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♯13 5月第4週【見えない傷痕、少女達の決意】

♯13お待たせしました。(待ってると良いなぁ)資料を間違えてグランドエンドの伏線やらを書いてしまい、半分を書き直すという事態が起きてしまった為に投稿が遅れました。(ゴメンなさい。言い訳デスね)話の方はそろそろストーリーが動き出しますよ〜。(多分…新キャラ次第……だと思う)……………………………という訳で♯13お楽しみください。

月曜から始まった中間テストはハッキリ言って最悪のデキだった。


由衣に美咲桜の話を聞いてから、暇さえあれば美咲桜の事を考える様になっていた。


その結果夜になると当然の様に美咲桜の事を考えてしまって、全然眠れない状況に陥りそのままテスト期間に突入してしまった。


テストは国・数・社・理・英・保の6教科で、1日2教科ずつ行われた。


初日は教室に着くと同時に強烈な眠気に襲われ爆睡してしまい、航に起こされた時には帰りのHRだった。(実施科目は国語と保健)


2日目もやはり朝から強烈な眠気に襲われた。1時限目に実施された理科(科学)は襲いかかってくる睡魔に何とか勝利したが、次の数学は開始から20分の激闘の末敗北…夢の世界に旅立った。例によって航に起こされた時には帰りのHRだった。(理科80点、数学40点は堅いと思う)


最終日は前2日の二の舞にならない様に、テスト終了後すぐに帰宅して無理矢理眠った。(布団に入ってから寝るまで6時間かかったが)


最終日(一昨日)の結果は完勝で社会(世界史)、英語ともに全ての解答欄が埋まった。(社会はそこそこの点数、英語95点以上は堅いと思う)


テストが終わるといつものメンバーに『打ち上げも兼ねて遊びに行かない?』と誘われた。しかし日曜に川上さん経由で由衣に連絡してもらい、例のスクールを案内してもらう約束を取り付けていた為断った。


帰宅後約束の時間(宮園駅前に4時半)に間に合う様にピアノを弾いて時間を潰し、頃合いを見計らって家を出た。


小一時間かけて宮園駅前に到着し、改札口前に居た彼女と合流して大手音楽スクール『ルーシェ』に向かった。


彼女は5時からレッスンを受ける為、案内はするが一緒には居られない。そのためルーシェに向かって歩きながら、色々な事を教えてくれた。


ルーシェは業界大手の音楽スクールの為数多く点在し、生徒の指名(それなりの実績が必要)によって講師の移動が頻繁に行われる事。あの当時のピアノ講師は一人も残って居ない事。宮園校は美咲桜が辞めた同時期から生徒数が減少し始め、今では当時の生徒が残っている可能性が低い等の事を教えてくれた。


想像もしてなかった話の内容で俺の中にある『講師が生徒に手を挙げていたかどうかの真相を知る』という目標が、ガラガラと音を発てゆっくりと崩れ落ちていった。


ルーシェに到着してレッスンを受ける彼女と別れ、気を取り直し救世主(当時の事を知る人物)を捜して手当たり次第生徒に声をかけて廻った。(女性徒達は友好的だったが、男子生徒達の反応は冷たかった)


その後彼女がレッスンを終える7時までその様子を眺めたり、生徒達に声をかけ続けたが結局『当時から現在に至るまで、講師が生徒に手を挙げていた』という事実は一件も確認できなかった。


聞き始めは、ひょっとすると誰か一人位は知ってるんじゃないか?…現在も暴力行為が行われてるんじゃないか?…その当事者が居るんじゃないか?……と思っていたが結果は惨敗。有力な情報は何一つ得られなかった。


『まだ会ってない生徒達が居る筈だ!まだ何か得られる可能性はある!また此処に来て聞けばいい!』と何度も自分に言い聞かせ、レッスンを終え手持ち無沙汰になっている彼女に〈駄目だった…今日は案内してくれてありがとう〉と告げ足早にルーシェを後にした。


慌てて後を追って来た彼女と表に出ると、彼女に迎えの車が来ていた。乗り込んだ彼女に手を振って走り去る車を見送っていると、強烈な眠気に襲われた為家路を急いだ。


家に帰り着くと真っ直ぐ自分の部屋に戻り、ベッドにダイブすると直ぐに意識が途切れた。


その翌日(昨日)から『一刻も早くスクールに行って真相を確かめないと!』という重圧から解放されたせいか、美咲桜の事を考える時間も減り普通に眠れる様になっていた。


そのせいか学園では朝一から眠ってしまい、眼を醒ますと保健室の天井が目につきベッドに寝かされている事に気づいた。(何度起こしても全然起きない為、航と恋華が運んだらしい)


手には確りと手錠がかけられており、明日香ちゃんの『歳上の男』談義を放課後まで(眼を醒ましてから3時間弱)みっちり聞かされた。(話すのに夢中になっている明日香ちゃんの隙をついて、航にSOSメールを送ったが返事は無情にも『無理』の二文字だった)


放課後解放されてから直ぐにカフェテリアに行き航を虐め、いつものメンバーとゆっくり話をした後帰宅……………………………というのが大体昨日までの出来事だ。





















【正義】

「ハァ〜…来月から慎ましく暮らさないとなぁ」


【航】

「仕方ないよ。…2教科白紙だし、数学の解答欄に『3(美)3(咲)0(桜)』って書きまくってたし……英語は100点だったけど、他が悪すぎ………困ったらお金なら貸すから…元気出しなよ?」


【恋華】

「アレは笑わせてもらったよ!…最初の6問以外全部『330』って書いてたからねぇ〜…皆大爆笑してたし」


【美咲桜】

「ヒロ君は学年で何位だったの?」


【亜沙美】

「正義君は確か……182人中181位だったよ?…順位表観たときはボクも驚いたよ。…でも英語はよく満点なんて取れたね?…ボクも英語は得意だけど90点しか取れなかったよ」


金曜日の昼休み。いつものメンバーが集まり昼食を摂った後、朝から返却されたテストの話題で盛り上がっていた。(俺以外)


俺の点数は6教科合計で302点、学年で下から2番目だった。


我が家には色々な家訓があり、そのうちの一つに『常に自分を磨くべし』というモノがある。要約すると『他人と競うなら一つでも上を目指せ!』という事だ。


それに基づいて俺の小遣いはテストの点数や通知表の成績で決定している。


テストの前に母さんは〈一年生って180人位だったわね?…それじゃあ30番以内ならお小遣いアップ!…60番以内で現状維持……それ以下なら半分にするから頑張ってね!〉と言っていた。


よって俺の小遣いは来月から現在の4万円から、半分の2万円になる予定だ。


【正義】

「携帯代引いたらカフェテリアに行けない…ハァ〜……バイトでもしようかなぁ〜」


何冊か譜面買ったらアウトじゃん。『おそらの庭』の子供達に、差し入れのお菓子も買わないと……マジでバイト探さないといけないな。


【航】

「ヤバいなら貸そうか?…バイトなんて始めたら『色々』と問題があるんじゃない?」


目の前に座る航は『色々』を強調してそう言うと、俺の隣に座る美咲桜に一瞬だけ視線を向けた。


確かに美咲桜は問題だな。…下手したら『ヒロ君がバイトするなら、私もする!』とか言い出しかねない。…………絶対にバレない様にしなければ。


【美咲桜】

「ねぇ鳴海君?…今ヒロ君バイ[バイキングを食べに行かないかって言ったんだよ!そうだよなぁ航!]……ヒロ君が行くなら私も行くっ!」


今月はまだ余裕あるし、バイキングで済むなら美咲桜の分ぐらいは喜んで奢ってやるよ。


【亜沙美】

「バイキング?…確かバイ[バイクが欲しいなぁ〜って言ったんだよ!ねぇマサ君っ!]……乗るなら貸そうか?」


話に割り込んできた亜沙美に航が懸命にフォローしたが、隣に視線を向けると美咲桜はジト目で此方を見ていた。


あの馬鹿!話を合わせろよ!…うわぁ〜…この娘めっちゃ疑ってる。……これはマズイな、さりげなく話題を変えよう。


【正義】

「俺の事はもういいだろ?……それよりも皆は何位だったんだ?…特に航と美咲桜の順位が気になる…やっぱりトップ10に入ってたのか?」


【恋華】

「アタシは493点で『亜沙美より上』の42位だったよっ!」


【亜沙美】

「クッ!…1点差のクセにぃ!…期末試験では必ずボクが勝つ!」


【航】

「俺は562点で5位だったよ。…英語の72点さえ無ければ、もう少し上だったのになぁ〜」


【美咲桜】

「私は576点で1位だったよ!……という訳でぇ〜…ダ〜イブッ![うおっ!?]…エヘへへェ〜〜」


美咲桜はそう言うと横から勢い良く抱き着いてきた。視線を向けると上目遣いで『誉めて欲しいなぁ〜』という表情をしていたので、先程の事を誤魔化す為に気合いをいれて頭を撫でてやった。


【正義】

「1位取るなんて、やっぱり美咲桜は凄いなっ![にゃふ?]…よ〜しよしよし![ふにゅ〜]……それにしても、そんなに英語難しかったか?」


【航】

「いやいやいやいや、あの配点10の長文問題5問は大学入試レベルでしょ?…英語の学年平均点39だよ?」


【恋華】

「航の言うとおりだよ!…英語で満点取ったのマー君1人だけなんだよ?…アタシなんて49点だったし」


【亜沙美】

「まぁお子ちゃまの恋華には難しかったかも知れないでちゅね〜…[亜沙美ぃ!そういうアンタは何点だったのよっ!]…ボク?…さっきも言ったと思うけど『90点しか』取れなかったんだ…ホント悔しいよぉ〜」


【恋華】

「航ぅ〜!亜沙美がアタシの事虐めるぅ〜!」


亜沙美が『90点しか』を強調して言うと、恋華は可愛い声を出して航に抱き着いた。


恋華と亜沙美は本当に良いコンビだな。観てて飽きないっていうか。


【航】

「よしよし………亜沙美ちゃん?…もう気がすんだでしょ?…期末試験でリベンジすればいいんだから、その辺で勘弁してやって」


何で時々航がカッコ良く見えるんだろうな?…不思議だ。


【美咲桜】

「ヒロ君?…鳴海君がどうかしたの?」


撫でていた手を止めた途端、そう言って顔を見上げてきた。


【正義】

「ん?…いやな、たまに思うんだが…航が男みたいにみえる時があるんだ…眼科に行った方がいいのかなぁ」


【美咲桜】

「そうかなぁ〜?…私には女同士が抱き合ってる風にしか見えないよ?」


【亜沙美】

「何言ってるの!…鳴海君は……航さんは『男らしい』女性だよ!」


【航】

「違うっ!…俺は女じゃないっ!…男らしい女だっ!………アレ?…何か間違えた様な」


【恋華】

「キャハハハハッ!…いやいやいや、合ってるっ!それ合ってるよっ!!」


【美咲桜・亜沙美】

「鳴海君って…本当はどっちなのかなぁ〜?」


【正義】

「う〜む…胸にサラシを巻いてるちょっと変わった娘じゃない?」


【航】

「ハッ!…そういう事かっ!…俺は[女×4]………もういいよ女で」


【正義】

「じゃあ明日からスカート穿いて来いよ?…母さんにカメラ借り[ゴメンなさいっ!俺はやっぱり男でしたっ!]………中途半端は嫌われるぞ?」


やれやれ……ん?そういえば何の話をしてたんだっけ?…確かバイキングに行く話だった様な。


【正義】

「航で遊ぶのも飽きたし……何か面白い話――」


ガラーン‐ガラーン‐ガラーン――――――――――――――――――


喋っている途中、昼休み終了を告げる鐘が鳴った。


【美咲桜】

「放課後また来るね!…それじゃ」


美咲桜は俺から離れるとそう言って教室を出ていった。


【亜沙美】

「正義君……ちょっといいかな?」


亜沙美は立ち上がり扉の前で振り返り、そう言って手招きした。


何の用だろう?…教室で話せない様な事なのかな?…………どうせ5・6時限目の選択はサボるつもりだし、とりあえず言ってみるか。


【正義】

「航…鞄、頼むな。カフェテリアに居ると思うから」


亜沙美に『ちょっと待って』とジェスチャーして、彼女が頷いたのを確認してから航にそう言った。


【航】

「分かってるよ…んじゃ俺達も行くね!…ほらっ…恋華行くよ?」


【恋華】

「はぁ〜い…それじゃ2人共、また後でね?」


2人は席を立ち亜沙美の傍に駆け寄って此方に一瞬だけ視線を向け、耳元に何かを囁き教室を出ていった。


何で一瞬こっちを見たんだ?それに…俺に聞こえない様に何か言ったよな?…俺に関わる事で知られたらマズイ話でもあるのかな。…とりあえず今は亜沙美だな。


2人が教室から出て行くのを確認して、席を立ち亜沙美の傍に歩み寄った。


【正義】

「選択はサボるのか?…[うん]…そうか……人に聞かれたらマズイ話?」


【亜沙美】

「大した話じゃないんだけど…まぁジャマが入らない方が良いのは確かだね」


ジャマが入らない方が良い…ねぇ。一体何の話なんだろうな。


【正義】

「分かった。…何だか知らないが、カフェテリアでゆっくり聞かせてもらうわ…行こう」


そう言って彼女が頷いたのを確認してから、カフェテリアに向けて歩き出した。





















カフェテリアに着くとウェイトレスにカウンター席を勧められた。周囲を見渡すと10人程の先客が居たので、それを断り奥の2人掛けテーブルに移動した。


席に着くと直ぐに俺はコーヒー、彼女はアイスレモンティーを注文した。


【正義】

「んで…話って何?…此処なら誰にも聞かれたりしないから、遠慮なくどうぞ」


【亜沙美】

「正義君って、学校ではピアノ弾いてる事を隠してたんだね?…結構聞いて廻ったんだけど、誰一人知らなかったし…」


何で今更そんな事を聞くんだ?…理由が全く解らないな。………彼女は一体何が言いたいんだろう。


【正義】

「あぁ…言うと生徒や教師がウザイからな。選択授業もサボれなくなりそうだし……何より言う必要性を感じない」


俺はこの容姿のせいで昔から皆に敬遠されがちだった。でもピアノを弾いてると知るや『神の指先を持つ有名人』として見られ、今まで見向きもしなかった奴等が腐るほど寄って来た。


奴等は誰一人として『俺』を見てはいなかった。此方から話しかけても相手にしなかったクセに、コンクールの時だけニコニコしながら寄って来た。俺は『アイツ凄いだろ!』とか『私あの子と友達なんだぁ〜』とか、友達に自分の事の様に自慢する奴等が大嫌いだった。


奴等が求めているのは『ピアノが上手い人』であって、そこに『俺』は存在しない。……それから学校内では弾かなくなったし、ピアノを弾いてる事を隠す様になった。『友達になれるかも知れない!』って期待して…裏切られて、傷つくのはいつも俺なんだ。…そんな連中に言った所で何になる、また傷つくだけじゃないか。……俺はこの学園で静かに過ごしたいだけなんだ。ピアノを弾かなくても『俺』を必要としてくれる数少ない友人達と………他には何も望まない。


【亜沙美】

「へぇ〜…そうなんだ?まぁ、正義君がそれで良いなら、ボクは何も言わないけど………『今は』、ね」


そう言った彼女は『納得いかない』と言いたげな顔をしていた。


『今は』、か。いつか話せって言ってるんだな。トラウマが治ったら話すさ……クラスメイト位は、な。


【正義】

「言動が一致してないぞ?ハァ〜…まぁいいや。それよりも、わざわざ選択をサボったってことは、他にも話があるんだろ?」


【亜沙美】

「うん。さっき教室で、鳴海君とアルバイトの話をしてたでしょ?」


そう言った彼女は腕を組み眼を細め、ニヤニヤしながら此方を観ていた。


やっぱりバレてたか。まぁ航のフォローだし、仕方ないよなぁ。しかしあの顔……嫌な予感しかしないな。


【正義】

「あぁ…してたよ。誤魔化してたのは悪かった、すまない。さっきは美咲桜が居たから、バレたらどうなるか……分かるだろ?」


そう言うと彼女は苦笑していた。


【亜沙美】

「分かってるよ。…美咲桜を捲き込みたくなかったんだよね?…話に交ぜてくれなかった事への、ちょっとした仕返しだよ。だから『何を要求するつもりなんだ』って顔をしなくてもいいんだよ?……ボクはただ、アルバイトを紹介しようと思っただけだからさ」


マジで?…渡りに舟じゃん!…一体どんなバイトなんだろう?


【正義】

「紹介してくれるのは有難いが…どんなバイトなんだ?…あまり手を使うのはちょっと」


【亜沙美】

「それは大丈夫っ!…なにしろ、ピアノを弾くのが仕事だから。…内容は[ちょっと待った!]……どうしたの?」


ピアノを弾くのが仕事?…プロでもコンサートとか、人前で弾かないとお金は取れない筈だ。…まだアマチュアの俺が弾いてお金になるのか?…それに、もし人前だったら………今の俺は弾けるのか?


【正義】

「一つ確認したい事があるんだけど……人前で弾くのか?…[うん…]……そうか」


【亜沙美】

「まださっきの話を聞いて、人前で弾くことに抵抗があるのは分かってる。でも……結論を出すのは、とりあえずボクの話を全て聞いてからにして欲しいな?」


そう言った彼女の表情は真剣で、此方に向けられた力強い視線に思わず頷いてしまった。


【亜沙美】

「じゃあ内容を説明するよ?―――」


話の内容は…来週からフロンティアで行われる集客企画『音のある生活』でピアノを弾くというものだった。


企画内容は催し物スペースに設置するピアノの演奏を全館に流し、お客様に癒しの空間を提供するというものらしい。


因みにコンセプトは『癒し空間で楽しくお買い物』で、期間中の集客率アップが目的だと言っていた。


時間は夕方5時から8時までの3時間。日取りと期間は此方で自由に選択可能。時給は2000円というものだった。


【亜沙美】

「―――こんな感じかな。これだったらレッスンの時間やプライベートな時間もあまり削らなくて済むし、手も傷付かない。それに……一人で頑張ってる正義君の力になりたいんだ!」


彼女はそこで言葉を切り、話してる途中に届けられていた紅茶を口を含んだ。


こんなに好条件なバイト他に無いよな。俺の事を第一に考えてくれてるし、強制もしてこない。俺の力になりたい…か。正直、今の俺が人前でまともな演奏なんて出来るか分からない…でも。


【正義】

「ありがとな。…まともに弾けるか分からないが、やってみるよ。……リハビリにもなるしな」


このバイトは多分、俺に『人前で弾くのに慣れさせる』事が目的なんだろうな。やれやれ、世話好きな奴等だ。


【亜沙美】

「ホントにいいのっ?…企画して良かったぁ〜。…じゃあOKってことで」


わざわざ俺の為に企画したのか?…いや、そんな筈ないか。


【正義】

「今、確か『企画して良かった』って言ったよな?…もしかして、家業を手伝ったりしてるのか?」


【亜沙美】

「たまにだけどね。…これで漸く正義君のピアノが聴けるよ。いやぁ〜…ここまで長かった」


そう言って彼女は額を拭う様な仕草をした後、遠い目をした。


もしかして…俺の演奏を聴きたいが為に企画したのか。亜沙美…恐ろしい娘。


【正義】

「トリップしてるとこ悪いが…話をもう少し詰めなくて良いのか?」


とりあえず日取りと期間ぐらいは決めといた方がいいよな?…美咲桜にバレたくないし、ルーシェに行く時間も欲しいしな。


【亜沙美】

「ボクの企画だから、難しく考えなくてもいいよ?…選曲とか考えずに自由に弾いてくれてOKだから。……強いて言うなら、美咲桜にバレない様にするぐらいじゃない?」


【正義】

「美咲桜の対処法は考えてるが…本当に好きにして良いのか?『運命』とか弾くかもよ?」


【亜沙美】

「構わないよ。…とりあえずバイトの話はここまでにしない?…まだ話す事もあるし」


まだあるのか…今度は一体なんだろう?…ピアノ→ピアノときてるから……ピアノ?


【正義】

「次は何?…好きな娘以外なら答えるが」


【亜沙美】

「いや、今更言われてもバレバレだって。…でも今からするのは、その娘に関わる話だよ」


美咲桜に関わる話?…一体なんだろう。さっきまでピアノの話をしてたし………まさか?


【亜沙美】

「ボクは回りくどいの嫌いだから、単刀直入に言うよ?……美咲桜がピアノを辞めた理由を調べてるよね?」


ッ!?…何で亜沙美が全部知ってるんだ?…亜沙美には美咲桜が昔ピアノを弾いてた事すら言ってない。さらに辞めた理由を調べてる事は、航達にすら言ってない。宮園の二人と知り合いなのか?…いや、そうだとしても彼女達が言うとは思えない。一体どこから情報が漏れたんだ?


【亜沙美】

「『解らない』って顔してるね?…美咲桜がピアノを辞めた理由を調べてた事以外は、出会ってからの正義君を観てたら分かるに決まってるよ。…美咲桜が居る時だけ音楽関係の話を避けてたでしょ?…いや、正確にはボク以外かな。避けるって事は『辞めた』か『嫌い』のどっちかだし、『嫌い』なら徹底する必要が無いからね。…後はあの3人に音楽関係の話をすれば、経験者かどうかは直ぐに分かる。…つまり美咲桜が気分を害するから、意図的に話題を避けてたという事になるよね?…ここまでは合ってる?」


確かに当たってる…まぁ亜沙美は皆の前で、最初から音楽関係の話をしなかったしな。空気を読んだんだろうけど、本当に良く観てるよ。


【正義】

「流石だよ。ここまではパーフェクトだ。文句のつけようが無い。……でも俺が疑問に思ってるのはこの先だ。…何故お前が知っているっ?」


そう言った声は自分でも分かるぐらい低く冷たいモノだった。


【亜沙美】

「言っても怒らない?[努力はするよっ]………偶然見ちゃったんだ………ボクが知らない娘と一緒に、宮園のルーシェに入って行くとこ…」


なるほどな。俺達が帰った後でコソコソと、生徒達に俺が何をしてたか聞いた訳だ。……気に入らないなぁ。


【正義】

「もう言わなくていい………その先は嫌でも分かるから………俺はこんな話、亜沙美の口から聞きたくなかったっ…」


【亜沙美】

「結局怒ってるし[あ゛ ぁ?]ゴメンっ…ハイエナみたいな事したのは謝るよ。勝手なマネしてすみませんでしたっ…………………………………………でも、ボク達だって怒ってるんだよっ?…一人で悩んで寝不足になる位ならっ、相談ぐらいはして欲しかったっ!……ボク達は友達でしょ?…友達は助け合うモノじゃないのっ?」


確かに、黙ってて悪かったのは認めるが…偶然にしては出来すぎな気がするんだよな。前々から計画してた様な………疑うのは止めよう。黙ってた俺に『友達』と言ってくれた亜沙美に対して失礼だ。


【正義】

「それは悪かった。此方こそ謝るよ、すまなかった。……………でも俺の問題だし、皆に迷惑を[ふざけるなっ!]……え?」


亜沙美は俺の言葉を遮り両手を振り上げ、その手を勢い良くテーブルに叩きつけた。


【亜沙美】

「ボク達に迷惑をかけたくなかっただって?ふざけるなっ!…友達に迷惑かけて何が悪いんだっ!…さっき友達は助け合うモノだって言っただろっ!…悩む位なら頼ってよっ!!…頼むから一人になろうとしないでよっ!!!」


彼女は声を荒げてそう言うと、鋭い視線で此方を睨み付けた。


そうか…だから亜沙美は怒ったのか。俺が友達の意味をはき違えてたから……俺が今までやってきたのは、ただの一人よがりだったという事か。謝らないとな……大事なことに気付かせてくれた彼女に…いや、彼女達に。


両手をテーブルに突いて少し腰を浮かせ、額がテーブルにつくまで頭を下げた。


【正義】

「すまなかったっ。………………俺っ…大事なことを何も分かってなかったっ…何でも一人で出来る気になってっ…すぐ傍に居た皆がっ…周りが見えてなかったっ………大事な事に気づかせてくれてっ……本当にありがとうっ!」


額をテーブルに擦りつけたまま、この場に居ない3人の顔を思い浮かべながら感謝を述べた。


【亜沙美】

「分かってくれた?…黙って一人で頑張ってた正義君もツラかったと思うけど……何も言ってくれずに…一人悩んでる正義君を観てるしかなかったボク達も、ツラかったんだよ?……それを忘れないでね?」


頭上から聞こえた優しい声に反応してゆっくり頭を上げると、彼女は顎に指を添えて微笑んでいた。


亜沙美のこんな顔初めて見たな。本当に綺麗だ…………ハッ!思わず見とれてしまった。


【亜沙美】

「おんやぁ〜?…何だか顔が赤くなってないですかぁ〜?…もしかしてボクの魅力にやられちゃったのかにゃ〜?」


そう言った彼女の顔は先程の面影は全く無く、いじりがいのある玩具を見つけた子供の様な顔だった。


!?…見とれてたのは認めるが…クッ!不覚っ。


【亜沙美】

「美咲桜が正義君にベタ惚れした理由が漸く分かったよっ。あの照れた顔は破壊力抜群だねっ。美咲桜の拾得物を危うく抱きしめるところだった……危ない危ない」


拾得物って……アハハッ…俺って美咲桜に拾われてたんだ。そんな風に見られてたなんて知らなかった。……でも嫌な感じがしないのは何故だ?


【亜沙美】

「どうしたの?…さっきから黙っちゃって?もしかしてぇ〜…ボクのカ・ラ・ダを想像しちゃってるのかにゃ〜?」


彼女は両手で顔を覆って〈食べられちゃうぅ〜〉と言いながら身体をくねらせていた。


【正義】

「それは無いっ!…俺は一途だからなっ」


確かに亜沙美は可愛いと思うが…何か一緒に居ると疲れそうなんだよなぁ〜。


【亜沙美】

「即答っ!?…それはそれで傷つくなぁ〜」


そう言うと彼女は力無くテーブルに突っ伏した。


【正義】

「もうそのネタはいいから、話を戻さないか?…そのテンションに着いていくの疲れるから」


【亜沙美】

「ボクは至って真面目なんだけど…まぁいいや。え〜っと………何の話をしてたんだっけ?」


呆れた奴だ……さっきまではあんなにカッコいい事言ってたのに。…ちょっとだけ仕返しするかな。


【正義】

「確か亜沙美が俺に『アルバイトも引き受けてくれたことだし、良しっ!…今日はボクが奢っちゃうから遠慮なく食べてね?』って言ってたのは覚えてるんだが」


【亜沙美】

「そうだったっ…ゴメンゴメン、忘れてたよ。…じゃあ好きなモノ頼んで良いよ?」


何で気付かないんだ?…バイトの話がいきなりこうなる訳無いだろ、普通。………早く頼もう。


【ウェイトレス】

「失礼します。お客様……お呼びでしょうか?」


気づかれる前に素早くテーブルのボタンを押し、1分もしないうちにウェイトレスが注文を取りに来た。


亜沙美は気づいてないな……さて、それじゃあ最近食べてなかった幻のメニューでも頼むかな。


【正義】

「ここからここまでを一つずつと…この『激レアちーずけーき』を5つとコーヒーをブラックでお願いします」


メニュー表をウェイトレスが見えるように持ち、メニューを指差しながら大量のケーキを注文した。


【ウェイトレス】

「ご注文繰り返し[復唱しなくていいですよ…全部はテーブルに載らないと思うので、チーズケーキだけ先にお願いします。残りは次に呼んだ時、持ってきてください]……フフッ……畏まりました。それでは、直ぐにお持ちします」


ウェイトレスは『何で復唱を拒んだんだろう』と言いたげな顔をしていた。


話しながら亜沙美の方に一瞬だけ視線を向けた。すると此方の意図が分かった様で、口元をトレーで隠して小さく笑った。そして笑いを悟られない様に口元をトレーで隠したまま席を離れた。


【亜沙美】

「何で今のウェイトレス笑いを堪えてたの?…ボクはあんな人キライだなぁ〜」


【正義】

「そうか?…俺はああいう理解のある人、好きだけどな〜」


【亜沙美】

「理解のある人?…今のやりとりにそんな要素があったの?…[聞くな]……ん〜???」


彼女は怪訝な顔をして顎に指を添えると、首を傾けてウンウンと唸っていた。


面白い顔してるなぁ〜。良しっ!…恋華に見せてやろうっ!


パシャ―――


こっそりと携帯を取り出しバレない様に撮影して、その画像をメールに貼り付け恋華に送信した。因みにタイトルは『考える人(ボク編)』だ。


【ウェイトレス】

「お待たせしました。…こちら『激レアちーずけーき』になります。フフッ………それではごゆっくり」


注文を持ってきた彼女は亜沙美の方を向くと、またトレーで口元を隠し小さく笑ってから席を離れた。


【亜沙美】

「ねぇ…何で彼女はニヤニヤしてたの?[じゅるり]……ボクにはアレが理解のある人には見えないんだけど」


【正義】

「あむっ…んぅ〜!美味すぎるっ!…このレモンの酸味が絶妙[早っ!…もう2個目を食べてるっ!?]……ん?何か言ったか?」


【亜沙美】

「いや、美味しそうに食べるなぁ〜って思っただけ……って食べるの早すぎでしょ?…1個2000円もするんだからもう少し味わって[ふぅ…大変美味しゅう御座いました]…えぇーーっ!?…ボクの分は?」


【正義】

「ん?…あるわけ無いじゃん。ちーずけーきは俺一人分しか頼んでないし」


【亜沙美】

「正義君にとっては5個が一人分なんだ……あぁ〜あ!…ボクも久しぶりに食べたかったなぁ〜!…ん?……そういえば2000円ってさっき…時給?………あぁ〜〜っ!…騙したねっ!ボクは奢るなんて一言も言ってないっ」


どれどれ、10分ちょっと……意外と気づくの早かったな。


【正義】

「まあまあ、亜沙美のお陰で『クッ!…大切な妹達の誕生日に、俺はケーキすら買ってやれないのかっ!』と嘆きながらケーキ屋のショーウィンドウを食い入る様に観てた、一人の苦学生と家で兄の帰宅を待っている3人の妹達を救ったと思えば良いじゃん?」


【亜沙美】

「何?その妙にリアルな話。ボク、ちょっと感動してしまったんだけど……実話?」


そう言った彼女はスカートのポケットから、表紙に『嘘泣き用』と書かれた小さなノートを取り出して何やら書き込んでいた。


【正義】

「いや、ただの例え話。似たような話は知ってるが……それよりも、そのノートは何?」


【亜沙美】

「あぁ…コレ?ボクはこういう話を集めるのが好きなんだよ。…また何かあったら、よろしくねっ?」


満面の笑顔で宜しくって言われても…一体どういう場面で嘘泣き用のエピソードを提供すればいいんだよ。『良い話が入荷したぜ』とでも言えばいいのか?


【亜沙美】

「さてと、美咲桜の件はどうしようか?…本人には当然秘密にしとくとして、5人で動くのは決まりだよね?」


おいおいおい、何の前触れもなく話をシリアスに戻すなよ。……航と違って扱いづらい奴だな。


【正義】

「あぁ…そうしてくれると助かる。くれぐれも美咲桜には勘づかれない様にな?…アイツ結構鋭いトコあるからさ」


【亜沙美】

「分かった、皆にはボクから話しておくよ」


【正義】

「助かる。…次はバイトの話を[ちょっと待ってっ!]……どうした?」


【亜沙美】

「本当は皆で一緒に聞いた方が、正義君も説明する手間が省けて良いんだろうけど……気になるからもう一つだけっ!………美咲桜がピアノを辞めた理由が解ったら、正義君はどうするつもりなの?」


理由…か。これから皆には力を借りることになるし、捲き込んだ時点でもう後戻りはできない。逃げ道を塞ぐ為にも、自分を追い込む為にも話した方がいいだろうな。


【正義】

「まだハッキリした原因が解らないから何とも言えないが、できるなら原因を取り除く。それからアイツがもう一度ピアノを弾けるように、好きになれるように力を貸すつもりだ。……最終的にはお互い前に進んで、美咲桜と付き合おうと思ってる。……ハッキリ言って、俺が考えてる理想の関係を築く為の願望だよ。………失望したろ?アイツの想いや都合…その全てを無視して勝手なこと言ってる…やろうとしてる最低なヤツだって…………俺はそんな人間なんだよ」


100%自分の事しか考えてないしな。ただ付き合うだけなら簡単なのに、わざわざ進んだ関係を望んで皆を捲き込んだ。……こんな事が赦されていいのかな?


【亜沙美】

「好きな娘とより良い関係を築く。……それのどこがいけないことなの?…好きな娘とより楽しく、より幸せに過ごしたい……誰だって願う普通の事じゃないか。ボクは…いや、ボク達は絶対に最低だなんて思ったりしないっ。……だから、自分を卑下しないで?」


彼女はそこで言葉を切って立ち上がり、此方に手を伸ばして頭を撫でてきた。


卑下するな…か。今は無理だよ。アイツがピアノを取り戻す日まで…心からの笑顔を見せてくれる日まで俺は………自分を好きになれそうもないから。


【亜沙美】

「それに、人の気持ちなんて本人にしか解らないのは当たり前だよ。言葉で伝えない限り伝わらないし、思ってる事全てが伝わるわけじゃない。……だから正義君は、自分勝手なんじゃなくて……人を」


彼女はそこまで言うと頭を撫でていた手を戻し、顔を伏せた。


確かにそのとおりだと思う。……でも、美咲桜に『何でピアノを辞めたんだ?』なんて聞けるわけがない。もう、あんなツラそうな顔した美咲桜は見たくない。だからこそ勝手に調べて、何とかしようと思ったんだから。


【正義】

「…人を?」


最後に掠れる様な声で言った言葉が気になり、聞き返すと彼女は顔を上げた。


なんで悲しそうな顔をしてるんだ?…さっき一体ナニを言おうとしてたんだろう。


【亜沙美】

「ううん、何でもない。……正義君は優しすぎるんだよ。美咲桜の事を大切に想ってるからこそ、またピアノを弾かせてあげたいと思ったんだよね。…ボクには解らないけど、ピアノは二人にとって特別なモノなんでしょ?」


もしあの時ピアノを弾いていなければ…音色に誘われて美咲桜が遊戯室に来なければ……『友達』とは何かも知らないままだった筈だ。


【正義】

「あぁ…二人が出会えた……『絆』だから」


アイツがピアノに興味を持って…母さんにピアノを習う様になったお陰で、いつも一緒に居られる様になった……お互いが一番大事だと言い合えるほど仲良くなれた……他人に関心を持てる様になった。


【亜沙美】

「なら頑張って取り戻さないとねっ!」


美咲桜と友達になっていなければ、航の事にも関わろうとしなかった筈だ。その結果…川上さんとも仲良くなれなかっただろうし、告白なんてあり得ない。恋華にも話しかけたと思えないし…コンクールに出ていなければ亜沙美も俺に興味を持たないだろう。という事はあの事件も無く、おそらの庭に行き芽衣さんと出会う事もなかった。……つまり皆と関わり合う事も無く、今の俺は一人だった筈だ。


俺にとってピアノは2人の母親から授かった『宝物』であり、皆と出会うきっかけを作ってくれた『絆を紡ぎだす魔法の楽器』だ。


【正義】

「あぁ!…皆には迷惑をかけると思うけど、協力頼むな?」


【亜沙美】

「うんっ!…全力でサポートするよっ!………ボクが知りたい事も分かったし、この先は皆が揃ってからだね。という事は……え〜っと、確かバイト―――」





















あれからバイトの具体的な日取りを決めた。(平日の放課後はカフェテリアに行かないと美咲桜が心配するため、土日のみという事にしてもらった)日取りが決まると話す事も特に無く、手持ち無沙汰になった亜沙美が二人の昔話が聞きたいと言ってきた。


特に秘密にする様な事も無かったので、小一時間かけて事細かに話してやった。話し終えると亜沙美は何故か赤面して、〈二人って一体…〉と小声で何度も呟いていた。


その様子を観察していると6時限目の終了を告げる鐘が鳴り、5分もしないうちに皆が集まって来た。


【恋華】

「アレ?…この高級感溢れる場違いな皿って、まさか………激レアちーずけーき食べたのっ?まだあるのっ?食べられるのっ?」


恋華はテーブルに置かれていた皿を観るなり此方にズカズカと歩いてきて、胸ぐらを掴むとガクガクと揺さぶってきた。


ちょ!?…苦しっ!…航ヘルプ!……俺の瞳を観ろってっ!


【航】

「落ち着きなって…(恋華の手を掴んだ)…ってナニィ!5皿もあるっ!?…俺でさえ1日に最高2個しか買えなかったのに、それを5個もっ…クッ…なんて羨ましいっ!」


なっ!?…恋華の手を掴んどいてスルーかよっ!……誰か助けてっ!


【美咲桜】

「アレ美味しいもんねぇ〜。…確か一日に10個だったよね?」


美咲桜が喋ってる途中に、亜沙美が俺と美咲桜の間に移動してきた。(一瞬だけ此方を向いて口元をつり上げていた)


コイツっ!…絶対にワザとじゃねーか!……ヤベ……オチそう…芽衣さんヘルプ!


【亜沙美】

「うん…美味しかったかどうかはそこの金髪の人しか分からないけどっ、ねっ?…チッ…しぶといっ」


亜沙美はそう言うと、今度は俺と芽衣さんの間に移動した。(それを合図に、他の3人は俺を取り囲む様に移動してきた)


コイツ等グルだっ!………もうどうでもよくなってきた〜……なんか眠いし〜…力が抜けるし〜……!


【芽衣】

「コラコラ、お前達っ!…悪ふざけがすぎるぞっ!……大丈夫か正義?……うおっ!?……ほら、正義が怖がって隠れちまったじゃねーかっ」


芽衣さんは亜沙美を押し退けると此方に歩いてきて、恋華の腕を掴んで俺から引き剥がし皆を叱った。


俺は悪魔達から逃れる様に芽衣さんの背中に隠れ、肩口から皆を睨み付けた。


【正義】

「お前等っ!…たかがケーキで大人気ないぞっ!……ちーずけーき以外は呼べば持ってくるんだから、それでも食って大人しくしてろっ!……………このっ人生の負け組どもがっ」


そう叫ぶと辺りが静まりかえり、4人は顔を伏せて肩を震わせていた。アレ?………何この空気?


【航】

「もうキレたっ!…恋華、マサ君を殺るよっ!(指を鳴らしながら)」


【恋華】

「フフフフフッ…食べ物の恨みは…恐いよ?(満面の笑み)」


【亜沙美】

「せっかくボクが奢ってやったのに、正義君は恩を仇で返すんだ、そうなんだー(棒読み)」


【美咲桜】

「ヒロ君が5個とも食べたんなら……今のヒロ君はちーずけーきの味がするよねぇ?………じゅるり(舌舐めずり&妖艶な顔)」


4人は顔を見合わせ頷き合うと、ジリジリと距離を詰めてきた。(泣く子も裸足で逃げ出すぐらい恐いッス)


【正義】

「ちょ!?…ジョークに決まってるからっ……話せば分かる…落ち着いてっ…なっ?」


一人だけヤバい事を口走ってた娘がいるんですけど………俺、もしかして食べられちゃう?


【芽衣】

「ん?…お前はあんな美味いモンを一人で食ったのか?……じゃあ自業自得じゃねーか?……強くっ『ガシッ』[ガシッって何っ!?ちょ!?]…生きろよっ!(ウインク&白い歯を輝かせて)」


芽衣さんはそう言いながら素早く俺の背後に回り込んで、羽交い締めを極めてきた。


ヤバいっ、力が強くて外せないっ!…早く逃げないと殺られるっ!………あはははは、しんだーよ。


【航】

「さてと、マサ君は4人の弱点攻めに耐えられるかなぁ〜?…恋華は俺の反対から耳ね?」


航はそう言うと耳元に顔を寄せてきた。


【恋華】

「分かってるよっ!…マー君?……昇天させてア・ゲ・ル♪」


恋華は航とは反対側に回り込み、耳元に顔を寄せて呟いた。


【航】

「亜沙美ちゃんは脇腹を攻めて?…指でソッとなぞる様にすると効果的だからっ!」


亜沙美は頷くと俺の正面に立ち、ブレザーのボタンを外してきた。


【亜沙美】

「要するに擽ればいいんだねっ!…正義君って意外と弱点多いみたいだねぇ〜?]


そう言いながらシャツを掴んで引っ張り上げ、露になった脇腹に手でソッと触れてきた。


!?…くっ…止めれっ……大体何で航が俺の弱点を知っているっ!………まさかっ!


【航】

「美咲桜ちゃんは[じゅるり]……言わなくても良さそうだね………良しっ皆のもの、かかれー!」


【正義】

「ちょっとま…『ふぅ〜っ』イッ!?『ツツーッ』ギャハハハハッ!…止めアハハ『ガブッ』ギャーーー歯が食い込『カプッ』首を噛『はむはむ』耳ハハハハハ――――」










【正義】

「ハァハァ…ハァ…危うく……迎えの船に…乗るところだった。……俺じゃなかったら逝ってたぞ?…………聞いてる?」


【航】

「美味いな〜この、ブッシュ・ド・ノエル…ビターな感じが最高っ」


【恋華】

「こっちのシフォンも美味しいっ…素朴な感じがいいねっ」


【美咲桜】

「芽衣先輩、この抹茶シュー美味しいですよ…甘さ控えめでイイ感じです。…一つ食べませんか?」


【芽衣】

「そうか…じゃあ貰うな?…ング……本当だ、苦味が効いてて美味いなコレ」


【亜沙美】

「このザッハトルテ美味しいけど不思議な味……何を使ってるんだろ?」


あの天国?は5分ほど続いて解放された時には手足に力が入らず、力無くテーブルに突っ伏していた。


ムッか〜…シカトですか。そうですか。コイツ等も悶え死にさせてやるっ!……まずは皿をこっそり指差して恋華に教えた亜沙美からだっ!


気付かれない様にこっそり立ち上がり亜沙美の後ろまで行くと、髪留めを外してからポンポンと肩を叩いた。


【正義】

「亜沙美…こっち向いてみ?」


《リリィスマイル発動》


【亜沙美】

「ん?…どうしグハァーーーーッ!…金髪のお姉さまっ!イイッ!抱いてっ!(床に倒れ込んでピクピクしていた)」


フッ…お前が百合属性なのは調査済みだ。…次は恋華だな……アイツは確か。


同じ様に恋華の背後に移動してポンポンと肩を叩いた。


【恋華】

「ん?…ダレが[恋華おねぇちゃーんっ!]…ガハッ………かっ可愛すぎるぅーーーーっ!お持ち帰りしてぇーーーーっ!!(テーブルに突っ伏してピクピクしていた)」


予想通りだ。…この前、弟が欲しいと言っていたのはやはり本当だった様だな。……さてと、航はどうするか。スマイルだけじゃ効かないし……ん!閃いたっ!


航の背後に移動すると本能的に何かを感じ取ったのか、バッと此方に振り向いた。


【航】

「恋華達が妙に静かだと思ったら……マサ君の仕業だったんだね。……しかし俺にリリィスマイルは効かないよっ![ちょっとのあいだ前を向いてみようか?]……何をしても無駄だって…どうせ俺は倒せないんだからっ!」


そう言いつつも航は前を向いた。それを確認して髪を真ん中から左右に分け、耳の上ぐらいのところを掴んで左右に尻尾を作った。


【正義】

「航?…もうこっち向いて良いぞ」


【航】

「さてと、何を見せてくれ[航様]…ツッ…ツインテールなんか[航様ぁ〜っ]…メイ…ド…の[わ・た・る?]グハァーーーーーッ!!!……金髪…ツイン…メイド……玲音さ…ん…とは(鼻血を噴き出して椅子ごと後ろに倒れた)」


玲音さんってダレ?………まぁいいや。スッキリしたっ!…残り2人にも報復したいが無理だろうな。もしカウンターで美咲桜にあの純真無垢な瞳で観られたら……俺は自分をコントロール出来なくなる。…芽衣さんは体育祭で免疫が出来ただろうし、ただ俺を押さえつけただけだしな。


【美咲桜】

「ヒロ君も抹茶シュー食べない?…美味しいよっ!」


【芽衣】

「美咲桜の言う通りだ。正義も食ってみろよ?…抹茶が効いてて美味いぜ」


椅子ごと倒れた航を観察していると2人が声をかけてきたので、美咲桜の隣にある椅子に座った。


【正義】

「そうか?……それじゃあ食べてみる―――」










あれから2時間ぐらい他愛ない話をして時間を潰した。5時半前に母さんから電話がかかってきて〈今日は明斗さんが早く帰れるから『食事にでも行かないか』って、さっき電話があったの。だから、まー君も早く帰ってきて?…久しぶりに3人で食事に行きましょう〉と言われた。


席を立ち皆に電話の内容を説明して〈という訳で俺は帰るから、皆はゆっくりしてなよ〉と言ってから出口に向かっていると、後ろから美咲桜が追いかけて来た。


隣に並ぶと〈私も用事があるから一緒に帰らない?…いつも鳴海君ばかりに任せて悪いし……それに、たまには私にも家まで送らせてほしいな?〉と言ってきたので、〈じゃあお願いするよ〉と言って2人でカフェテリアを後にした。



VIEWCHANGE―――亜沙美SIDE――



【航】

「都合良く二人とも帰ったことだし、そろそろ本題にいこうか。………亜沙美ちゃん、どうだったの?」


2人の姿が此方から確認できなくなると、対面に座る鳴海君が真剣な表情で言ってきた。


確かに都合良いよね。どちらの話をするにせよ、美咲桜が居ると話すわけにはいかないもんね。


【亜沙美】

「ボクの口から話すより、本人の声で聴けるよ?…はい、鳴海君。………再生は、そこの赤いボタンを押せばいいだけだから」


【恋華】

「何コレ?…マイクみたいだけど」


【芽衣】

「どれどれ、ICレコーダーか。…亜沙美はわざわざ、今日の話を記録する為にコレを持ってきたのか?」


【亜沙美】

「いえ…鳴海君に『マサ君は聞かれたくない事を聞かれると声に微妙な変化が現れるから、声で判断しないと本当の事を言ってるのか分からない』って、教えてもらってから常備携帯してたんです。正義君がいつ話してくれてもいい様に……鳴海君…結構長いから早く聴いた方がいいよ?」


鳴海君はICレコーダーを弄びながら、何故か苦笑していた。


【航】

「いや、場所を変えよう。……もうカフェテリアの閉店時間過ぎてるみたいだから」


鳴海君はそう言うと店内にある時計を指差した。


【恋華】

「本当だっ!…もう40分じゃん。…早く出ないとお店の人に迷惑だよね?」


【芽衣】

「恋華の言う通りだ……お前達っ、サッサと出るぞっ!」


園田先輩の言葉を合図に皆で席を立ち、会計を済ませてから店を後にした。(まさか3万オーバーしてるとはね)










【亜沙美】

「鳴海君の家のリムジンで良いよね?」


校門にたどり着くと各々に迎えの車が来ていた。


さっきの話の続きをする為に鳴海君に尋ねると、頷いてくれたので皆でリムジンに乗り込んだ。


【航】

「皆好きに寛いでくれて構わないからね?…飲み物とかもソコに入ってるから……じゃあ再生するよっ」


鳴海君は備え付けの冷蔵庫を指差してそう言うと、レコーダーの再生ボタンを押した。


『んで…話って何?…此処なら誰にも聞かれたりしない―――』

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ICレコーダー再生中

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『――頑張って取り戻さないとねっ!』


【亜沙美】

「美咲桜がらみの話はここで終わりだよ。…この先はバイトの話を詰めてから、二人の昔話を聞いてただけ」


サイドボードに置いていたレコーダーを手に取って再生を止めた。


【航】

「悩んでたのは美咲桜ちゃんのピアノ…か。大体は亜沙美ちゃんの予想通りだね。……マサ君の為になんとかしてあげたいな」


【恋華】

「そうだね。マー君の言葉を聴く限り、アンタの言ってた『マサ君は俺達を友達だと思ってない』ってのは本当みたいだし……凹むなぁ〜」


【亜沙美】

「ボクも昔の正義君を知らないから良く分からなかったけど、あんな事を言われたら信じるしかないよ」


昔は全然違ったって言ってたからなぁ〜。一体どんな感じだったんだろう?…この前の鳴海君の説明は興奮し過ぎてて要領を得なかったし。


【芽衣】

「あぁ…皆に迷惑を云々って話だろ?…昔の正義ならあんなこと絶対に言わねぇ筈だ」


園田先輩も中1から正義君のこと知ってるって言ってたし、やっぱり今とは何か根本的に違うんだろうな。


【航】

「確かこの中に……あったっ!…この写真を見れば分かると思うよ?…………マサ君のこんな顔を見たことないでしょ?」


鳴海君はそう言うと座席の肘置きを持ち上げ、中から一枚の写真を取り出した。


【亜沙美・恋華】

「………………ッ!?」


写真に写っていたのは『春日祭』と書かれた看板の前ではしゃぎあう数人の中学生だった。


ボクはこんな顔して笑う正義君を知らない。見たことない。


【芽衣】

「驚くのもムリねぇよ……オレだってこの頃は知ってたが、入学式の日に…4ヶ月振りに再会した時は別人かと思ったぐらいだからな」


【航】

「これで嫌でも信じる気になったでしょ?…俺は昔からマサ君の事を良く見てるから、変化にはスグ気づいたよ。……それから今みたいに壁を作って接する様になったんだ」


去年の年末…恋華が正義君から聞いたっていう『家族構成』の事を両親から告げられた時期だ。……やっぱり鳴海君が言ってた通り、簡単には割り切れなかったんだろうなぁ。…ボクだったら………家出したかもしれない。


【恋華】

「こんな顔を見せられたら信じるしかないじゃん。…それにあの時マー君が言ってた『家族構成』の事が原因で、今みたいになったっていう確信が持てたしね」


恋華も同じ考えみたいだね。でも……ボク達でなんとかできるのかな?


【芽衣】

「アイツは自分が変わってしまった事を全く自覚してねぇから……解決は難しいだろうな」


ボクが怒鳴っても効果無かったみたいだし、鳴海君が考えた方法でしか気付かせる事はできないのかな?……でも、アレを言えば正義君の傷を抉る事になる。深く傷つけてしまう。


【航】

「本人に自覚させるには、やっぱり核心に触れるしかないと思います。……例え傷つける事になっても…ね」


【恋華】

「アタシはっ……できるなら言わないでほしい。マー君に確認しないうちに皆に話したからっていうのもあるけど………傷ついた姿を見たくないから」


家族構成の話は恋華しか知らされてなかった。ボク達の家庭は普通だから……だから親の再婚で悩んでた恋華には話したんだろうな。………自分も色々と悩んでいた筈なのに。


確かにこんな重い話を本人以外から聞くのは反則だと思う。ボクはこの話を聞けて良かったと思ってるけど………恋華と同じ考えだよ。


【亜沙美】

「ボクも言わないでほしいっ…いくら正義君の為とはいえ、他人が踏み込んでいい範囲を超えてると思うから…」


【芽衣】

「じゃあ…これからもお前等は『友達ごっこ』がしてえのか?…多分、アイツは言わねぇと気づかねぇと思うぜ……半年も気づかねぇ位だからな」


友達ごっこ…か。確かにそうだね。ボク達は友達以下として見られてるんだから……ツラいな。


【航】

「誰だって友達が傷つく姿なんて見たいと思わないよ。俺や芽衣先輩だって思ってるさ………そんな事。でも、『言葉で伝えない限り伝わらないし、思ってる事全てが伝わるわけじゃない』んでしょ、亜沙美ちゃん?」


ッ!…そうだっ。あんな偉そうな事を言ったクセに……ボクは正義君の力になるために踏み込んだんじゃないかっ!……例え傷つける事になっても、彼を支えてやればいいだけじゃないかっ!


【亜沙美】

「ボク…覚悟が足りなかったみたいだ。あんな偉そうなこと言っといて……弱気になってた。でも、鳴海君の言葉で眼が醒めたよ。ボクはもう迷わないっ!……もし正義君に嫌われても、罵られても構わないっ!……それでも傍に居て、支えてやればいいんだよね?」


そう言うと園田先輩と鳴海君は嬉しそうな顔をして頷いてくれた。


【恋華】

「支えてやればいい…そっか……そうだよねっ。アタシも決意が足りなかったみたい。マー君が傷ついた姿ばかりチラついて……恐くて逃げてた。このままじゃ、今のマー君を見て何もしようとしない美咲桜と同じだよね………だけど、アタシは逃げないっ!」


それは鳴海君にこの話を聞いてからボクも感じてた。…美咲桜は鳴海君よりも長い時を一緒に過ごした筈なのに、この話に触れることはなかった。


【航】

「美咲桜ちゃんと同じ……確かにそうだね。彼女は間違いなく、今のマサ君の状態に気付いてる筈だ。それでも何もしようとしない。つまり……今の状態を歓迎してるんだと思う。あの頃のマサ君は人を惹き付ける魅力があったから……元に戻って、自分から離れていくのを恐れてるんじゃないかな?……『昔は私だけのヒロ君だったのに』って彼女が言ってたの、恋華も覚えてるでしょ?」


鳴海君がそう言って恋華の方を向くと彼女は頷いた。


美咲桜がそこまで正義君の事を想ってたなんて知らなかった。…あの2人って一体、どんな絆で結ばれてるんだろう。


【航】

「正直……俺は今の美咲桜ちゃんが好きになれない。マサ君は彼女の事であんなにも悩んでるのに、彼女はマサ君が元に戻るのを恐れて……見てみぬフリをしてる。多分、彼女は…元に戻ったマサ君に、他の娘が近づくのが……誰かに取られるのが恐いんだ。……自分勝手すぎるよっ」


鳴海君の言うことも分かるけど……でもボクは女だから、美咲桜の気持ちの方が痛い位に伝わってくる。


好きな人と他の娘が話してたらその娘が邪魔だと思うし、自分以外の娘と付き合ったりしたらショックで寝込むかもしれない。


……今は好きにも嫌いにもなれない…かな。


【航】

「だから…美咲桜ちゃんの件が片づくまで、マサ君の件は保留にしようと思ってるんだ。……マサ君の望んでる関係にたどり着くには、お互いの問題を解決する必要があると思う。でも、あんな状態を許容してる彼女にマサ君を任せられないっ、任せたくないっ!……だから美咲桜ちゃんの問題が片づいたら彼女を試そうと思う。…方法はまだ考えてないんだけど………皆の意見はどう?」


試す…か。美咲桜は自分の問題が解決した時、今の正義君の状態を許容しちゃうのかな?……しちゃったら鳴海君の言う通り、付き合ったりしない方が良いのかもしれない。


【恋華】

「アタシはそれでいいと思うよ。…美咲桜の事は応援してるけど、ソレとコレは別問題だしね?」


美咲桜の件を先に解決した方が良いのは確かだね。…先に正義君の件を解決したら、彼は一人で突っ走りそうな気がするしね。


【芽衣】

「それでいいんじゃねぇか?…あの二人が付き合うって決まった訳じゃねぇし、オレも諦めてねぇからな」


は?………………今、なんとおっしゃりやがりました?……諦めてない?…………ッ!?


【航・恋華・亜沙美】

「エエ絵絵ぇぇーーーーーーッ!?!?」


【芽衣】

「お前等は何を驚いてんだ?…オレは前から正義の事を気に入ってるって言ってたぞ?」


いやいやいや、気に入ってるって…話が合うとか歳のわりに落ち着いてるとしか言ってなかった筈じゃ?


【恋華】

「まさか、マー君狙いだとは思わなかったですよ。…今度じぃ〜〜っくりと、ねぇ〜〜っとりと詳しぃ〜〜く教えてくださいね?」


【航】

「恋華っ!…話を脱線させないようにっ!…じゃあ、美咲桜ちゃんの件を優先するという事で良いよね?………他に気になる事はある?」


ボクはまだ何も言ってないんだけど………まぁいっか。まだ問題は山積みだけど、知りたかった事も分かってスッキリしたし。……早く美咲桜の事を解決して、正義君があの写真の様な笑顔を取り戻せるように頑張ろうっ!



VIEWCHANGE――――――――END―



【正義】

「ハァ〜……………また巻物」


【明斗】

「いや〜美味いなっ!…やっぱり寿司は最高だっ!」


【英理朱】

「本当に美味しいわ〜…まー君も確り食べてる?……あっ大トロだっ!……ん〜美味しいっ!」


【正義】

「………………流れて来ないモノをどうやって食えと?」


帰宅後すぐに母さんと駅前に向かい、回転寿司の店『回り飯』に入った。


カウンターに座っていた父さんの横に母さんが座り、俺はその隣に座った。


しかしそれが間違いだった。寿司は父さんの方から流れて来るので、俺の所にたどり着く前に取られてしまう。俺はさっきから巻物しか食べてない。いや、食べたくても食べられないのだ。


他の席に移動すればいい?…それは無理だ。この店は安くて美味いで有名なので、今の時間帯に空席などありはしない。


【明斗】

「おっ!…ヒラス頂きっ!…ング………脂が乗ってて美味いな〜」


【英理朱】

「馬の鬣も美味しいね?…お酒が欲しくなっちゃうけど。……アレはっ!…あむ…………やっぱりエンガワよね〜」


ブッチン!―――


【正義】

「うが〜〜〜〜〜っ!こっちにも寄越せぇ〜〜〜〜〜っ!!!」



亜沙美達が帰宅する頃………多くの客で賑わう店内では、正義の周りの客達をドン引きさせる叫び声が響き渡っていた。

♯13お楽しみ頂けらしたでしょうか?…今回の話は主語を抜いていたり、色んな伏線が絡み合っているので解り難かったと思います。(ゴメンなさいっ作者の力量不足です)次回新キャラが出せるとスムーズに進行出来ていいのですが………思い通りに書くのって難しいですね。……すみません愚痴りました。次回予告…新キャラ次第とだけ言っておきます。……今回はこの辺で失礼します。


それではまた次回♯14でお会いしましょう。

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