ファーストステージ①
深夜――――
何処かの港の近くの倉庫にて。
「全くキースも人使いが荒い」
小言を漏らし、くわえたタバコに火を点けた。
黒い髪に黒いスーツと、闇に隠れるように黒で埋め尽くされていた。
誰かと思えばルイである。
ルイは黒い手帳を広げ、頭を掻いた。
「治安維持第3項。いかなる理由があろうと、死神は死神の役職を逸脱、放棄をしてはならぬ。職務を逸脱又は放棄した場合、死神は罰を受けなくてはならない。まさにお前達の事だな」
目の前に数10の死神が武器を持って、睨んでいる。
黒い手帳を閉じ、ルイも真っ直ぐ死神達を見る。
「お前、何故ここにいる」
「いやね。Cランクの雑魚死神がここで麻薬の密売をしている話を聞いて、駆けつけた訳」
この倉庫で、人間と薬の売買が行われ、その取引を行う前であった。
人間の欲望が形になる世界でも、薬に手を染める人間は多い。いや、だから、多いのかもしれない。勿論、この世界でも、それは罪であり、それを取り締まる側が、犯罪に手を染めては本末転倒である。ルイはその死神の取り締まりに来たのだ。
死神は別にマインドコントロールを受けた人形では無い。感情も立派に存在している。
勿論、欲望もあった。
だから、こんな事をする死神はいるし、死神の取り締まりも行われるのだ。
「こいつ、Fランクの死神だ。上の者に逆らうのか?」
死神の1人が携帯電話を使い、ルイの情報を手に入れていた。
「確かに、第5項にそんな事書いてあったな。んでも、第3項が優先される。つまり、俺は堂々と上司を斬る事が出来る訳だ」
ルイの目の前に魔法陣が現れ、ルイの身の丈程の長さはあろう日本刀が出て来た。
ルイはそれを右手に取り、左手で日本刀の柄を持ち、鞘を抜いた。
「かかって来いよ。雑魚」
キレイに光る、日本刀の刃を死神達に向け、余裕の表情を見せた。
「バカにするなFランク!!」
挑発に乗った死神の1人がルイに向かい走ってきた。
その手にはランスを持っていて、死神は突きの攻撃しようとした。
ルイはそのランスを2つに切った。
「言っただろう? 雑魚と、まずは1人」
向かってきた死神に素早く、斬りつけ、死神はバタリと倒れ、動かなくなった。
ルイは長い刀を左腕1本で、簡単に扱っている。
「こいつ」
死神達は一瞬怯んだが、それで引き下がる死神ではない。
何たってランクはルイより上だから、プライドがあるのだ。
「面倒だ。全員で来いよ。纏めて相手してやっかよ」
「後悔するなよ」
死神達は多種多様な武器を持ち、束になってやって来た。
「それはこっちのセリフだ」
ルイはタバコを捨て、足で消し、数10人の死神に大立ち回りをした。