大罪の対価⑨
「ちぃ、あのバカは無茶苦茶やりやがる」
ルイはリフィルをお姫様抱っこして、空から逃げていた。
クリスタルはルイの後を追うように、やって来た。
「何とかしないとな」
ルイはクリスタルとなり、崩れ去る通行人を見て、舌打ちする。
(これはこれで幸せ)
リフィルはその間、ずっと顔を赤くしていた。
死神は夢を見ないが、夢にまで見た。とはこの時使うのだろう。
お姫嬢様抱っこにリフィルは胸をときめかせていた。
「所長、大丈夫か? 顔、赤いぞ熱でもあるのか?」
「えっ、ああ。大丈夫よ」
リフィルは誤魔化した。
(ルイの天然は分かっているけど)
鈍感な王子様にリフィルは、ただため息しか出なかった。
「そうか、なら良かった。この辺でいいな」
ルイは空き地で着地した。
リフィルを立たせると、日本刀を出し、向かってくるクリスタルを切った。
「いい加減出てこいよ。クズが」
「クズ? それはお前だろう。人の女を平気で奪って」
全身銀色のクリスタル姿の男が現れた。
(2人が私を取り合ってる)
リフィルの気持ちが、自然と高揚していった。
「いや、奪ったつもりは無い。所長が自分の意志でここにいるんだ」
クリスタル男の言葉を真っ向から否定した。
(まあ、そうだよね。この人は……)
リフィルは深くため息をついた。
ルイにムードを求めた事が、そもそもの間違いであった。
「それはそうと、お前誰だっけ?」
首を傾げて問う、お約束の文句が出た。
「キラだ。キラ!!」
キラが怒鳴る。
「ああ、やっぱり? んでも随分と姿が変わったな。前は腐っていても人の姿をしたぞ?」
ルイは刀を鞘に収め、タバコをくわえ火を点けた。
「お前が肉体を破壊したんだろう! お陰でクリスタルの身体になったんだ」
「ふうん。そうだったのか、んでもこのまま、死んでた方が良かったんでない?」
「冗談じゃない。お前に復讐する事だけを目的に復活したんだ」
「そいつは悲しいな。復讐した所で何も解決しないだろう?」
「説教するな!」
「しかもこの世界で復讐何て、勿体無い」
「余計なお世話だ。お前を倒す為に、魂を沢山、吸収して、力を手に入れた」
「そりゃ、ご苦労な事だ。まあ、無駄になるけどな」
ルイはキラを睨んだ。
「そんな事の為に人や死神の魂奪う何て、許せないな。もういっぺん消滅してやる。覚悟しろ」
「それは、お前の方だ。お前が肉体を破壊したお陰で無限の自己修復機能が付いた。お前のどんな力にも対応する。どうだ。凄いだろう」
「ふうん。確かに凄いが、それもう死神じゃないって認めた事になるな」
「何とでも言え。お前は俺様を倒せない。素直に負けを認めろ」
「それは嫌だ。俺負けるの嫌だし、でも、話しが本当なら、その再生能力は不味いな。所長、逃げろ」
ルイは地面でタバコの火を消し、携帯灰皿に入れると、リフィルの所に少しずつ向かった。
「でも、ルイが」
「心配してくれるのは嬉しいけど、何かあると困るんだ」
「ルイ」
「事務所が傾く恐れがあるからな」
「そっ、そうだね」
「それに、居辛いだろう? これから、元カレをボコるんだぜ。だから逃げてくれ、逃げ切ったらさ――――」
ルイは耳元で話した。
「映画館に行こう」
「ルイ。うん、逃げるわ」
リフィルはやる気になる。
ルイが少しずつリフィルから離れていく。
リフィルは踵を返し言われた通り逃げた。
「お別れは済んだか?」
「別れ? 違うよ。約束したんだよ。んじゃなきゃ、素直に聞いてくれないからな」
ルイは新しいタバコを取り出し、吸い始めた。
「あれで頑固だからな。もう少し、しとやかになれば可愛げもあるのによ」
「お前が女を語るな! 鈍感男」
「何でだ?」
「もう、何でもねーよ」
キラが呆れていた。
「まあ、いい。始めようか?」
空き地をドーム型にした上も下も右も左も、透明1色である。
「ああ、そうだな」
ルイは刀を抜くのと同時に先の尖ったクリスタルが飛んできて、ルイは叩き割った。
上下左右あらゆる所からクリスタルは現れ、連続攻撃が繰り返された。
「確かに前より強くなっているな」
ルイは避けるので精一杯だった。何故なら、切った瞬間に蘇るからだ。
「どうだ。手も足も出まい。以前のように空間の支配も出来ない。何たってこの世界その物に、俺様のフィールドを造ったからな」
「そりゃ、前より悪趣味だな」
ルイは隙を伺っていたが、なかなか隙が出来ない。
(不味いな。どうするかな)
ルイは余裕でいられなくなてきた。
あれこれ策を考えている内に息が切れてきた。
「はあはあ」
「どうした? 息を切らして、そうか、力を吸収しているんだった」
キラはわざと言う。
「そう言う事かよ」
(何か可笑しい。これはあいつの力だけのせいじゃない)
ルイは自分の体に起こっている違和感を冷静に分析し始めた。
不意に右手を見ると微かに透け存在が消えかけ、すぐ後、胸が締め付けられる感覚に陥った。
「なっ」
「隙ありだ。雑魚!」
キラは一瞬の隙も見逃さ無かった。
「しまった―――」
ルイが気付いた時は、キラはルイの背後に周り、尖ったクリスタルをルイの背中に向けた。
ザシュ!
透明なクリスタルに赤き血が飛び散った――――




