い金ヅルだよな〉って言ってたからカッとなって〈お前等なんか友達じゃない!〉って叫んで家に帰ったんだ。それで今日来てみたら…」


【正義】

「こうなってた…と」


肯定してやると小さく首を縦に振った。


【正義】

「なるほどね」


と言って周囲を見渡して視線を戻した。


コイツ等が対等になるかねぇと思いつつ、大きく溜め息を吐いて


【正義】

「お前、対等な関係の友達なら欲しいか?」


と言うと顔上げてから


【???】

「………欲しい」


とハッキリした声で言った。


【正義】

「お前、名前は?」


【???】

鳴海航なるみわたる


【正義】

「わかった。とりあえず何とかするから。友達になるか、ならないかは自分の眼で見極めろ」


と言って椅子から立ち上がり


【正義】

「航、友達モドキA・B・Cはどいつだ」


と言うと航はオドオドしながら、一ヵ所に纏まった3人を指差した。


その3人を眺めつつ、中途半端な不良だなぁと思った。体格は3人共ちょっとゴツい程度…これは区別がつかないな。髪はカラフル…これにしよう。ウンウンと頷きつつ考えた。黒髪のロン毛、黒髪の青メッシュに赤みの強い茶髪。決めた!黒・青・茶と名付けよう。と決まった所で3人を睨み付けた。


【正義】

「俺もこんな髪や瞳の色してるから、昔から影でコソコソしてる奴らから化け物とか言われてた。だから、今の航の気持ちは良く解る。でも航は坊っちゃんてだけだろ。俺にもお嬢様の幼馴染みがいるが、その子は皆が俺を無視してても俺と対等な付き合いをしてくれたぜ」


そこまで大きな声で皆にゆっくりと語りかけると、一度皆の顔を見渡して再度口を開いて


【正義】

「お前等は自分が劣ってると思っている筈だ。だから航を対等に視れないんだ。自分に自信を持て!他人に流されるな!!お前等は自分っていう個性を持っているだろ!!!」


と叫ぶ様に言い放った。すると黒青茶のヤンキートリオが此方に歩いて来て、ヘラヘラしながら茶髪の奴が


【茶髪ヤンキー】

「お前、ウザイよ」


と言ってきたが無視して、女子グループの方を向いて


【正義】

「男子は脅されでもしたんだろうが、女子は何故従う?自分の眼で視て航と友達付き合いしてたんだろう?それに、航は坊っちゃんって自分の事を自慢する様な奴か?」


と語りかけると怒鳴る様に


【正義】

「違うなら今すぐ航に謝れよ!!」


言いながら近くの机を思いきり叩いた。


少し間を置いて1人の女子がビクビクしながら航の方に歩いて来て


【女子】

「ゴメンね。鳴海君」


と言うとゾロゾロと集まって来て航はあっという間にクラスメイトに囲まれてしまった。


【茶髪ヤンキー】

「ツラ貸してくれない?」


と言うと右手の親指を立てて廊下を差した。そして教室を出てから廊下を歩いて行った。


黒・青も続いて此方を睨み付けてから茶髪の後を追った。


航の方を向くと皆心配そうな顔をしていた。


【正義】

「暴力は嫌いなんだけどなぁ」


肩を竦めておどけた様に言ってからヤンキートリオの後を追った。


教室を出た所で川上さんが居る事に気付いた。


【正義】

「ずっと廊下に居たの?」


【川上】

「あんな事話してたら、入れないよ」


【正義】

「そりゃそうだ」


と苦笑いしながら


【正義】

「教師にはこの事言うなよ?事を大きくしたくない」


と言ってヤンキートリオの後を追い掛けながらズボンのポケットから拳サポーターを取り出して、両拳に装着した。


体育館裏とかベタな展開だなぁと思いつつ、表情を引き締めて3人と対峙した。


すると茶髪ヤンキーが一歩前に出てきて


【茶髪ヤンキー】

「フクロは勘弁してやるよっ!」


と言いながら顔面狙いの右ストレートを繰り出してきたので、左に軽く避けながら右手で迫ってくる腕を掴んで足元に視線を落として冷静に残った左の軸足を右足で刈り取ると同時に右腕を後ろに強く引いた。


茶髪ヤンキーは予想通りの勢いで地面に顔面を打ち付けたので、側に寄って右足で横腹に爪先をめり込ませてやった。


残った2人の方に体を向けると、2人は耳打ちして頷き合うと同時に向かって来た。


軽く腰を落として右足を後ろに一歩引いた。


左側の黒髪ロン毛が右足で左の脇腹を狙ってきて、同時に青メッシュが右側を通り過ぎたので左腕を軽く上げてから右手で左手首を掴み蹴りに併せて左肘を脛に突き出した。


交差法を極めてから黒髪ロン毛が呻き声をあげてフラフラと後ろに下がるのを確認した瞬間、残った青メッシュが後から左腕を首に絡めて締め上げ右腕で纏めた髪を思いきり引っ張ってきた。


両手で首に絡み付いた腕を掴んで、顎を引いて首の締め上げを止めようと試みるが思っていたより力が強く外せなかった。


段々と首が極っていき苦しくなってきた頃、耳にブチッという音が聴こえてきた。


髪を掴まれている事を思い出した瞬間、頭の中で何かが切れた音がした。


右腕を折り曲げて後ろに思いきり振り抜き、肘が脇腹を捉えると首を極めていた腕から力が抜けたのが解った瞬間に体が勝手に動いて、右腕で首に巻かれた腕を掴んで前に延ばし、左腕を延びた腕に巻きつけて体を前に倒し膝のバネをつかい背負い投げた。


ドスっと鈍い音を立てて仰向けに倒れて呻いていた青メッシュに歩み寄り右足で思いきり鳩尾を踏みつけた。


何か音がしたが気にならなかった。


立ち上がり残りの2人を見ると茶髪は顔を抑え、黒髪ロン毛は右足の脛を擦っていた。


【正義】

「まだやるか?」


と睨み付けながら低い声で言うと2人とも無言だったので、教室に戻っていると一時限目が終わるチャイムが鳴った。










乱れた学ランを整えて教室に戻ってくると、航と川上さんが走り寄って来た。


【川上】

「大丈夫?」


と心配そうな顔をしていたので


【正義】

「大丈夫だよ」


と言って微笑みかけてやると顔を真っ赤にしてうつ向いた。


【航】

「あの3人この学校で強いって評判なんだけど…3人はどうしたの?」


【正義】

「今頃、保険室にでも居るんじゃないか」


と言うと何人かの男子が顔を青くしていた。


【正義】

「航、次の授業…何」


【航】

「英語だけど」


と言われてサボる事が脳内で決定したので、踵を返して廊下に出てから歩き出すと背後から


【航】

「何処に行くの?」


と言ってついてきたので、歩きながら


【正義】

「…屋上」


と言って歩く速度をあげた。










ガチャと言う音がして屋上のドアが開いた。


奧まで歩き座り込みフェンスに背中を寄り掛からせて、眼を閉じると、ギィと音を発てて屋上のドアが開いた。


そのまま無視していると、足音が此方に近付いて来て直ぐ横で止まった。


【航】

「隣、いいかな?」


と言われたので瞼をあげて


【正義】

「勝手に座れば」


【航】

「ありがとう」


と言って隣に座ったのを確認してから思っていた事を言った。


【正義】

「お前って顔も声も本当に女みたいだよな」


【航】

「うん。自覚してる」


【正義】

「因みに言葉遣いもだ。僕じゃなくて俺って言えよ。それと腹から声を出せ、それなりに男らしくなるだろ」


【航】

「わかった。これから気をつける」


いきなり言葉遣いが治ったので驚いたが


【正義】

「そういえば、お前なにサボってんの?」


【航】

「七瀬君だって、サボりの癖に」


【正義】

正義まさよしだ。名前で呼べよ。俺だって航って呼んでるだろ」


【航】

「じゃあマサ君って叫んで良い?」


【正義】

「構わない。友達ならな…」


【航】

「…うん。」


と言って右手を差し出してきたので、右手でしっかりと握り返した。


手を離すと


【航】

「…あつい」


と呟いて空を見上げていた


【正義】

「そうだな…」


と言って見上げた空は雲一つ無く、何処までも青のグラデーションが続いていた。
























因みに家に帰ってリビングのソファーで寝てしまい、起きて鏡を見ると…〈なんじゃコリャ――――――――〉という正義の声が住宅街に響き渡った。


♯2,5を書くか悩みましたが、勘が鋭い人に伏線がバレない様に書けそうも無いため諦めました。では♯4でお会いしましょう。

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