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黒の章  作者: 叢雲ルカ
第2章
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大罪の対価⑨

「ちぃ、あのバカは無茶苦茶やりやがる」

 ルイはリフィルをお姫様抱っこして、空から逃げていた。

 クリスタルはルイの後を追うように、やって来た。

「何とかしないとな」

 ルイはクリスタルとなり、崩れ去る通行人を見て、舌打ちする。

(これはこれで幸せ)

 リフィルはその間、ずっと顔を赤くしていた。

 死神は夢を見ないが、夢にまで見た。とはこの時使うのだろう。

 お姫嬢様抱っこにリフィルは胸をときめかせていた。

「所長、大丈夫か? 顔、赤いぞ熱でもあるのか?」

「えっ、ああ。大丈夫よ」

 リフィルは誤魔化した。

(ルイの天然は分かっているけど)

 鈍感な王子様にリフィルは、ただため息しか出なかった。

「そうか、なら良かった。この辺でいいな」

 ルイは空き地で着地した。

 リフィルを立たせると、日本刀を出し、向かってくるクリスタルを切った。

「いい加減出てこいよ。クズが」

「クズ? それはお前だろう。人の女を平気で奪って」

 全身銀色のクリスタル姿の男が現れた。

(2人が私を取り合ってる)

 リフィルの気持ちが、自然と高揚していった。

「いや、奪ったつもりは無い。所長が自分の意志でここにいるんだ」

 クリスタル男の言葉を真っ向から否定した。

(まあ、そうだよね。この人は……)

 リフィルは深くため息をついた。

 ルイにムードを求めた事が、そもそもの間違いであった。

「それはそうと、お前誰だっけ?」

 首を傾げて問う、お約束の文句が出た。

「キラだ。キラ!!」

 キラが怒鳴る。

「ああ、やっぱり? んでも随分と姿が変わったな。前は腐っていても人の姿をしたぞ?」

 ルイは刀を鞘に収め、タバコをくわえ火を点けた。

「お前が肉体を破壊したんだろう! お陰でクリスタルの身体になったんだ」

「ふうん。そうだったのか、んでもこのまま、死んでた方が良かったんでない?」

「冗談じゃない。お前に復讐する事だけを目的に復活したんだ」

「そいつは悲しいな。復讐した所で何も解決しないだろう?」

「説教するな!」

「しかもこの世界で復讐何て、勿体無い」

「余計なお世話だ。お前を倒す為に、魂を沢山、吸収して、力を手に入れた」

「そりゃ、ご苦労な事だ。まあ、無駄になるけどな」

 ルイはキラを睨んだ。

「そんな事の為に人や死神の魂奪う何て、許せないな。もういっぺん消滅してやる。覚悟しろ」

「それは、お前の方だ。お前が肉体を破壊したお陰で無限の自己修復機能が付いた。お前のどんな力にも対応する。どうだ。凄いだろう」

「ふうん。確かに凄いが、それもう死神じゃないって認めた事になるな」

「何とでも言え。お前は俺様を倒せない。素直に負けを認めろ」

「それは嫌だ。俺負けるの嫌だし、でも、話しが本当なら、その再生能力は不味いな。所長、逃げろ」

 ルイは地面でタバコの火を消し、携帯灰皿に入れると、リフィルの所に少しずつ向かった。

「でも、ルイが」

「心配してくれるのは嬉しいけど、何かあると困るんだ」

「ルイ」

「事務所が傾く恐れがあるからな」

「そっ、そうだね」

「それに、居辛いだろう? これから、元カレをボコるんだぜ。だから逃げてくれ、逃げ切ったらさ――――」

 ルイは耳元で話した。

「映画館に行こう」

「ルイ。うん、逃げるわ」

 リフィルはやる気になる。

 ルイが少しずつリフィルから離れていく。

 リフィルは踵を返し言われた通り逃げた。

「お別れは済んだか?」

「別れ? 違うよ。約束したんだよ。んじゃなきゃ、素直に聞いてくれないからな」

 ルイは新しいタバコを取り出し、吸い始めた。

「あれで頑固だからな。もう少し、しとやかになれば可愛げもあるのによ」

「お前が女を語るな! 鈍感男」

「何でだ?」

「もう、何でもねーよ」

 キラが呆れていた。

「まあ、いい。始めようか?」

 空き地をドーム型にした上も下も右も左も、透明1色である。

「ああ、そうだな」

 ルイは刀を抜くのと同時に先の尖ったクリスタルが飛んできて、ルイは叩き割った。

 上下左右あらゆる所からクリスタルは現れ、連続攻撃が繰り返された。

「確かに前より強くなっているな」

 ルイは避けるので精一杯だった。何故なら、切った瞬間に蘇るからだ。

「どうだ。手も足も出まい。以前のように空間の支配も出来ない。何たってこの世界その物に、俺様のフィールドを造ったからな」

「そりゃ、前より悪趣味だな」

 ルイは隙を伺っていたが、なかなか隙が出来ない。

(不味いな。どうするかな)

 ルイは余裕でいられなくなてきた。

 あれこれ策を考えている内に息が切れてきた。

「はあはあ」

「どうした? 息を切らして、そうか、力を吸収しているんだった」

 キラはわざと言う。

「そう言う事かよ」

(何か可笑しい。これはあいつの力だけのせいじゃない)

 ルイは自分の体に起こっている違和感を冷静に分析し始めた。

 不意に右手を見ると微かに透け存在が消えかけ、すぐ後、胸が締め付けられる感覚に陥った。

「なっ」

「隙ありだ。雑魚!」

 キラは一瞬の隙も見逃さ無かった。

「しまった―――」

 ルイが気付いた時は、キラはルイの背後に周り、尖ったクリスタルをルイの背中に向けた。

 ザシュ!

 透明なクリスタルに赤き血が飛び散った――――

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