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黒の章  作者: 叢雲ルカ
序章
3/26

それは1つの終わりであり始まり③

 パラダイス・ワールドにあるとある町の、とある事務所。ここが主人公の活動拠点である。

 事務用の机が5つ並べられ、近くにはソファにテレビと、くつろぎ空間も同じ所にあった。

 とても仕事する環境にはなっていない。

「こら、ルイ起きなさい! 何時まで寝てるのよ!!」

 スラッとした高い身長に、丁度いい体格。

 ストレートな金髪、透き通ったキメのある肌に、二重の目に青い瞳、高く真っ直ぐな鼻と薄い唇。絶世の美女その言葉は彼女の為にある程の女性が、ルイと呼ぶ男を一生懸命起こしていた。名前はリフィル。

 この事務所の一応所長で、1番偉いのはずだが、命令を聞かない男達に振り回されていた。

「うーん」

 ルイはソファの上でうつ伏せに、クッションを抱いて寝ていた。

「はあ……」

 ため息する姿も又、美しい。

 その美しさの価値が分かる男がこの事務所にいれば、彼女のため息も減るだろうが、生憎ここにそんな男はいない。

 目の前でのん気に寝ている男。

 リフィルの今の状況を分かっているはずなのに、机の上に足を乗せて、我、関せずとゲームをやっている男。

 そして――――

「リフィル所長、お醤油が切れたので、買いに行っていいですか?」

 隣の部屋にあるキッチンで料理に腕を振るっていた男。

 この3人であった。

 リフィルのため息は減らない。

「所長?」

 料理を中断して、リフィルの前に姿を現した。

 二メートルは有にある巨漢、その体にあった筋肉質の体型。

 髪の毛は剃り目つきが少し鋭く、右の頬に大きな傷と見た目少し怖い男。名前はロウ。

 ロウは見た目とは違い、料理と掃除が好きないい男であった。

「ええ、いいわよ」

「ありがとうございます。それでは行って参ります」

 エプロンを脱ぎ、ロウは事務所を出た。

「本当に困ったわ」

 リフィルは爪を噛んでいた。

 今に始まった事ではなく、事ある毎に起こしていたが、彼はなかなか目を覚まさない。

「仕方ない。レン。スタンガン貸して」

 ゲームをしていた、レンと名乗る男を見た。

 小さい体に少し細い体型。長くも短くもない青い髪に同じ色の瞳。

 まだまだあどけない姿に少し色白な肌と細身の体は、見るからに、インドアな少年であった。

 リフィルに名前を呼ばれると、レンはゆっくりリフィルを見た。

「……」

 無言で机の引き出しを開け、スタンガンを取り出し、机に乗せ、又、ゲームを始めた。

「ありがとう」

 リフィルは机の上のスタンガンを取り、スイッチを入れた。

「いい加減に起きなさい」

 ルイの首筋に思いっきり電気を流した。

「あいたたたっ」

 電気が体中を巡り、反射的に動き、勢いよくソファから落ちた。

「おはよう」

 リフィルはスタンガンを背中に隠し、ルイの顔に近付けて挨拶する。

「あれ? 所長、もう朝ですか?」

 のん気に聞く。

 この事務所の中では普通の容姿をした青年だった。

 少し高い身長に丁度いい体格。黒いスーツに黒い髪に黒い瞳。黒を強調する格好をしている。

 顔立ちは整っていたが、少したれ目な目はやる気無さを感じる。

 耳には右耳に4つ、左耳に3つのピアスを付け、オシャレには多少気を遣っていた。

 それがルイと呼ぶ男であった。

「朝よ。ってか、もう昼よ」

 時計の針は12時を指そうとしていた。

 この世界にも昼夜は存在する。もっと言えば四季もあった。

 それは人間が作った世界だから、人間がそれを望んだからだ。

「あっそう。もう一眠り」

「こら、寝るな」

 耳元で大声を上げた。

「五月蝿いな。夢見させろよ」

「全く、本当にルイは珍しいよね。普通死神は夢を見ないのよ。ってか、ここが夢の世界だから、見る夢は無いでしょう」

 死神に夢を見る概念は無かった。

 疲れて眠る事はあっても、夢は見ないし、ここがその世界で見る事が出来なかった。

 故にルイが特殊なのだ。

「見るんだから、仕方ないだろう。なあ、今、とってもいい所だったんだ。無茶苦茶可愛い女の子と仲良くなったんだぜ。ああ、勿体無い」

 目の前に超絶美人がいるのに、すんなりと口に出す辺り、ルイと言う男はリフィルを異性として扱っていないようだ。

 ここに、リフィルのファンがいれば、ルイは確実に殴られる、いや、殺されているだろう。

「はあ、可愛い女の子云々は聞かなかった事にして、ルイ。今日がどんな日か分かっているの!」

 リフィルは持っていたスタンガンを握力で粉々に壊した。

 ルイの発言を気にしていない素振りを見せ、かなり、気にしていた。

「知ってるよ。新人が来んでしょう」

 ルイは大きな欠伸と一緒に話した。

「分かっているならシャキッとしなさい」

「シャキッとね」

 気が進まなかった。

「ほら、迎えに行くわよ」

「行きたくねーよ。何で俺何だよ」

 ルイは子供のように、駄々をこねた。

「仕方ないでしょう。あなたのパートナー何だから」

「いらねーよ。そんなの、もっと他に理由あるんじゃ無いの?」

「無いわ。ほら行くわよ。立って、立ちなさい!」

「はいはい」

 ルイは重い腰をやっと上げた。

「もう、ネクタイ曲がっているし、スーツで寝るの止めたら?」

 リフィルがネクタイを結び直そうと、手を伸ばす。

「いいだろう? 俺のお母さんでも、ましてや彼女でも無いんだ。好きにしてくれ」

 ルイは手を払いのけ、自分で直した。

 リフィルの顔が膨れる。

 とことんリフィルを異性として扱わなかった。

「分かったわよ。もう、行くよ」

「へいへい、待ってろ」

 ルイは引き出しの中にある鏡を出し、髪を適当に直し、ネクタイを見た後、同じ引き出しから、金色の懐中時計と真っ黒い手帳を取り出し、内ポケットにしまった。

「んじゃあ、レン行ってくるね」

「……スタンガン」

 レンは壊れたスタンガンを見ていた。

「沢山あるからいいじゃない」

「……」

 レンは俯いた。言葉にはしないが、落ち込んでいるのだ。

「わっ、分かった。経費で買うから、許して」

「……」

 レンは頷いた。

「んじゃあ、行ってくるね」

 ルイとリフィルは事務所を出た。

「……行ってらっしゃい」

 レンは遅れて返事をした。

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