大罪の対価⑫
ルイはゆっくり目を開けた。
「ルイさん。良かった気が付いた」
「ここは……キラ! キラは見なかったか!」
急に起き上がると激痛が走った。
まだ、ロウの治癒術が終わっていなく、身体を貫いていた分、回復にも時間がかかった。
「先輩、まだ、無理しないで下さい」
「……見てない」
レンが淡々と答える。
「あの野郎!!」
ルイは立ち上がり、瞳孔を開き、怒鳴った。
「許せねー、ぶっ殺す。誰が雑魚だ。誰が!!」
「先輩、体が、無茶しちゃダメ」
「五月蝿い。いくらお前でも殺すぞ」
「でも、先輩が」
「ダメ、今のルイに何を言っても無駄。手を出さない方がいい」
「その方がいいです。ルイさん。完全に頭に血が上っていますから、こうなると、誰も止められません」
「それで死んでもいいんですか?」
ニカはルイの前に立つ。
「誰が死ぬって、ニカ。退け、退けぇ!!」
今までに見た事もない形相でニカを睨む。
ニカはその目に怯え、横にズレた。
「先輩」
ルイは翼を生やし飛んで行き、3人は見守る事しか出来なかった。
ルイの怒りが頂点に達した。
一部屋全てを目茶目茶に破壊した後、事態に気付いたカナミはルイを止めた。
カナミの力でルイの怒りはやっと納まった。
「ルイは意外と頭に血が上りやすい性格なのじゃな。落ち着くのじゃ」
「だって、キースが、僕の話しを聞いてくれないんだぜ」
「あやつは、いつもそうじゃぞ。そんな事を気にしていたら、これからやってはおれなくなるぞ。ルイ、少しは冷静に物をみるのじゃ、そうでなければ、見える物も見えなくなるぞ。ルイは優しいから、きっと大事な物も出来る。このまま行けば、大事な物まで失うかもしれぬ」
「うーん」
ルイは考えた。
「まあ、その内で良い。ここにいれば成長は遅いかもしれぬが、理解出来れば成長も出来る」
「分かった。やってみる」
ルイはカナミの言葉を素直に聞いた。
(ちぃ、昔の事思い出しちまった)
ルイは舌を打ち、ビルの屋上に降り、フェンスに座るとタバコを吸った。
目を瞑り、しばらく風に当たると、タバコを消し立ち上がった。
(考えてみたら、タバコもカナミに薦められた物だったな)
『気持ちを落ち着く為にも、タバコを吸ってみるといい』
それが始まりで、そして、ヘビースモーカーとなった。
「よし、行くか!」
ルイは微かに笑うと、左耳に付いている赤い石のピアスに手を当て、もう1度飛んだ。
頭を冷やすと、キラの行方は自然とすぐに分かった。
(さっきは見つからなかったが)
身近な所にクリスタルの要塞があった。
「あれ、動きが止まってる。まさか、所長。竜神一刀流・攻の太刀竜の閃光」
ルイは日本刀を出した。
羽根を消し、降りる勢いを利用し、刃を光に変え、クリスタルを破壊した。
クリスタルの中でリフィルが必死にキラの攻撃にしていた。
「ルイ」
「遅くなって悪かったな」
ルイはクリスタルを破壊しながら、リフィルと合流する。
「ルイ。大丈夫?」
ルイの破れたシャツを見て心配した。
「ああ、大丈夫だ」
「まだ生きていたか、死に損ないが」
「あんたにだけは言われたくないな。所長、さっきの空き地に行け、そこにレン達がいる」
「分かった。ルイ。でも約束守ってよ」
「当たり前だ」
リフィルはジャンプして、ルイの開けた穴から脱出した。
「さて、ファイナルラウンド始めようか」
ルイはキラを見る。
(カナミ。あんたは自らの力を恐れている。1人で背負えないから俺に……考え過ぎか。まっ、お陰で野郎に勝つ算段が組めるからな)
ルイは笑った。
「万策尽きて頭可笑しくなっか? この無限に再生するクリスタルにお前はなすすべも無い」
「いや、その逆だ。寧ろ俺自身の力の在り方を考えさせられる」
「何をバカな事を言ってやがる」
「バカ? そりゃお前だろう? ブラックレイン」
ルイは金色の懐中時計を取り出した。
すると、懐中時計は黒く光りゆっくりと宙に浮き、再生を終える前に懐中時計は抜け出し、上空まで上がり止まった。そして、雲が広がり、クリスタルを包むと黒い雨が降り始めた。
雨は少しずつ大振りになり、雨がクリスタルを溶かしていた。
「何をやったか知らないが、こんな雨大した事無い。又、直せばいい」
「そうか、ならこの雨は永遠に止まないな」
「何だと」
「この雨は破壊の雨、この一帯全ての力の基、つまり夢を破壊する。破壊が終わるまでこの雨は止まないよ」
「何だと、ふざけるな。お前の力何ぞ。踏み潰してやる」
キラはクリスタルで出来た刃を数本だし、ルイの所まで飛ばした。
勢いがあったのは始めだけ、徐々にクリスタルは細く小さく、スピードも遅くなり、ルイの所に来た時には殆ど無くなっていた。
「何だと、だったら、近付いて――――何、動かない」
「もう、雨が染み込んでいる。お前の攻撃は俺には届かないし、当たらない」
雨は本降りとなり、どんどんクリスタルは溶けて、キラは小さくなっていく。
ルイはその場から動かず、じっと立って溶けるのを見ていた。
「くっ、何だこの力は、たかが一介の死神が持つ力じゃない!」
「ああ、お前には言って無かったな。俺は只の死神じゃない。Sランクの死神だ。それも、帝様に仕えし死神だ」
「バカな」
キラは動揺を隠せないでいた。
「それと、もう1つ、帝様に仕える死神は特技を2つ持つことが出来る。1つは本来持つ力、そして、もう1つは帝様が与えた力、この雨は帝様のお力だ。ありがたく、受け取れ」
どんどん小さくなるキラに笑ってみせた。
キラは余裕の表情が一変して、恐怖の顔になった。
「なあ、止めてくれよ。俺が悪かった。なあ、助けてくれ、いや、手を組もう。それて、この世界を手に入れよう」
小さく弱っていく己の体に危機感を抱いたキラは、ルイに命乞いを始めた。
「嫌だな」
ルイは子供が意地悪するかのように言い放つ。
「そこを」
「お前、本当にバカだな。帝様に仕える俺が、帝様を裏切る訳無いだろう」
「じゃあ、命だけでも」
「悪いが俺は、2度も俺に刃を向け、腹に穴を開けた男を、はいそーですか、と、許す程大人でもないし、前にも言っただろう? 女を自分の所有物にする、お前みたいな最低男を許す程、男として我慢出来る性分でも無い。さあ、残りの時間を後悔しながら過ごすんだな」
「止めろ、止めてくれ」
キラは叫んだが、その叫びがルイには届かなかった。
ルイはキラを見下し、クリスタルが完全に溶けるまで待ち続けた。




