大罪の対価⑪
ルイが死神になって半年が経った頃だった。
「お主、この世界は好きか?」
始めの言葉はこんな感じだった。
目の前にいたのは死神を生み出した創造主。帝と呼ばれる人であった。
帝の名前はカナミ。その幼き姿に反し、何百年と生きている。
「はい。大好きです! 見る物全てが新鮮で、特に水族館のイルカショーはサイコーでした」
「ふうん、そうか」
ルイが語るとカナミが微笑んだ。
「こら、態度がデカいぞ」
あまりにも熱く語るので、キースに怒られた。
「すみません」
「まあ、よい。それより、主には生前の記憶があると聞いたが本当か?」
「うーん。僕、死んだ自覚無いんだけど、気が付いたらここにいて、今日から死神だ。何て言われた。んでも、死ぬ前に患ってた病気に苦しむ事無いから、やっぱり、死んだんだな」
ルイは急に暗い顔をした。
「うぬ。死神は死んだ者しかなれぬし、この世界に病は無い。病気と言っていたが、そんなに重かったのか?」
「ああ、生まれ付き病弱だった。殆ど外の世界を見た事無い位に。まあ、他にも理由が無い事も無いが、だから、解放されて、僕嬉しいんだ」
「そうか、良かったのう。この世界は人間の創造で出来ておる、退屈しないぞ」
「はい」
ルイは笑った。
「して、主、名前は?」
カナミは急にルイに近付き、興味深く、ルイの顔をジロジロ見ていた。
「ルイです」
ルイは緊張の面もちで、カナミを見ている。
「主、いい目をしておるのう。気に入った。わらわはカナミ。帝とは呼ばず、カナミと呼び捨てで呼んでくれ」
「しかし、それじゃ、立場が」
キースを見る。あの死神が怖い事をルイは分かっていて、顔色を伺っていた。
実際キースは睨んでいる。
「ルイ。わらわの命令聞けぬのか?」
「分かりました。カナミ」
「そうじゃ、それでよい。それよりルイに力が欲しく無いか?」
「力? うーん。特技あるしな。うーん」
ルイは困った顔をした。
「ルイ。少しは欲を持て」
「欲しいです」
周りに威圧され、渋々言った。
「それで良い」
カナミはルイの手を優しく握り、強く祈った。
「えっ」
すると、ルイの体が熱くなり、力が湧いて来て、最後にカナミからキスをした。
「はい。終わり」
「なっ」
ルイは驚き、顔を赤くした。
「主、意外と初じゃのう」
「ううっ」
照れて視線を逸らすルイに対して、カナミは笑った。
「それよりカナミ様。どんな剣あるいは盾ですか?」
恐らく興味は無いが、形式上聞いていた。
「ルイにはどんな攻撃を凌ぐ盾も、どんな守りを貫くキースの剣も渡しておらぬ」
「では何を?」
「二人の力には遥かに劣るが、素晴らしい力。創造の力じゃ」
「創造? ですか?」
ルイは数回まばたきをした。
「そうじゃ、どんな力も使える。強さは本来の力より劣るが、主の気持ち次第でいくらでも上がる。だが、忘れて欲しく無い事が3つつある。1つは、使える力は1つまで、主の特技と合わせると2つまでじゃ、2つ目どんなに強い力を持ってしても、キースと差しで勝負しても絶対勝てぬ。そして、最後は主が望むなら、この世界を終わらせられる。この意味分かるか?」
「カナミ様。何て力を」
キースが柄にも無く驚いた。
「言ったじゃろう。ルイには夢の力を与えたと、この世界は夢で出来ておる。夢の破壊者は人間では無い。この世界を創ったのが人間じゃからな。破壊者は死神じゃ。しかし、いち死神にそんな力は無い。まだ、無くなって貰いたく無いから。じゃが、その力を持った者がおっても不思議じゃないだろう。その力をルイにやったんじゃ。じゃがルイ。その力はルイも滅ぼす。生半可な覚悟で使ってはならぬぞ。己の身も破滅するから」
「分かりました。ありがとうございます」
ルイは深々と一礼した。これがルイの力の原点である。
それは、ニカに会う80年位前の話だ。




