それは1つの終わりであり始まり④
少し小さい身長とそれに合った体重の、見た目10後半位の女の子が歩いていた。
ピンクの髪に同じ色の瞳、視力が悪く分厚い眼鏡をかけ、たまにその眼鏡を上げていた。
頬の辺りにそばかすがあり、女の子はかなり気にしていた。
しかし、今はそのそばかすも吹き飛ぶ嬉しい事があったようで、足取りは軽やかだった。
「今日から私も死神だ」
怪しく微笑む。名前はニカ。文字通り死神で、それも新米の死神であった。
死神がどうやって生まれるか、今は定かで無いが、死神になる見習いは、1年間専門の勉強をして、それから、1人前になる。
ニカはその勉強を修了し、晴れて死神になる事が出来る。今日はそんな日であった。
「おはようございます!!」
「ああ、おはよう」
ニカは巨漢の教師に挨拶をした。名前はザン。
ニカはこの男を尊敬していた。
ザンもとりあえず、挨拶したが浮かない顔をしている。
「ザン先生。どうしたんですか!?」
「お前、テストはちゃんと受けたのか?」
「はい。バッチリです!!」
「その自信は何処から来るのかね」
「どうしたんですか先生?」
「お前の配属先が決まった」
「そうですか、どこになったんですか? 早く教えて下さい。あっ、先に死神ランクを教えて下さい」
ニカが促す。
ニカの心は躍っていたが、それとは裏腹にザンは気が重かった。
死神ランクとは、死神としての適正度、死神の強さを示していた。
A~Fランクとあり、Aランクの更に上にSランクがあった。
勿論下に行けば行く程、死神としての能力が低くなった。
ちなみにザンはBランクで、そこそこ強い死神であった。
「お前の死神ランクはFだ」
「えっ、F。あっ、でもEランクに近いスーザン所長やリー所長の所ですよね?」
ニカは落ち込む事はせず、更に食い付いた。
死神ランクは努力次第で上がる事が出来る。所長によってその可能性も上がるのだ。
ニカが言った死神はFランクの死神の中でのリーダー格に当る。
「バカ。お前はリフィル所長の部下だ。お前どんなテストの受け方をした!」
「どんなって、普通に、六角鉛筆を転がしてやりました」
筆記テストと実技テストがあったが、筆記テストはどうやら当てずっぽうでやったようだ。
「えっ、間違っていないですよね?」
「マジもマジだ。全く、何処で、育成を間違えたんだか――」
ザンは落ち込んでいた。
死神と見習いはマンツーマンで教える。下のランクになるのは、教師の責任でもあった。
実技も散々の結果で、ザンは落ち込んでいた中、筆記で追い討ちをかけた。
「でもでも、頑張れば上のランクも!!」
「無理だな。あそこは問題児しか揃っていない部署だ。つまり、お前はこの世界で戦力外に立たされたんだ。それだけならまだいいが、あの部署は特別行けない場所も多い。経験も不足になるのは必至だ。つまり、ランクを上げる事が不可能と言う事だ」
低いランク程、死神は行く場所に制限がかかる。
Sランクになれば、あらゆる場所に足を運ぶ事が出来た。
「でもでも」
ニカは何度も食い下がったが、ザン視線を逸らした。
「来たようだぞ」
「お待たせしました」
にこやかにリフィルが現れた。
その隣で、ルイが大きく欠伸をした。
(何、このやる気の無い)
ニカはルイから視線を逸らし、リフィルを見た。
(何て綺麗何だろう)
ニカはつい顔に手を当て、そばかすを気にした。
「美しい薔薇にだって棘があるように、あの女にも棘がある。教師として最後の忠告だ」
ザンはニカの背中を軽く押していた。
「初めまして、所長のリフィルよ」
リフィルは手を出した。
「あっ、ニカです」
ニカも手を出し握手を交わした。
「ほら、ルイも挨拶しなさい」
「ああ、ルイだ」
リフィルに言われ、何となく、適当に挨拶した。
「大変だろうけど、この人がニカちゃんのパートナーよ」
「はあ」
ニカはルイをもう1度見る。
けっしてブサイクな顔ではない。
只、やる気が無い。もっと言えば生気を感じる事が出来ないので、だらしなく見えた。
ニカは本能的に苦手と感じた。
「あのー。よろしくお願いします」
それでもニカは元気よく挨拶した。
「ああ、よろしく」
やる気無いオーラが出た。
「さっ、帰って事務所で、歓迎パーティーやりましょう」
ルイの無気力な空気が漂う前にリフィルが、話した。
「ありがとうございます」
ニカは喜び、再び気合いが入った。
「よーし、明日からガンガンダメな人間達を懲らしめて行くぞ」
「何、言っているんだお前。この部署は人間の取締りはやらねーぞ」
ニカのやる気にルイが水を差した。
「へっ?」
ニカは初めて顔が歪んだ。