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黒の章  作者: 叢雲ルカ
第2章
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大罪の対価⑬

 クリスタルが完全に無くなるまで時間がかからなかった。

 クリスタルがあった所は、クレーターのように地面に大きな黒い穴が開いていた。

 その中央にルイだけが立っている。

「けっ、クズが、粋がるからこうなるんだ。死神は死神らしくしてりゃいいんだよ」

 足下に残った小さなクリスタルの破片を粉々に踏み潰し、まだ残っている雨水の含んだ土の中に埋め、完全に消滅させた。

 ルイはタバコに火を付け空を見上げる。雨が降ったのはこの辺りだけ、後は晴れ渡っていた。

 宙に浮いていた懐中時計は、ルイの所にゆっくりと降りて来て受け取った。

 ルイはタバコを片付けると重たい足取りで、穴の外に出ようとしたが、途中で倒れた。

 キラの毒は、ルイに取っても毒である。

 消滅しなかったのは、強い能力者だから、それだけの違いで体への負担は計り知れなかった。

「うっ、又、この感覚を味わう何てな」

 胸を締め付ける思いをした後、自嘲するとルイはゆっくりと目を瞑り意識を無くした。



 クレーターの前に2人の男女がいる。キースとカナミであった。

「派手にやりおって」

 キースが呆れながら言う。

「カナミ様。これが、ルイの本来の力ですか?」

 長く付き合うキースですら、ルイの力の本当の姿を見た事無い。

 それを知っているのは、ルイに力を与えたカナミだけである。

「まさか、こんなものではない。この世界を跡形もなく消し去る力だぞ。これはその一部に過ぎない」

(ルイの力が衰えておる。いくら、破壊の力を使ってもこの規模なら、こんな弱るはず無いのじゃが、やはり、ルイ)

 カナミは考え事しながら、クレーターを見ると、リフィル、レン、ロウ、ニカがクレーターの中に入ろうとしていた。

「おい、不味いぞ。あやつらを止めねば、あそこはまだ、破壊の力が働いておる。力尽きるぞ」

 カナミは必死にキースに訴えた。

「分かりました」

 キースは一瞬にして姿を消し、次にはリフィル達の前に立っていた。

「悪いが、ここから先へは行かせません」

 キースは大剣を出し、4人の前に仁王立ちした。

「退いてよ。あそこには、ルイがいるの」

 リフィルが無理矢理向かおうとしたが、キースが大剣をリフィルの首スレスレの所に向けた。

「知っている。だから止めたのだ。これ以上進むようなら首を落とす。最も、入っても消滅は免れ無いがな」

「それがどうしたのよ。関係無いわ」

「会わない内に、生意気になったな。ルイの影響か?」

「ルイは関係無いわ! 退いてルイが中にいるのよ」

「所長、話しを聞きましょう」

 リフィルが突っ込んで行こうとした時、ロウがリフィルの両腕を抑え、それを止めた。

「……その方がいい」

 レンも頷いた。

「あの中はルイが放った破壊の雨が充満している。あれを納められるのは、カナミ様だけ」

「カナミ、誰よ」

 リフィルは地団駄を踏み、喧嘩腰に言う。

「所長、落ち着いて下さい」

 ロウの言葉にレンが大きく頷く。

「まあ、これだから、若い死神は無知でしょうがない」

「何ですって、私はこれでも40年は死神やっているわ」

「だから落ち着いて」

 キースの挑発に上手く乗せられている。

「……僕は60年ちょっと」

「レンさんも答え無くっていいから」

「ロウさんはどの位ですか?」

 ニカが興味本位で聞いた。

「私は、45年いって無い位です」

「みんなさん凄いです」

 ニカは1人感動していた。

「そんな話しをしている場合じゃないでしょう」

 ロウが突っ込む。

「あっ、そうだった」

「まだまだ若い。俺は、100年はここにいる」

「……ルイは80年弱」

 レンが呟く。

「先輩より上って事! 先輩も凄いけどこの人も凄い」

「そんな歳何てどうでもいいわ。カナミって誰よ」

「カナミ様とは死神を、創り生んだ我々の長、帝です」

「えっ」

 リフィルはそれを聞き、徐々に動きを鈍らせた。

「俺はカナミ様の命で止めた。今からこの地を基に戻す。それまで待て、分かったな」

「わっ、分かった」

 リフィルはキースの威圧感から、前に進めなくなり、少しずつ顔を暗くし、落ち込んだ。

 何も出来ず歯がゆいからだ。

 しばらくするとクレーターが光り出し、その光りが穴を包む。

 包んだ光りが晴れると、穴は修復され、もとの街の風景に戻った。

「もういいぞ」

 キースの隣にすうっと、カナミがやって来た。

「ルイ」

 リフィルが真っ先に走り出し、その後をロウとニカが追う。

「全く、相変わらず、人気者じゃのう」

 カナミが微笑み、1人残っていたレンに目を向けた。

「主は行かぬのか?」

「いい。みんな行ったから」

「なる程、主、名前は?」

「レンです」

 レンは跪き、カナミに敬意を持って接した。

「レンとな。覚えたぞ。立って頭を上げろ」

「はい」

 レンは立ち上がり、カナミを見た。

「カナミ様こんな輩の名前何ぞ覚えなくとも」

「いいでは無いか、わらわの自由だ。それにレンは恐らく、キースやルイに近い男じゃ」

「それは一体どう言う意味です?」

「レン。主は生前の記憶を思い出しかけているじゃろう。じゃからここに残った」

「分からない。だけど、帝様が言うのであるなら、そうです。頭の中に見た事の無い風景や、覚えの無い人に呼ばれるのが浮かぶ」

 いつも無口なレンが饒舌になったいた。

「やはりのう。リアル・ワールドに足を運んだ。影響じゃな」

「何故、それを……」

「ルイが気にかけておったから。もしやと思ったのじゃ。そうか、主がその大罪人か」

 死神はリアル・ワールドの行き来を禁止されている。

 禁止した理由は元々肉体を持たない死神に行き場所は無い。

 しかし、足を踏み入れられない訳ではなく、死神にも人間にも影響が出る恐れがあるから、禁止しているのだが、レンはその禁を破り、Fランクの配属となった。

「うん」

 レンは俯く。

「レンはどうしたいのじゃ」

「僕は」

「ルイのように記憶を持つが故に、辛い運命を背負う覚悟があるのなら、思い出すのも良いじゃろう。しかし、レンにその力が無ければ、全て失うぞ。これは脅しでは無い、事実じゃ」

「分からない……」

「そうか、なら、ゆっくり考える事じゃ、時間は沢山ある。焦る必要は無いからのう」

「うん」

 レンは頷き、頭を下げる。

「では、わらわ達は帰るぞ。ルイと話しがしたかったが、この様子じゃ、無理そうじゃからな。出直すとしよう」

「はい。おおせのままに」

 キースはカナミの手を握り、特技の瞬間移動を使い消え去った。

 レンはルイの方を見た。

(僕はあの人を超えたい)

 記憶を取り戻して力が手に入るだけなら、首を縦に振っていただろう。

 しかし、対価を支払ってまで、レンは今の生活を失いたく無かった。

(だけど、まだいい)

 レンはルイの所に走って向かった。

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