表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の章  作者: 叢雲ルカ
第1章
6/26

ファーストステージ②

 ニカが入った次の日の昼前――――

 近くの公園にて。

「それで、先輩何やっているんですか?」

「何って、ゴミ拾いだけど」

 ルイは至極当然とポリ袋を持ち、落ちていた空き缶を拾い、ポリ袋に入れた。

 何処にでもある普通の噴水のある公園。

 昼間からイチャイチャやっているカップルがいる辺り、リアル・ワールドと変わらない。

「ゴミ拾いって、治安維持は?」

「ゴミ拾いも立派な治安維持だ。公園が汚ければ、心が汚れるだろう? こうやってキレイにしとけば、バカな事をする人間も減る。犯罪を未然に防ぐのも治安維持だ。そして、それが俺達の仕事だ。ほら、お前もやれ」

 ルイは軍手とポリ袋を渡した。

「何で、私が……」

 ニカはトングでタバコの吸い殻を拾った。

「これが終わったら、人間の取り締まりを!!」

「だから言っただろう? そんな仕事は無いって、俺達の仕事はボランティア活動が中心だ。例えば子守好きの人間の手伝いとかな」

 パラダイス・ワールドでは人間の欲望が形になる。そんな人間もいるのだ。

 そして、そんな人間達の雑用をするのも、Fランク死神の仕事であった。

「それだけですか?」

「ボランティアを悪く言うな。色々やる事あって奥が深いんだぞ」

 ルイはベンチに座ってくつろいだ。

「私には分かりません!」

「その内分かる時が来るから。それに、楽だぞ。ゴミ拾いって、たまに現金を拾ってさ~。勿論、届けないと罪になるけど、殆ど持ち主不明で、俺の物になるんだ。何もしなくっても、金、手に入るんだ。楽な事無いよ」

 この世界に金があるのは、人間の中に守銭奴がいるからだ。

「そんなもんですか!!」

「そうだよ。そんなもん」

 ルイはタバコをくわえて火を点けた。

「納得いかないです!!」

「はあ、まあ、そんなに言うなら、所長に頼もうか?」

「えっ、いいんですか!?」

「まあ、ボランティア活動が出来ないなら、仕方ないだろう。所長に頼んで、取り締まりの方に回すよ」

「ありがとうございます!」

「別に、礼はいらない。サヨナラだからな」

「何で、そんな事、会いに行きます」

「無理だ」

 ルイは言い切った。

「何でです!!」

「お前、本当に何も知らないな。Fランク死神が人間の取り締まりに回った場合、100%捨て石、つまり、囮だよ。Fランクが増えないのはその為だ。Fランクが囮になってAやBなんかの上位ランクが手柄を挙げる。それが死神の社会だ。お前みたいに何も知らない愚か者が足を運べば、消滅は確実だよ。囮を使うとはそー言う事だ」

「納得出来ません!!」

「しなくていいよ。事実なのは変わらないんだから、それでも行くなら、話をつけるぞ」

「お断りします。先輩の紹介じゃ、ろくな事が起きない」

「気が変わったか、そりゃ懸命だ。理由が分かったらさっさと、ゴミ拾え」

「分かりました。拾います。じゃあ、先輩、終わったら手合わせを――――」

「断る。面倒くさい」

 ニカが言い終わる前に、ルイが答えた。

「何でです! 私は少しでも早く上のランクに上がりたいんです!!」

「まあ、無理だろうけどな」

「やる前から決め付けないで下さい。これでも、ザン先生が褒める位の腕がるんです!!」

「ザン? あーあ、あいつな」

「上のランクの人を呼び捨てにしないで下さい」

「そうだったな。悪い悪い」

 ルイは適当に謝った。

「大体、私が何でここにいるのかだって、理解出来ないのに!!」

「はあ、お前、筆記試験を何だと思っているんだ?」

「それは只の暇つぶしよ。体ばっか動かしても、仕方ないから、休憩を兼ねて」

「お前な、いいか。お前の筆記試験の点数。3教科全部足して、20点だぞ。誰が欲しがる?」

 3教科とは簡単な国語、算数と一般常識である。

 死神にも読み書きは必要で、適正テストが行われたのだ。

 ルイはリフィルから、散々なテストを見せて貰っていた。

 リフィルと2人で呆れたのは言うまでも無い。

「実力があれば、問題無いわ」

 呆れるルイに対して、ニカは開き直る。

「大有りだ! 常識に欠けた奴を戦闘配備出来るか。だから、ここに来たんだ。お前は落ちこぼれ何だ。全く黙って、ゴミ拾え」

「嫌だ。大体、先輩は出世したくないんですか? 生活豊かになりますよ。待遇もいいし」

 ランクによって、やはり、待遇も違って来た。

 仕事の内容もそれだけハードになるからだ。

「興味ねーよ」

「その考えがダメ何です。そもそも私との手合わせすら、やる気も見せないし!!」

「無駄なエネルギーと時間を遣いたく無いんだ」

「違います。私に負けるのが嫌何です」

「何でそうなるかな」

「だって、私の方が実力上だから」

「その自信が何処から来る物なのか、一語一句丁寧に教えて欲しいもんだな。まあ、いいよ。そこまで言うなら、手合わせしてやるから」

 ルイはタバコの火を消し、ポリ袋に入れると立ち上がった。

「今でいいか?」

 ルイは準備運動を始めた。

「はい。先輩どうせやるなら、何か賭けませんか?」

「いいよ」

 ニカの提案にルイは乗った。

「んじゃあ、俺が負けたら、1週間お前は俺のパシリな」

「先輩が負けたら……?」

「万が一負ける事があれば、知り合いに頼んで、お前を上のランクに上げてやるよ」

「Eランクじゃ無いですよね」

「んなケチはしないよ。何処でもいいぞ。BでもAでもな」

「本当ですか?」

「ああ、んかし勝てたらな」

 ルイは強く言った。

「分かったわ」

 ニカは魔法陣を出し、ランスを取り出した。

 何処にでもあるノーマルなランスだが、柄の部分はピンクに塗られていた。

「先輩はどんな武器を使うんですか?」

「俺は使わないよ。先輩がハンデも無しにやったら、不公平だからな。お前の攻撃全部避けてやるから、当たったらお前の勝ちだ。時間は所長達が来るまで、つまり昼までいいか?」

 そう言い、スーツのポケットに手を入れた。

「はい。分かりました。先輩そんなに余裕で、負けても知りませんよ」

「大丈夫。絶対負けないから」

「分かりました。んじゃあ、行きます。えいやー」

 ニカは突き攻撃をした。

「ほら、来いよ」

 ルイは子供のように笑いニカを挑発した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ