大罪の対価⑮
それはルイとリフィルが始めて出会い、キラがかかわった失踪事件が終わり、リフィルは罪を認めFランクの配属になった頃の話だ。
(今日から、この事務所の所属になるのね)
仕事に慣れたらすぐ長期の休みを取り、ルイを探し出し、お礼が言いたかった。
リフィルは色んな思惑を胸に秘め、扉を開けた。
「あのー。今日からここで働く事になったリフィルです」
元気よく挨拶したが、事務所は閑散としていた。玄関近くの机に一人だけいる。
「よーし、こーすれば、やったぁ、出来たぞ。100分の1スケールの戦闘機。おお、格好いい!!」
目をギラギラ輝かせて、出来上がった迷彩色の戦闘機を見ていた。
それは紛れもなくルイである。
「あのー」
色々拍子抜けしたリフィルだったが、とりあえず、ルイに声をかけた。
「ああ、新しく配属になったんだよな。ここの所長、今、訳あっていないよ」
「訳って、ちゃんと連絡いきましたよね?」
一応確認する。
「ああ、来たよ。訳と言っても恐らくパチンコやってるな。もう時期帰って来ると思うよ。財布空っぽにして、他にも3人いるが、運動会のお手伝いに行って、帰りは夕方になる」
「奉仕活動って、運動会の手伝いまでするんだ」
幅広い仕事内容で少し驚いた。
「んで、俺がお留守番って訳、新人が来たのに、事務所空っぽはあまりにも可哀想だからな。ここまでで質問は?」
「有りすぎるけど、一応無い」
「そう? だったら、適当に座ってくれ、茶と菓子出すから、コーヒーでいいな?」
ルイは舐め回すように戦闘機を見た後、立ち上がり給湯室に足を運んだ。
「ねえ」
リフィルは言われた通り近くにあったソファに座る。
目の前のテーブルには、エッチな本やパチンコの本が無造作に置かれていた。
リフィルは視線を逸らしながら雑誌を纏めて置いた。
「何だ?」
給湯室から出て来て、リフィルの前にコーヒーとケーキを置く。
「ルイだよね?」
「どっからどう見てもそうだろう。1週間ちょっとで忘れたのか?」
キラを倒した後から2人は会っていなかった。
「違うわ。そうじゃなく」
「言っただろう? 俺はFランクの死神として活動していると。ここが活動拠点だ。又、会ったな。運が良かったみたいだ」
「誓約書にサインしただけよ」
リフィルはFランクに配属される前に誓約書が渡され、内容はこんな事が書かれている。
~私は永久にFランクで奉仕活動を行います。どんな事項が起きても、再びランクを上げる事はしません~これだけである。
「その前に色んな道があっただろう。その中でたまたま出会った。運がいい事だろう。まあ、食えよ。このケーキ無茶苦茶美味いぜ」
ルイが食べると後からリフィルも食べた。
「本当だ。美味しい」
「だろう。この事務所自慢のコックだ。ロウつー野郎何だが、体はデカいし、顔は怖いけど、料理の腕は1流何だ。それが、毎日食えるんだぜ。幸せだと思わないか?」
「ええ」
リフィルは笑った。
「そうだ。笑った方がいいよ。作り笑いじゃなく、本当の笑いが見たかったんだ」
ルイは安心していた。
「ルイ、本当にありがとう。私は凄く愚かだった。あまり上手くは言えないけど、ルイに会わなければ今頃、どうなっていたか」
「別に、これも任務だからね。キースに頼まれてやっただけだ」
「キースって知り合いなの?」
リフィルに誓約書を渡したのはキースであった。
「当たり前だろう。同じSランクだ。まあ、違うのは俺が下のランクをキースが上のランクを見るって事かな。やっている所は違うが目的は同じ、死神内部の治安維持だよ。まあ、Sランクは少数精鋭部隊だから、大した事は出来ないが、やらないよりかはマシだと思ってやってる」
「そうなんだ」
「それにあの誓約書は俺が頼んで渡した物だ。サインした瞬間ここに来る事が決まったんだよ」
「そうだったんだ」
「まあ、いい加減女も欲しかったんだ。この事務所、野郎しかいないからむさくって仕方ない」
「ああ、だから……」
無造作にエロ本が置いてある事に納得した。
(後で片付けよう)
リフィルは心の中で誓った。
「ねえ、ルイ。話は変わるけど」
「ん? どうした」
ルイはケーキを食べ尽くし、物足りない顔をしていた。
「私、ルイが好きなの。付き合って、いえ、もう付き合うの決定よ」
「はっ、ちょっと待て、俺の気持ちは?」
「大丈夫よ。その内慣れるわ。私はルイの強さに惚れたの。ルイ」
「待て、たんま」
リフィルはルイに唇を合わせようとしたが、ルイは素早く逃げた。
「もう、覚悟が足りないんだから、私は強い人が好きなの」
リフィルはルイを追いかけ、事務所内での追いかけっこが始めた。
「だからって何で俺何だ」
「強いじゃない。それにルイ、私に言ったよね。求めている強さを持っているって、好きになったんだから仕方ないじゃん」
「あれは仕事で言葉のアヤだ!」
「もう、いけず」
「全く、何で、あそこで当たらないんだ。ルイ、戻ったぞ」
玄関を開け文句を言いながら入ってきた男が、ルイと追いかけっこやっていたリフィルに目をやった。男はこの事務所の所長である。
「すげぇ。美女、これが新しい死神か」
所長は鼻の下を伸ばした。
「あっ、所長丁度良かった。俺、用事を思い出して今から出ないといけないんだ。後は頼むよ」
ルイは早口で所長に言うと、窓からルイは出て行った。
「分かった。任せろ」
所長は乗り気になった。
「ちょっと、ルイ逃げないでよ。もう、照れ屋何だから」
「リフィルさん。これから、お茶でも」
「この雑誌片付けて下さい!」
リフィルはソファに座り、所長にエロ雑誌を投げた。
その口調はとても強かった。
ルイには隠していたが、相当気にしていた。
「あっ、はい!」
所長は言われた通り、片付け始めた。
リフィルはこうして、事務所に馴染んだのだ。




