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♯2プロローグ【ツナガルオト】

補足ですが、♯1は正義が産まれるまでを周囲の視点で描いています。


【英理朱】

「まー君、準備できた?幼稚園に遅れるよ?」


母さんが玄関で靴を履き終えて、リビングのソファーに座り40インチのプラズマテレビでアニメ【Justice7・地球を侵略しに来たヘルボックス星の機械生物マシンモンスターと変形してロボットになって闘う7機の乗り物と7人のパイロットである正義せいぎの使徒・ジャスティスセブンの戦いを描いた特撮ヒーローもの】を見ている僕に声をかけてきた。


【正義】

「わかった!行くよ!」


先ほど敵を倒していたシーンを思い出して、かなりハイになりながらもリモコンでテレビを消して、横に置いていた鞄を肩から斜めに掛けてソファーから立ち上がり小走りで玄関に向かった。


玄関には母さんが居て呆れた様に


【英理朱】

「毎回録画するなら帰ってレッスンが終わってから見れば良いのに」


靴を履き終えたので横を通り過ぎ玄関のドアを開け外に出てから


【正義】「母さんだってドラマは再放送見ないでしょ?そこにアニメがあるから見るんだよ!」


言ってから振り返り母さんの顔を見ると口を大きく開けて、ポカーンとした表情をしていた。


【正義】

「急がないと間に合わないよ!」


と声をかけると我に還ったのか急いで玄関のドアを閉めて施錠を確認し、僕の横を通り過ぎ門の前に移動させて置いた黒のフェアレディZに乗り込んだ。


僕は呆れながらも外に出てから門を閉めると、助手席のドアを開けて乗り込みドアを閉めシートベルトを装着すると同時に車は走り出した。




流れ行く景色を眺めていると


【英理朱】

「幼稚園は楽しい?」


と聞いてきたので


【正義】

「ピアノを弾いてるから楽しいよ」


と返して、母さんの方に顔を向けると何だか悲しそうな顔をしていた。


それからはお互い無言だった。10分程して僕の通っている双葉幼稚園に着いた。


車を門の前に停めてシートベルトを外していると


【英理朱】

「今日もいつも通りの時間に迎えに来るね」


と横から母さんが言ってきたので


【正義】

「3時だね、わかったよ」


と言うと頭を掴まれて【日課か…】と思いつつ母さんの方に向きを変えられ僕が前髪を上にあげると僕の額に唇を落としてきた。【日課】が終わりドアを開けて車から降りて振り返り


【正義】

「いってきます」


と言ってドアを閉めると、此方を向いて手をヒラヒラと振ってから走り去った


車が見えなくなったのを確認してから、幼稚園の門を潜った。


玄関で靴を中履きに履替えていると


【???】

「おはよう。正義君、今日もやっぱりお遊戯室なの?晴れてるんだから、たまには外で遊ばない?」


いつもの様に一人の女の人が声をかけてきた。またか、と内心うっとうしく感じながらも


【正義】

「おはようございます椿先生。また園長先生に何か言われたんですか?一人で外に出て何をするんですか?ピアノを弾いていた方が有意義だと思いますが?」


と畳み掛ける様に言ってから鞄を渡して、お遊戯室に向かっていると後からパタパタと足音が聞こえてきて通り過ぎ様に


【椿先生】

「正義君のバカーー」


と叫びながら廊下の奥に姿を消した。


また泣かせたなとちょっぴり後悔しつつ、お遊戯室に入った。












昼寝の時間にすみれ組にお弁当を取りに行って、お遊戯室に戻ってから食べ終わりピアノで適当に遊んでいるとガラガラガラと音を発てて扉が開いた。


反射的に開いた扉の方を向くと一人の女の子が、まだ眠いのか目元を袖口でグシグシと拭いながら、此方に歩いてきた。


何を言われるのか不安になり、奥歯をギュッと噛み締めた。


【???】

「君でしょ?いつもピアノ弾いてるの?お昼寝の時間に聞こえてくるんだけど、いつも確かめようと思うけど皆が寝た頃に聞こえてくるからつられて寝ちゃうの」


そう言って女の子の片目を瞑り口から舌をチロッと出した。


可愛い娘だなぁと思いつつ、この娘も皆と同じなのかな?と思うと悲しくなった。


それでも言わなきゃなと思いつつ、恐る恐る話しかけた。


【正義】

「僕と一緒にいると皆から遊んでもらえなくなるよ?」


と言うとその娘は怒鳴る様な声で


【???】

「どうして!?」


と返してきたので、この娘は違うかなぁと思いつつ説明した。


【正義】

「金髪だし、瞳の色も朱色で皆と違うから…怖いんだって。化け物とか言われてるんだ」


するとその娘は顔を横にブンブンと左右に振り


【???】

「こんなに綺麗なのに?」


と言って僕の顔をマジマジと見た後、瞳を輝かせて胸の前で祈る様に両手を組んだ。


後ろに下がりそうになるのを堪えてつつ


【正義】

「僕が怖くないの?」


と聞くと


【???】

「パパのお友達にもこんな髪の色した人いるよ。瞳も青い色した人いるけど優しい人達ばかりだから、全然怖くないよ」


と言ってくれた瞬間、泣きそうになった。何とか堪えていると。


【???】

「ピアノ凄い上手ね。私でもそれ位弾ける様になるかなぁ」


【正義】

「練習すれば誰でも弾ける様になるよ」


と返すと、小さくガッツポーズをしていた。


【???】

「誰に教えてもらってるの?」



と聞かれたので鍵盤を指で弾きながら


【正義】

「お母さん!」


と自慢気に声を大にしていった。


【???】

「私も教えてもらえるかな?」


と不安そうな顔を向けてきたので、笑顔を向けて


【正義】

「大丈夫だよ。お母さんが迎えに来たら、一緒に僕の家に行こう!」


【???】

「家にピアノがあるの?」


【正義】

「うん。地下室にあるよ」


するとその娘は腕を組んでウーンと唸った後


【???】

「わかった。今からママに電話してピアノの事話してくる」


そう言って歩いて行き、開かれたままの扉の前で僕の方に振り返り


【???】

「私の名前は美咲桜、桐原美咲桜きりはらみさお君のお名前は?」


【正義】

「正義、七瀬正義ななせまさよし


名前を告げると何か考えてるのか上を向いて唸っていた。すると此方を向いて


【美咲桜】

「まさよしって《せいぎ》の味方のせいぎって書くの?」


そうだよ。と言ってやると、満足したのかウンウンと頷いてから


【美咲桜】

「じゃあ、せいぎのヒーローだからヒロ君ね!これからよろしくね、ヒロ君!」


何がじゃあなのかよく解らないが、とりあえず頷いてから


【正義】

「うん。此方こそ宜しくね、美咲桜ちゃん!」





















―美咲桜と出会った春から7年が経った。



アレから美咲桜は本格的にピアノを勉強し始めた。最初は週2回だったのが3回になり、5回(平日全部)になって気がつけば七瀬家に入り浸りになっていた。


レッスンが終わって毎日俺の家で夕飯を食べてから俺の部屋に来ては、音楽談義を繰り返した。音楽漬けの毎日を送っていたせいか、美咲桜は同年代の中では上位にまできていた。


それでも俺に言わせれば、まだまだだ。【神の指先】と呼ばれ世間で騒がれている俺の演奏には程遠い。


美咲桜の家にも何度か泊まりに行ったが、これが家なのか?と尋ねたくなる位大きな洋館だった。


初めて泊まりに行ったときは家にリムジンが迎えに来て、乗り込んでから緊張して一言も喋れなかった。










思い返してみても、この小学校に入ってからいつも一緒だった気がする。6年間同じクラスに良くなれたなと思いつつ、机の横に掛かった鞄を持って人気の無くなった教室を出た。


廊下に出ると、先程まで卒業式が行われていたのが嘘の様な静けさだった。


窓から中庭の桜を眺めつつ、ゆっくりと階段に向かった。


階段を降り一階に着くと下駄箱を目指して歩きはじめた。


七瀬と書かれたプレートを抜き取り、鞄に滑り込ませた。靴を取り出して履き替えてから、上履きも鞄に仕舞ってから生徒用出口から外に出た。


正面を見ると校門に向かって伸びる道の両脇には桜が咲き誇り、伸びた枝がトンネル状になっていて幻想的な雰囲気だった。


桜に見とれていると


【美咲桜】

「遅いよ。もう私達以外は帰っちゃったよ」


と横から聞こえたので、右に顔を向けると肩が当たる位近くに美咲桜が立っていた。


【正義】

「美咲桜との6年間を振り返ってたんだよ」


と言うと頬を赤く染めて微笑んだ。綺麗になったなと思いつつ


【正義】

「帰ろうか?」


と言うとモジモジしながら左手を差し出してきたので、鞄を左手に持ち替えてから開いた右手で指を絡める様に握って歩き出した。


【美咲桜】

「この間のコンクール凄かったね。取材とかされてたからビックリしちゃった」


【正義】

「そうか?取材は桜さんと初めてあった二年前からされてたよ。それよりも美咲桜の方が凄いよ。特別賞を受賞してたし。賞貰ったの初めてだろ?だったら美咲桜が凄い頑張ったっていう証拠だよ」


そう言ってやると、顔を覗き込んできて微笑んでから


【美咲桜】

「ありがとう。凄い嬉しいな。ヒロ君も金賞おめでとう」


【正義】

「ありがとな。でも、これからも頑張れよ?先生が変わったら、慣れるまで大変だからな。これからはコンクール位しか逢う機会も無いんだから」


美咲桜は上りの電車で2駅先にある、お嬢様学校の宮園女学院に通う為学院のある宮園町の祖母の家に引越した。ピアノも英理朱先生から宮園駅前にある大きなスクールに変えた。


気がつけば校門についていて繋いでいた手が後から引かれたので振り返ると


【美咲桜】

「高校はこっちを受けるから、3年間一緒に通いたいなぁ」


と声を震わせながら言って顔を伏せたので、左手に持った鞄を地面に置いた。


空いた左手で頭を撫でてやると顔を上げたので額に手を移動して前髪を上げてから額に唇を落とした。


顔を真っ赤にして何か言いたそうだったが、無視してから


【正義】

「指切りしよう。また高校生になったら逢える様に」


と思いつつ差し出した左手の小指を出すと


【美咲桜】

「約束だよ」


と返してきて繋いでいた手を離すと、左手を差し出してきたので小指同士を絡めた。


暫くそのままでいると


【???】

「お嬢様」


と言う声が聞こえてきたので繋がった指を離して、声が聞こえた方を向くと美咲桜の運転手兼付き人である桜さんがいた。


【美咲桜】

「ヒロ君、またね」


と言って、桜さんが開いたドアからリムジンに乗り込んでドアを閉めてもらい此方からは見えなくなった。


桜さんが此方に歩いて来てから


【桜】

【正義様、お久しぶりです。これからもお嬢様を宜しくお願いします】


と言って頭を下げてきたので


【正義】

「此方こそ宜しく」


と言って俺も頭を下げた。


お互いに顔を上げると


【桜】

「それではまた」


と告げてから踵を返して、リムジンの運転席に乗り込んで直ぐに走り出した。


リムジンが見えなくなる迄見送って


【正義】

「また逢おうな…美咲桜」


と呟いた。



♯2は言わなくても解りますよね。幼稚園時5歳〜小学校卒業までを描いてます。間が例によって物凄く空いてますが、あくまでも本編は高校入学からなので正義の人格を形作るファクターと《繋がる絆》だと思って下さい。♯3は言わなくても中学校編です。ページ数が微妙なので♯4もプロローグかも…とにかく頑張って書きます。


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